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シェイン・マガウアンのパンク精神──酒と生きてきた男の半生

印南敦史 作家、書評家

“パンクの精神性”の意義

 1970年代中期に誕生したパンク・カルチャーには、ちょうど思春期まっただなかにあった私も大きな影響を受けた。そこから教わったことは多いが、特に重要だったのは「従来の価値観に縛られる必要はない」という考え方だ。なにかと反発したくなる時期にあったからかもしれないが、ともあれそこから、パンクは私にとって大切なもののひとつとなっていったのだ。

© The Gift Film Limited 2020拡大『シェイン 世界が愛する厄介者のうた』 © The Gift Film Limited 2020

 あのころパンクは、社会に(少なくとも音楽業界に)多大な影響を与えた。“パンク以前かパンク後か”“パンクを体験しているか否か”が、そのカルチャーに関わる人間の質を判断する基準にすらなった。ちょうど、不良が不良の匂いを感じ取りやすいことと似ているかもしれない。「あ、こいつはパンクを通ってきているな」と感じさせる“匂い”は確実にあり、そこから人との新たな関係が生まれていったりもしたのである。

 そのくらい、パンクの功績は大きかったのだ。しかし、だからこそ絶望することもあった。当然の流れではあるのだが、ビジネスとして肥大化していくほど、パンクの一部はその本質を失っていったからだ。たとえばジェネレーション・Xというバンドのシンガーを経てソロに転身したビリー・アイドルなどは、“パンクっぽいイメージ”を売りにした好例だ。

 ファンの方には申し訳ないが、個人的には、カウンター・カルチャーをだめにするのはああいうタイプの

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筆者

印南敦史

印南敦史(いんなみ・あつし) 作家、書評家

1962年、東京生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。「ダ・ヴィンチ」「ライフハッカー(日本版)」「東洋経済オンライン」「ニューズウィーク日本版」「サライ.JP」「WANI BOOKOUT」など、紙からウェブまで多くのメディアに寄稿。著書に『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『書評の仕事』 (ワニブックスPLUS新書)など多数。新刊に『遅読家のための読書術──情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(PHP文庫)、読書する家族のつくりかた──親子で本好きになる25のゲームメソッド』(星海社新書)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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