玉川奈々福(たまがわ・ななふく) 浪曲師
横浜市生まれ。出版社の編集者だった94年、たまたま新聞で浪曲教室のお知らせを見て、三味線を習い始め、翌年、玉川福太郎に入門。01年に曲師から浪曲師に転じ、06年、玉川奈々福の名披露目をする。04年に師匠である福太郎の「徹底天保水滸伝」連続公演をプロデュースして大成功させて以来、数々の公演を企画し、浪曲の魅力を広めてきた。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
瀬戸内国際芸術祭、多分野パフォーマーと海の物語を作る
〽ばばんばばんばんばん……♪
5月5日、子供の日の夜。
奈々福は、小豆島天然温泉「塩の湯」に浸かっております。
ほんとに塩味だ。これ、温泉じゃなくて海水じゃないのかという感じです。
ふわああ……ほどけるぅぅぅ。顔も体も心もゆるむぅぅぅ。
ご褒美だなあ、先月は死にそうだったから。
嗚呼、天国……。
日々、芸にだけ邁進埋没できたなら……と常々思うのですが、フリーランスの芸人というのは、会社に例えていうならば、総務部と経理部と企画開発室とぜんぶ一人でやらなくちゃならないわけで、それがたまたまいろいろ重なってしまうと、なかなか大変になりまして、それに大きな独演会が重なった4月は、よくぞ生きて乗り越えられた……という感じでした。
一段落したところで、私は「仕事で」小豆島に来ました。
瀬戸内国際芸術祭は、3年に1度、瀬戸内海の島々で開催されるアートの祭典です。その祭典で開催されるイベントに、お声がけいただきました。
歌舞伎演目の現代劇化を試みる劇団「木ノ下歌舞伎」の主宰・木ノ下裕一さんから、この芸術祭で上演するオリジナル舞台に、語りで参加してもらえないかというお誘い。
「木ノ下歌舞伎」ファンで、木ノ下裕一さんの凄さに常々驚いていた奈々福、こんな願ってもないお話、断るわけがありません。
しかも上演される場所が、小豆島の農村舞台という!!!
この連載を読んでくださっている方々は、奈々福が農村舞台になみなみならぬ興味を持っていることは、知ってくださっているかと思います。しかも今回の劇場である「肥土山農村舞台」、以前私は、わざわざ訪ねたことさえあるのです。
小豆島の山間部、緑と田んぼに囲まれた素晴らしいロケーションにある、農村舞台です。国の重要有形民俗文化財に指定されていて、保存会が活動してくださっているお蔭で、保存状態も大変いい。
上演される作品は、今回の芸術祭のためのオリジナル作品で「竜宮鱗屑譚(せとうちうろくずものがたり)」というもの。出演者は、ダンサー、日本舞踊家、俳優。演出家は、ダンサー。音楽は、生演奏という……。
お誘いいただいたものの、稽古に参加するまで、私がいったい何をするのか、わかりませんでした。
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