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【公演評】花組『巡礼の年〜リスト・フェレンツ、魂の彷徨〜』『Fashionable Empire』

魂は何を求め彷徨う 柚香光が美貌のピアニストに挑戦、弾き語りでも魅了

さかせがわ猫丸 フリーライター

 花組公演ミュージカル『巡礼の年〜リスト・フェレンツ、魂の彷徨〜』と、ショー グルーヴ『Fashionable Empire』が、6月4日、宝塚大劇場で初日を迎えました。

 19世紀初頭、ピアノの魔術師と称されたフランツ・リストに挑むのは、花組トップスター柚香光さんです。情熱的な演奏と類まれなる美貌で時代の寵児となった彼が、「自分らしく生きるとは?」そう自らに問い続け、真に追い求めたものは何だったのか……。相手役の星風まどかさん演じるマリー・ダグー伯爵夫人との恋や、水美舞斗さん演じるフレデリック・ショパンとの友情をからめながら、リストの生きざまをドラマチックに描き出します。

 2幕はショー グルーヴ『Fashionable Empire』。柚香さん率いる花組の洒落者たちが集う“Empire(帝国)”で繰り広げられるショーは熱く、激しく燃えていて、劇場内にはもう夏が到来しているかのようでした。(以後、ネタバレがあります)

ピアニスト柚香が躍動する

 屋根裏部屋にまどろむリストと、女流作家ジュルジュ・サンド(永久輝せあ)。物語は、2人のアンニュイな時間から始まります。恋人? 同志? それは謎ですが、リストもサンドも、自らの手でのし上がってみせるという野望に燃えていました。

 柚香さん演じるリストは金髪のワンレングスボブ。美貌のピアニストと呼ぶにふさわしいルックスで、髪をかき上げるしぐさがたまりません。柚香さんが実際に演奏するピアノもさっそくご堪能ください。

 ――1832年パリ。フランス革命を経てもなお、毎夜サロンでは貴族たちがお抱え芸術家に腕前を披露させ、享楽と所有欲におぼれている。中でもフランツ・リスト(柚香)は、その美貌と華やかなパフォーマンスで、誰よりも貴婦人たちを熱狂させていた。だが、栄光と人気におぼれ、パトロンのラプリュナレド伯爵夫人(音くり寿)の怒りを買い、芸術家仲間をも見下す発言をし始めるなど、自分を見失っていく姿を案じた友人のフレデリック・ショパン(水美)は、ある日、リストにとある音楽評を見せる。そこには礼賛ではなく、彼が向き合うべき本質が書かれていた。

 サロンに集う貴族たちは皆、きらびやかな衣装を着て、豪華なお屋敷を模したセットはゴージャスそのものです。さらに中央の高台に設置されたピアノは、まるでブルジョワの象徴のよう。そこへ柚香さん演じるリストが登場して演奏すると、おしとやかな貴婦人たちが突如キャーキャーはしゃぎだし、まさにスーパーアイドルのコンサート状態となります。

 華やかさのかたまりのようなリストは、これぞ柚香さんの真骨頂。髪を振り乱し、激しく踊りながら演奏する姿のカッコよさは他を寄せ付けません。盆がまわり、貴婦人に囲まれて盛り上がる、演出の生田大和先生のいう“ピアノだんじり”の迫力は、プログラムの1面を見るだけでも想像できます。

 しかし、リストはただ浮かれているだけではありませんでした。チヤホヤされる環境が増長させる傲慢さと、同時に膨らんでいく謎の焦燥感やコンプレックス。リスト自身にも制御できない感情は、のちのマリーとの出会いや、再燃する野望もつながります。柚香さんはそんな危うさを情感ににじませながら、巧みに演じていました。

◆公演情報◆
『巡礼の年〜リスト・フェレンツ、魂の彷徨〜』
『Fashionable Empire』
2022年6月4日(土)~7月11日(月) 宝塚大劇場
2022年7月30日(土)~9月4日(日) 東京宝塚劇場
公式ホームページ
[スタッフ]
『巡礼の年〜リスト・フェレンツ、魂の彷徨〜』
作・演出:生田 大和
『Fashionable Empire』
作・演出:稲葉 太地

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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