工藤千夏(くどう・ちなつ) 劇作家、演出家
ニューヨーク市立大学大学院演劇科修士課程修了。1992年「青年団」入団、2003年より演出部に所属し「うさぎ庵」を主宰。代表作に『コーラないんですけど』、『真夜中の太陽』(原案・音楽:谷山浩子)など。青森市を拠点にする劇団「渡辺源四郎商店」のドラマターグ。日本劇作家協会評議員。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
高校演劇「春フェス」報告【下】
山口県立光丘・光高校『陰影』(作:緋岡篝 顧問創作)は、あるヤングケアラーが介護していた祖母を殺した事件を知り、ショックを受けた部員の提案で創作が始まったという。
自分より強くしなやかに生きているように見えるクラスメートへのあこがれ、嫉妬、尊敬、愛がからみ合った複雑な心情がデリケートに描かれる。主人公2人がネガとポジであると同時に、明るく振る舞う人間が隠し持つ心の闇に対する深い洞察の物語でもある。
友に寄り添うということはどういうことなのか、その答えは簡単には出ない。夢を持つことも、他者を励ますことも、いずれもたやすいことではない。それでも、なぜ救えなかったのか、自分には本当に何もできなかったのか考え続けることが枢要であると、この作品は伝えてくれる。
ところで、出場校として二つの学校が名を連ねていることに、お気づきだろうか。令和2年度の山口県の県立高校再編整備により、山口県立光丘高校は2022年3月に閉校、山口県立光高校に統合されることが決まっていたため、2020年から演劇部の活動を一緒に行って来たのだという。3月末のこの春フェスが、光丘・光高校演劇部という連名での活動の最後となった。