野田 学(のだ・まなぶ) 英文学者・明治大学教授
1985年東京大学卒、同大学院に進学し文学修士を取得。1990年ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ(演劇学)に留学。国際演劇評論家協会(AICT-IATC)理事。ウェブ・ジャーナル「クリティカル・ステージズ」(AICT-IATC)および『シアターアーツ』(国際演劇評論家協会日本センター)編集部員。
※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです
連帯して危機を克服する演劇人たち、かき消されそうになる声に耳傾けながら
3月27日は「世界演劇の日」だった。国際演劇協会(ITI)は毎年この時期に記念行事を行っている。今年はオンライン開催だったが、メインイベントとして、アメリカのオペラ・演劇演出家ピーター・セラーズ氏がメッセージを発表した。
彼は、相反する声が五月雨式に「ニュース」として襲いかかってくる状況を「時の刃先(エッジ)」と呼び、刃先において人々はいらだち、「多くの馬鹿げた、あるいは予期せぬ暴力が燃え上がっている」と言う。
「刃先」では、人々は過去を顧みず、未来からも切り離されてしまう。今まで寄りかかっていた価値観が役に立たないことにいらだち、混迷の中、妄信にしがみつこうとする。だから現代の人々は「違う現実、違う可能性、違うアプローチ、見えない関係、そして時を超えたつながり」に目を向けることができなくなってしまう。そして、次のように結ぶ。