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発見された井上ひさし未発表戯曲がはらむ「謎」

24歳で書いた悪漢物語『うま』、おもしろさ奥深く

山口宏子 朝日新聞記者

24歳の戯曲『うま』、ひょっこり出現

 テレビ東京「開運!なんでも鑑定団」に出品されて話題になった劇作家・井上ひさしの未発表戯曲『うま ―馬に乗ってこの世の外へ―』が、月刊文芸誌「すばる」(集英社)の2022年7月号(6月6日発売)に掲載された。亡くなって12年、仏教でいえば十三回忌の直前にひょっこり現れた無名時代の原稿は、若き日の井上の筆の勢いを示し、後の作品につながる様々な「種」といくつかの「謎」をはらむ戯曲だった。

拡大井上ひさし(1992年撮影)/未発表戯曲『うま』が掲載された月刊「すばる」(集英社)2022年7月号

 「すばる」の同じ号に載った妻・井上ユリさんのエッセイによれば、原稿は次のような経緯で「発見」された。

 ユリさんは今年1月末、テレビ東京のディレクターからの電話で、原稿の存在を知った。「なんでも鑑定団」に井上の未発表原稿が持ち込まれたという連絡だった。かつて井上が「劇団東京小劇場」の演出家(故人)に『うま』の原稿を渡し、それを、いずれ演出をしたいという俳優が預かったが、上演は実現しなかった。俳優も亡くなって16年たった昨年、妻が遺品の中から原稿を見つけた。「井上廈(ひさし、本名)」という署名があり、筆跡、内容などからも井上ひさし作品であることが確認され、3月15日番組が放送された。その後、原稿をユリさんが購入。4月10日に山形県川西町で開かれた井上をしのぶ「吉里吉里忌」で展示された。

 『うま』はA4判、43字×18行という珍しい体裁の原稿用紙162枚に書かれている。上下に余白をとって1行30字にして使い、本文は400字詰め原稿用紙に換算すると220枚ほど。厚紙で表紙をつけて製本され、裏表紙の内側に〈第一稿 昭和34年6月21日〉と鉛筆書きの日付があった。

拡大「吉里吉里忌」で公開された『うま』の原稿=2022年4月10日、山形県の川西町フレンドリープラザ

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筆者

山口宏子

山口宏子(やまぐち・ひろこ) 朝日新聞記者

1983年朝日新聞社入社。東京、西部(福岡)、大阪の各本社で、演劇を中心に文化ニュース、批評などを担当。演劇担当の編集委員、文化・メディア担当の論説委員も。武蔵野美術大学・日本大学非常勤講師。共著に『蜷川幸雄の仕事』(新潮社)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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