お寺にも求められる経営視点
以前、私は、宗教界の専門誌の記者をしていたが、ある住職に取材を申し込もうとして、「お寺の運営についてお話を聞きたいのですが」と電話をしたところ、「お寺は経営するものじゃない、宗教を何だと思っているのだ!」と、叱責されたことがある。
「経営」という言葉に拒絶反応を示す僧侶がいることは予想していたので、「運営」という言葉を使ったのだが、残念ながら小手先の策は通じず、かなりご立腹であった。仏教界で、「経営」という言葉を使うと、不謹慎と受けとめられてもやむを得ないのである。
私はその後、お寺の運営コンサルティング会社を設立し、今年で15年がたつが、今では「経営」という言葉を使って、マイナスの反応があることはだいぶ少なくなった。会社設立当初は、多少の反発があったが、次第にそうした意見は減り、今では「経営」について関心のある僧侶のほうが多いと感じる。
お寺は法人である以上、経営は大切なことである。もちろん、収益事業ではないので利益至上主義は好ましくない。ただ人に満足してもらって、お金をいただく、という仕組みは、企業と変わらない。何よりお金がなくては宗教活動はできない。そこに経営的な視点を欠かすことはできないのだ。

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一方、お寺という宗教法人が、どのように運営されているのかは、一般生活者にとってはとてもわかりにくい。宗教法人には、収支計算書を作成することが義務づけられており、檀信徒に公開しているお寺もあるようだが、その数は少ないのが現実である。