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「ハザードマップ」「AED」よりも「被害地図」「心臓ふるえとり」がよい

高齢者・しょうがい者に配慮した呼び名こそ「万人向けデザイン」である

杉田聡 帯広畜産大学名誉教授(哲学・思想史)

 本年5月19日の衆院本会議で、「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律」が可決・成立した。超党派の議員連盟による立法だという。これ自体は歓迎すべきことだが、その法が通称で「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」と呼ばれている点に、私はいささか疑義をもつ。

国家機関の不明

/Shutterstock.com拡大alphaspirit.it/Shutterstock.com

 「アクセシビリティ」という、誰にでも分かるとは言えない言葉が、通称とはいえ法律名として使われる事態の問題は、深刻に問う必要がある。アクセシビリティとは一般に「接近・利用しやすさ」といった意味と思われるが、多くの国民に必ずしも理解されない言葉を、なぜ国会とあろうものが堂々と用いるのか。

 国会を含む国家機関は、国民の必要・利益を満たすために創設されたと観念されている。これが、社会契約論の伝統に基づく、今日の民主制国家における根本理念である。だがその国家機関が、国民が十全には理解できない可能性の高い言葉を平然と用いるとしたら、根本理念の根底を掘りくずす危うさを感ずる。

 政府機関等が用いる言葉の分かりにくさが、以前から問題視されてきた。それは常に問い直されなければならないが、ここでは高齢者、しょうがい者(2021年3月4日付拙論「「障害者」ではなく「しょうがい者」と記そう」)の生命・生存に直結する2つの外来語、「ハザードマップ」および「AED」を例にあげて、問題を論じたい。

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筆者

杉田聡

杉田聡(すぎた・さとし) 帯広畜産大学名誉教授(哲学・思想史)

1953年生まれ。帯広畜産大学名誉教授(哲学・思想史)。著書に、『福沢諭吉と帝国主義イデオロギー』(花伝社)、『逃げられない性犯罪被害者——無謀な最高裁判決』(編著、青弓社)、『レイプの政治学——レイプ神話と「性=人格原則」』(明石書店)、『AV神話——アダルトビデオをまねてはいけない』(大月書店)、『男権主義的セクシュアリティ——ポルノ・買売春擁護論批判』(青木書店)、『天は人の下に人を造る——「福沢諭吉神話」を超えて』(インパクト出版会)、『カント哲学と現代——疎外・啓蒙・正義・環境・ジェンダー』(行路社)、『「3・11」後の技術と人間——技術的理性への問い』(世界思想社)、『「買い物難民」をなくせ!——消える商店街、孤立する高齢者』(中公新書ラクレ)、など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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