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自分の中国観は時代遅れだった……『いま中国人は中国をこう見る』の衝撃

駒井 稔 編集者

 外国人の友人たちと話した後にいつも自分に言い聞かせていることがあります。先ほどの彼、彼女の意見を普遍化してはいけないということです。フランス人の友人であろうと中国人の友人であろうと、彼らの意見は彼らのもので、フランス人や中国人を代表するものではないということを肝に銘じておくべきだと思っています。

 中島恵『いま中国人は中国をこう見る』(日経プレミアシリーズ)もたくさんの中国人に取材して書かれた本ですが、この傾向性は見事に克服されていると思います。著者はあとがきでこう述べています。

いつものことだが、本書には富裕層や有名企業の経営者、農民工など、日本メディアの「常連」はほとんど出てこない。私がこれまで信頼する誰かに紹介されたり、たまたま巡り合った人など、「ごく普通の中国人」が中心だ。

中島恵『いま中国人は中国をこう見る』(日経プレミアシリーズ拡大中島恵『いま中国人は中国をこう見る』(日経プレミアシリーズ)
 ロシアのウクライナ侵攻以来、日本のメディアでは、中国がいつ台湾に侵攻するのかという話題がクローズアップされている印象があります。このような大きな政治的な問題が発生した時に、いつも忘れ去られるのが、一人ひとりの国民の声であり、民衆の心情であることを考えると、匿名を条件に中国国内のみならず、日本やアメリカ在住の中国人に広く取材した本書の内容には深く納得するものがあり、またたくさんの驚きもありました。自分の中国観があっという間に時代遅れになっていたことへの衝撃です。

 ちょうど1年前に、本欄で『内側から見た「AI大国」中国──アメリカとの技術覇権争いの最前線』(福田直之著、朝日新書)を取り上げました。それはデジタル大国・アメリカを脅かすほどに成長した中国のIT企業に関する優れたレポートでしたが、本書と併せて読んでみるとより深く中国の現在の姿が浮かび上がることと思います。


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筆者

駒井 稔

駒井 稔(こまい・みのる) 編集者

1979年、光文社入社。1981年、「週刊宝石」創刊に参加。1997年に翻訳編集部に異動、書籍編集に携わる。2004年に編集長。2年の準備期間を経て2006年9月に古典新訳文庫を創刊。10年にわたり編集長を務めた。著書に『いま、息をしている言葉で。──「光文社古典新訳文庫」誕生秘話』‎ (而立書房)。編著に『文学こそ最高の教養である』(光文社新書)、『私が本からもらったもの──翻訳者の読書論』(書肆侃侃房)がある。大酒飲みだったが禁酒歴6年。1956年、横浜生まれ。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです