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『室温~夜の音楽~』主演、古川雄輝インタビュー(上)

お客さんがクスッと笑うことも含めて完成する作品

米満ゆうこ フリーライター

 ケラリーノ・サンドロヴィッチが2001年に作・演出を手掛けたホラーコメディ『室温~夜の音楽~』が、河原雅彦の新演出と在日ファンクの演奏で上演される(6月25日~7月10日/世田谷パブリックシアター、7月22日~24日/兵庫県立芸術文化センター阪急 中ホール)。

 ケラリーノ・サンドロヴィッチらしい、どこかのほほんとしたつかみどころのないユニークな会話が進むにつれ、キャラクターの過去や事件の真相が次々とあぶり出される毒たっぷりの物語だ。今作で犯罪者を演じる主演の古川雄輝が、作品や、譲れないところがあるという役者の仕事について思うことを語ってくれた。

変化球を投げつつ、コメディ要素が出せるか初挑戦

古川雄輝=久保秀臣 撮影拡大古川雄輝=久保秀臣 撮影

――今回、3年ぶりの舞台出演です。

 久しぶりなので、非常に緊張しています。自分にこの役ができるのかなという緊張感と、素敵な舞台にしたい、皆でいい芝居ができればいいなというワクワク感の両方の感情がありますね。3年前も主役で舞台に出演したので、今回もオファーをいただいて、本当にうれしいです。

――初演の台本を読んでどんな印象を受けましたか。

 コメディですが、ちょっと笑っていいのかなと思うシリアスな怖いシーンもあります。役者同士の掛け合いで思わずクスッと笑ってしまう構成で、舞台ならではだなと感じました。お客さんがクスッと笑うことも含めて完成する作品ですね。短いセリフも多いので、そのワードをどう表現するかで、ただの流れではなく面白くなるはずです。演者によって笑うポイントも変わってきますし、どうなるのか稽古に入るのがとても楽しみです。

――物語は、堀部圭亮さん演じるホラー作家と平野綾さん演じる娘が田舎で暮らしていて、拉致・監禁の末12年前に殺害されたもう1人の双子の娘の命日に、ホラー作家のファンや加害者の青年が訪ねてくるという展開です。古川さんはその加害者の青年を演じます。

 ある罪を犯した青年で、それ以上は現段階では話さないでほしいと演出家の河原さんから言われています(笑)。セリフのやり取りや構成は犯罪者のように描かれているのではなく、人を殺した分かりやすいシーンが出てくるわけでもない。本当にこの人がそんなことをしてしまったのかという役柄になると思います。これから河原さんと相談しながら考えていきたいです。

古川雄輝=久保秀臣 撮影拡大古川雄輝=久保秀臣 撮影

――古川さんは映像の出演が多いですが、舞台と映像はどう違いますか。

 舞台は稽古が1カ月ぐらいあるので、毎回、自分は壁にぶち当たるんです。今まで映像ではできていたのに、舞台ではできないと気づくことが多い。それを何とか乗り越えてから本番でお客さんの前に立つんですけど、3年ぶりなので、少しでも成長した姿をお見せできたらいいなと思います。舞台は初日や中日、千秋楽で芝居が変わっていくものなので、変化した自分やキャストの皆さんを見ていただきたいですね。

――どういうことで壁にぶち当たるのですか。

 映像だったらOKが出るだろうなという受けの芝居が、舞台ではなかなかOKが出ないことがあって。劇場で遠い席の人には見えないので、目線や細かい動きなど繊細なリアクションはOKとされない。そこが非常に難しいですね。ドラマはカット割りが先に決まっているので、その瞬間を狙って芝居をすればうまくいくんですけど、舞台ではそうはいかない。自分のシーンじゃなくても、役としてそこに存在しなくてはいけない。映像ではそこまで写らないことが多いんです。

――舞台での芝居が映像で生きてきたりはしますか。

 そこは難しくて。よくあるのは、舞台出演の直後に映像の仕事をしたら、声が大きすぎて、その場で浮くことです。舞台は声の出し方も違うし、足先まで見られているので、緊張感もありますね。映像は下半身を切ったりできるし、根本的に違うお芝居なのかなと思います。感情の出し方は応用できると思うんですが、テクニカルな部分は難しいかなと個人的には思いますね。

古川雄輝=久保秀臣 撮影拡大古川雄輝=久保秀臣 撮影

――舞台の良さはどこでしょう。

 ベストな状態で稽古に入るんですが、そこからより良いものにできる。ドラマはそれを数分の間にやらなくてはいけない。提示して、そこで本番に挑む即興の力を求められます。舞台は常に発見と学びがある仕事だと思いますし、お客さんがいることも大きいですね。

――今までとはどう違うチャレンジをしてみたいですか。

 舞台上でのコメディは一番難しいと思います。変化球を投げつつ、コメディ要素が出せるか今までしたことがないので、稽古場でも挑戦だと思っています。

◆公演情報◆
舞台『室温~夜の音楽~』
東京:2022年6月25日~7月10日 世田谷パブリックシアター、
大阪:2022年7月22日~24日 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
公式ホームページ:
[スタッフ]
作:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
演出:河原雅彦
音楽・演奏:在日ファンク
[出演]
古川雄輝、平野綾、坪倉由幸(我が家)、浜野謙太、長井短、堀部圭亮 ほか
〈古川雄輝プロフィル〉
 1987年12月18日生まれ。東京都出身。7歳でカナダへ。中学卒業と共に、単身カナダからアメリカ・NYへ渡る。2009年、ミスター慶應コンテストでグランプリに輝き、2010年、キャンパスターH★50with メンズノンノにて審査員特別賞を受賞。同年8月役者デビュー。2013年に主演を務めたドラマ『イタズラなKiss~Love in TOKYO』が中国で大ヒット。主な舞台出演作品は、『俺たちの明日』『イニシュマン島のビリー』『神の子どもたちはみな踊る after the quake』など。現在、主演ドラマ『ねこ物件』、ドラマ『嫌われ監察官 音無一六』に出演中。
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筆者

米満ゆうこ

米満ゆうこ(よねみつ・ゆうこ) フリーライター

 ブロードウェイでミュージカルを見たのをきっかけに演劇に開眼。国内外の舞台を中心に、音楽、映画などの記事を執筆している。ブロードウェイの観劇歴は25年以上にわたり、〝心の師〟であるアメリカの劇作家トニー・クシュナーや、演出家マイケル・メイヤー、スーザン・ストローマンらを追っかけて現地でも取材をしている。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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