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志穂美悦子のために書いた『二代目はクリスチャン』

北区への転居とその後

長谷川康夫 演出家・脚本家

女優、志穂美悦子との出会い

 この滝野川移転を前にして、つかはある仕事を片付けている。『蒲田行進曲』以来2作目となる映画、『二代目はクリスチャン』の脚本である。前後してその小説版にも取り組み、両方ほぼ同時期に完成したはずだ。

 そもそもこの映画の企画は、『蒲田行進曲』で関係が出来た佐藤雅夫ら東映京都撮影所のプロデューサー陣との間で生まれたものらしい。主演が志穂美悦子というのも、その企画の前提だったようだ。

拡大志穂美悦子
 きっかけは『蒲田行進曲』の中で、ヤスが小夏の出産費用を稼ぐために、様々な映画のスタント場面に出演するといういくつかのシーンに、千葉真一、真田広之、志穂美悦子など、当時JAC(ジャパン・アクション・クラブ)の人気俳優たちが、監督の深作欣二との関係から、それぞれゲスト出演したことではなかったか。

 実は『蒲田行進曲』公開のすぐあと、その三人を主役に想定した映画が松竹サイドで企画されている。つかは『スタントマン物語』のタイトルで脚本を書き、小説も83年の春、『野性時代』に発表していた。しかしなぜかこの時点では映画として成立せず、87年になってようやく、タイトルを小説出版時の『この愛の物語』として、別キャストで映画化されるのだが、結局『二代目はクリスチャン』の方が先行してしまうのである。

 ヤクザの一家を継がなければならなくなる、カトリック教会の修道女を主人公とするこの作品は、前述したように、女性らしからぬアクションの切れ味と、それとは裏腹な清純さを併せ持つ、志穂美悦子という女優ありきで出発したものだ。

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筆者

長谷川康夫

長谷川康夫(はせがわ・やすお) 演出家・脚本家

1953年生まれ。早稲田大学在学中、劇団「暫」でつかこうへいと出会い、『いつも心に太陽を』『広島に原爆を落とす日』などのつか作品に出演する。「劇団つかこうへい事務所」解散後は、劇作家、演出家として活動。92年以降は仕事の中心を映画に移し、『亡国のイージス』(2005年)で日本アカデミー賞優秀脚本賞。近作に『起終点駅 ターミナル』(15年、脚本)、『あの頃、君を追いかけた』(18年、監督)、『空母いぶき』(19年、脚本)などがある。つかの評伝『つかこうへい正伝1968-1982』(15年、新潮社)で講談社ノンフィクション賞、新田次郎文学賞、AICT演劇評論賞を受賞した。20年6月に文庫化。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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