メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

キーワード・ジェネレーション

bluehand/Shutterstock.com拡大bluehand/Shutterstock.com

 同書に収録されたキーワードは433本。ランダムにいくつかを拾い上げてみようか。

 「あい!」「あがー」「味くーたー」「熱こーこー」「いいはずよ」「いっせんまちやー」「御願不足」「うちあたい」「A&W」「オキコワンワンチャンネル」「沖縄キリスト教短期大学」「沖縄ジャンジャン」「沖縄独立論」「ガーブ川の世界」「開南のバス停」「共同売店」「ぐそー」「コーヒーシャープ」「桜坂通り」「さしみやー」「真剣―ん?」「センエンナーのおじさん」「だからよ」「登野城漁港」「奈名子のドリームコール」「ビーチパーティー」「南大東島行きの飛行機」「民謡研究所」「わじわじー」。

 凡例には、「方言」「風物」「食べ物」「レトロ」「人物のようなもの」などのジャンルが設けられているが、これを参照しつつ、私の目であえて分類すれば、①沖縄の日常風景に埋め込まれたモノ・コト・ヒト、②沖縄人の言動の特徴を示す言葉や概念、③若い沖縄人の記憶に残った事象・人物・場所、④その他(立項意図が不明なものを含む)というところだろうか。

 それぞれのキーワードを紹介する余裕はないが、③がこの本らしくて面白い。「登野城漁港」のように「自分は何度しのぶとあの護岸をデートしたことか」みたいな個人的経験が盛り込まれていたり、「奈名子のドリームコール」のように特定の人物(この場合はラジオ番組のパーソナリティ)のいかにもの語りが再現されていたりするからだ。

 「一九六〇年代から一九八〇年代に生まれた、もしくは青春を迎えた人々」は、こうしたキーワードに胸を衝かれたことだろう。キーワード群には、都市化とリゾート化の波をいちどきに被ったこの時期の心象風景が多く含まれていた。

 執筆者は70名以上に上る。その一覧を見ると出生年は1960年代に集中しており、これが“年代に偏りがある”ということわりの理由なのだろう。ちなみに「まぶい組」の「級長」は、1963年に那覇で生まれた新城和博である。

 想定されたコア読者が、この執筆者陣と同様の年恰好だったことは明らかだ。本土復帰を記憶し、1980年代の沖縄で青春を送った若者たち。1冊の本を通して復帰世代とは異なる沖縄へのこだわりを共有した彼らを、私は「おきなわキーワード」世代と呼んでみたい。彼らこそ、「内なる沖縄ブーム」をつくり出した主要なジェネレーションだと思うからだ。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

菊地史彦

菊地史彦(きくち・ふみひこ) ケイズワーク代表取締役、東京経済大学大学院(コミュニケーション研究科)講師

1952年、東京生まれ。76年、慶應義塾大学文学部卒業。同年、筑摩書房入社。89年、同社を退社。編集工学研究所などを経て、99年、ケイズワークを設立。企業の組織・コミュニケーション課題などのコンサルティングを行なうとともに、戦後史を中心に、<社会意識>の変容を考察している。現在、株式会社ケイズワーク代表取締役、東京経済大学大学院(コミュニケーション研究科)講師、国際大学グローバル・コミュニケーションセンター客員研究員。著書に『「若者」の時代』(トランスビュー、2015)、『「幸せ」の戦後史』(トランスビュー、2013)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

菊地史彦の記事

もっと見る