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視聴者を巻き込んだ『笑っていいとも!』というテレビ的空間

[4]芸人と素人の共存から生まれた混沌の魅力

太田省一 社会学者

 前回、タモリの「仕切らない司会」についてみた。今回は、『笑っていいとも!』における素人の存在に注目する。『いいとも!』では、一般視聴者参加の企画も多かった。また、応募してきた一般の観覧客が入る公開生放送である点も忘れてはならない。そうした素人は、どのような存在だったのか? テレビと素人の歴史を踏まえつつ、探ってみたい。

タモリは素人に対し、どのように接したか

 『いいとも!』の一方の主役は素人だった。一般参加者を募集する企画が常時あって、そうした場にはユニークな素人もよく登場した。

 コーナーの内容は、有名人や芸能人の「そっくりさん」や見た目と実年齢のギャップがある素人の「年齢当て」などさまざま。また、視聴者からの投稿をもとに進めるコーナーもあれば、高田純次がメインで一般参加者が思うままにダンスを踊る「ジュンちゃんのブラボーダンス」のようなコーナーもあった。

チョー長嶋(現・プリティ長嶋拡大「笑っていいとも!」に出演していたプリティ長嶋
 プロ野球・読売ジャイアンツの川上哲治と長嶋茂雄の物真似をするドン川上(現・DON)とチョー長嶋(現・プリティ長嶋)による番組初期の人気コーナー「来たかチョーさん、待ってたドン」も、印象に残る。2人は純然たる素人とは言えないところもある。だが、当時ドン川上は旅行会社の社員として出演していたし、2人とも『いいとも!』では本名でクレジットされていた。その点、“素人”的立ち位置であった。

 テレビに視聴者参加番組は付き物である。その意味では、『いいとも!』は、特筆するほどでもないかもしれない。だが他方で、素人に対するタモリら出演者の接しかたは、他のそうした番組に比べて特徴的だった。そこには、素人とのあいだに一定の、そして絶妙の距離感があった。

 関根勤などは代表格のひとりだろう。関根が「そっくりさん」などのコーナーで司会を務めるとき、カーテンが開いた瞬間、登場した素人に一言添えるのが独自の芸になっていた。パッと見たイメージだけで、「カラオケでは必ず○○を歌います」「今日の朝食は××でした」などとそのひとのことを勝手に想像して形容する。コーナーの趣旨と直接の関係はあまりない。いわば、例えツッコミの一種である。

 タモリの接しかたも、同様に独特だった。不思議な雰囲気を持っていたり、変な仕草をしたりする素人が現れても、単刀直入にツッコんで片付けてしまうことはめったにない。関根勤のように例えツッコミをしたり、興味津々で質問攻めにしたりすることで、キャラクターをさらに際立たせていく。やはりコーナーの趣旨とは関係なく、手元にあるフリップに出演する素人の似顔絵を描くこともよくあった。

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筆者

太田省一

太田省一(おおた・しょういち) 社会学者

1960年、富山県生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビ、アイドル、歌謡曲、お笑いなどメディア、ポピュラー文化の諸分野をテーマにしながら、戦後日本社会とメディアの関係に新たな光を当てるべく執筆活動を行っている。著書に『紅白歌合戦と日本人』、『アイドル進化論――南沙織から初音ミク、AKB48まで』(いずれも筑摩書房)、『社会は笑う・増補版――ボケとツッコミの人間関係』、『中居正広という生き方』(いずれも青弓社)、『SMAPと平成ニッポン――不安の時代のエンターテインメント 』(光文社新書)、『ジャニーズの正体――エンターテインメントの戦後史』(双葉社)など。最新刊に『ニッポン男性アイドル史――一九六〇-二〇一〇年代』(近刊、青弓社)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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