真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター
大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
ゴツプロ!第二章、初めて演出家を迎え戯曲を上演
ゴツプロ!第七回公演『十二人の怒れる男』が、13日に開幕する。
1954年にアメリカで製作されたテレビドラマで、翌年には舞台版が上演され、1957年に映画としてリメイクされた作品。法廷を舞台にしたサスペンス作品で、ワンシチュエーションで繰り広げられる密室劇でもある。
少年が起こした殺人事件の裁判で11人の陪審員が有罪に投票し、その罪は決定的かと思われたが、1人の陪審員が無罪を主張。法廷という限られた空間の中で、12人の陪審員が評決を出すために議論する様子を描いている。
ゴツプロ!を主宰しプロデューサーでもある塚原大助と初めてゴツプロ!に出演する三津谷亮にインタビューをし、作品について語ってもらった。
――まずはゴツプロ!のプロデューサー・塚原さんにお伺いします。これまではオリジナル作品を上演されてきましたが、今回は初めて戯曲を使用した作品で新たに西沢栄治さんを演出に迎えられました。その理由から教えていただけますか?
塚原:去年の『向こうの果て』が途中で公演中止になって、その後、無観客で生配信をしたんですけど、その無観客公演でのカーテンコールの後、舞台袖に戻って来た役者が「こんな残酷なことはない…」って呟いたのを聞いたんです。その時に、プロデュースする側の人間として、役者になんて酷いことをさせてるんだと思いました。そんなことがあったり、シアタートップスのオープニングシリーズの公演が中止になったり、ホントに昨年はいろいろと大変だったんです。
そんな経験を経て今年、公演をしようとなった時、「ド・演劇」をやりたいという思いがすごく強くなったんです。「本多劇場で割れんばかりの拍手を浴びたい!」と。その思いが強くなっていた時に浮かんだ演出家が西沢さんだったんです。2016年に椿組野外劇『贋・四谷怪談』に出演した時の演出家が西沢さんだったんです。その時に西沢さんの演出のダイナミックさに惹かれて、今回、一緒にやりたいと思ってオファーさせてもらったら、快諾してくださったんです。
――演出家が先に決まってから作品選びをされたんですね。
塚原:そうですね。西沢さんは古典をやることに定評のある演出家なので、何をやろうかとメンバーと西沢さんとも協議を重ねました。シェイクスピアや寺山修司さん、つかこうへいさん、いろんな戯曲が出たんですけれども、僕自身 がしっくりこなくて。そんな中、うちのメンバーが『十二人の怒れる男』を見ていたり、過去に出演していたり、この作品を好きだという声がちらほら聞こえてきたんですよ。で、西沢さんともお話をさせてもらって、せっかくゴツプロ!の変革期なんだから「ド・演劇」をやった方がいいし、『十二人の怒れる男』は合ってるよねと言ってくださって決まりました。
――確かにゴツプロ!さんに合っていると思います。
塚原:ゴツプロ!は男しかいないので。ホント、この作品はぴったりですよね。
三津谷:ぴったりだと思います! これまで何度かこの作品を観ているのですが、作品に対して少し戸惑いがあったんです。いきなり怒ったりするじゃないですか。でも、今回はお客さんとしてこの作品を観てみたいと思うんです。稽古をしていてきちっと流れがある中で感情の緩急を感じることできるんです。なので、ゴツプロ!さんのために書かれたんじゃないかと思うほどです。
塚原:うれしいね!
三津谷:だから、その中に自分もちゃんと入れるように、置いていかれないようにしなきゃと思っています。
――三津谷さんは今回、初めてゴツプロ!さんの公演に出演されますが、稽古が始まっていかがですか?
三津谷:かっこいいお兄さん方がたくさんいて、本当に毎日いろんなことを感じています。役者を続けていくことに対する自分の理想の形や、こういう風に年齢を重ねていくとかっこよく見えるんだな、カッコつけなくてもカッコよく見えるんだということを、作品を通して、そして、日常を通して感じさせてもらっています。
――へぇ・・・
塚原:そこは「へぇ」じゃなくて、「そうだよね」って言ってくださいよ!(笑)
――(笑)、すみません!
三津谷:自分の意見を「若いからね」で終わるのではなく、ちゃんと吸い上げてくれるんですけど、それが、作品だけでなく日常とも地続きでつながっている感覚があって、日々稽古も含めてすごく楽しいです。
――男性だけのメンバーで構成されているゴツプロ!さんから出演のオファーがあった時、どうでしたか?
三津谷:これまで女性と共演するほうが少なかったんです。『テニスの王子様』も男性ばかりでしたし、D-BOYSも男性だけなんですよね。シェイクスピア作品もオールメールで男性が女性の役を演じていましたから、どちらかというと、男性の多い中で作品を創るほうが慣れていてしっくりくるんです。
――ちょっと年齢層が高くなったくらいで…(笑)。
塚原:ちょっとじゃないけどね(笑)。
三津谷:でも、先輩がいるほうが楽しいです。
――経験値が違うので吸収できることも違ってきますよね。
三津谷:そうですね、そこは明らかに違います。年下の方と一緒に創るのも楽しいですが、時々、違う方向に意識が向いてしまう方がいて、重きをおくポイントがズレてしまうことがあるんです。
塚原:あ~、芝居とは違うポイントに意識がいくんだね。
三津谷:そうなんです。プライオリティーを間違えてしまうんですよね。途中からリピーター向けの芝居をし始めたり、日替わりネタを大事にするようになってしまったり……。毎日同じ芝居をやりながらも、いかに新鮮に芝居を進められるかということを大事にしたいので、先輩方を見ながら芝居をしているとまったくストレスがないんです。今回のこの感覚はきっと自分の細胞が覚えていると思うので、今後、いろんな現場でこの感覚を思い出すと思います。やっぱりいい現場って思い出すんですよね。だからといってそのままを共有しようとしたらいけないんですけどね。このカンパニーにいられることは、とても恵まれているなと改めて感じています。
◆公演情報◆
ゴツプロ!第七回公演『十二人の怒れる男』
2022年5月13日(金)〜22日(日) 本多劇場
公式ホームページ
[スタッフ]
作:レジナルド・ローズ
翻訳:額田やえ子
演出:西沢栄治
[出演]
塚原大助、浜谷康幸、佐藤正和、泉知束、渡邊聡、44北川、関口アナン、三津谷亮、佐藤達(劇団桃唄309)、山本亨、佐藤正宏(ワハハ本舗)、小林勝也(文学座)、木下藤次郎
(椿組)
〈塚原大助プロフィル〉
2015年よりゴツプロ!を主宰し、公演のプロデュースも手掛け、地方公演や海外公演、メディアミックスや全公演生配信等の取組を実施。舞台を中心に幅広い表現力を見せ、ゴツプロ!公演以外に、映画『コンプリシティ/優しい共犯』(近浦啓監督)、映画『ソワレ』(外山文治監督)、こまつ座『人間合格』(作:井上ひさし 演出:鵜山仁)、小松台東“east”公演『東京』(作・演出:松本哲也)、KURAGE PROJECT Vol.1『売春捜査官』(作:つかこうへい 演出:髙橋広大)などに出演。
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〈三津谷亮プロフィル〉
2008年に「第5回D-BOYSオーディション」において審査員特別賞を受賞し、芸能界入り。最近の主な出演作品は、プリエールプロデュース『マミィ!』、(作・演出:田村孝裕)、『喜劇 お染与太郎珍道中』(演出:寺十吾)、東京マハロ『あるいは真ん中に座るのが俺』(脚本・演出:矢島弘一)など。
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