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高校演劇「春フェス」報告【下】

工藤千夏 劇作家、演出家

 劇作家の工藤千夏さんによる高校演劇「春フェス」(春季全国高等学校演劇研究大会、2022年3月に大阪で開催)報告の後編です。ジェンダー、メディア、ディストピア……鋭いテーマが並びます。

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ジェンダーギャップへの気づきのドラマ

 学校生活における問題に苦悩し、友情のために行動を起こす。そんな熱い高校演劇の醍醐味を満喫できる3本は、2021年度に誕生したオリジナルの創作脚本だ。

 栃木県の作新学院高校『Passion』(作:高梨辰也 顧問創作)は、ジェンダーギャップへの気づきのドラマである。

拡大作新学院高校『Passion』=森智明撮影、大阪府高等学校演劇連盟提供
 修学旅行での自由行動の計画が決まっていない、ある女子の班に男子の班が合流したいと言いだす。話し合いが進むうちに、男女格差や各人が持つアンコンシャス・バイアスが明らかになり……。事情を抱えて欠席している友人のために走り出す、その受難に抗うパッションがひたすら熱い。

 昨年の春フェス北九州大会で上演された『見えない女子の悩み』(上演:東京都立千早高等学校演劇部 原案:森岡水蓮 脚本:木原幸乃・松原琴音・神田朱 生徒創作)や、全国大会(和歌山)での立川女子高校『おんなのこのひ』(作:立川女子高校演劇部 生徒+顧問創作)、同校がこの1月の関東大会で上演した『明日きれいさっぱり忘れてくれるって言うから君が』(作:立川女子高校演劇部 生徒創作)と比べて、登場人物の意識、特に男子の男女格差への気づきは幼く、正直ちょっと物足りなくも感じる。だが、この無自覚さもまたリアルなのである。

 作品の中で簡単に提示できる答えなどない。高校生の身の回りに歴然と存在するジェンダーギャップを考え始める等身大の芝居は、気づきの扉をバーンと開け放つために必要な一歩である。

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筆者

工藤千夏

工藤千夏(くどう・ちなつ) 劇作家、演出家

ニューヨーク市立大学大学院演劇科修士課程修了。1992年「青年団」入団、2003年より演出部に所属し「うさぎ庵」を主宰。代表作に『コーラないんですけど』、『真夜中の太陽』(原案・音楽:谷山浩子)など。青森市を拠点にする劇団「渡辺源四郎商店」のドラマターグ。日本劇作家協会評議員。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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