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『PLAN 75』早川千絵監督に聞く──75歳で生死を選択できる社会とは

「日本人はこの制度をすんなりと受け止めると思う」

林瑞絵 フリーライター、映画ジャーナリスト

現実がフィクションを飛び越えた

初長編作品の『PLAN 75』がカンヌ映画祭「ある視点」部門に選ばれた早川千絵監督拡大初長編作品の『PLAN 75』がカンヌ国際映画祭「ある視点」部門に選ばれた早川千絵監督=撮影・林瑞絵

──本作にはもとになる短編があったのですね。

早川 最初から長編として考えてはいたのですが、プロデューサーが見つかっていませんでした。たまたまその頃、『十年 Ten Years Japan』の話をいただき、「10年後の日本を描く」という映画のコンセプトがマッチすると思って、まずは短編を作ったのです。

──2017年頃に構想された内容だと思いますが、映画は高齢化以外にもすごく今を描いている感じもありました。例えば、デジタル社会や管理社会。市役所で職員と相談をしても予定の30分ぴったりに終わるところなども、(筆者の住む)フランスと全く同じです。コロナ禍とともに、現実がこういった世界へと加速度的に進んでいったと、監督ご自身も驚きませんでしたか。

早川 本当にそうです。長編の『PLAN 75』では高齢者を安楽死させる施設はちゃんとした建物でしたが、短編では古い体育館が避難所や野戦病院のように白いカーテンで全部が仕切られていて、そこで処置をするという絵にしていました。その後コロナ禍で各国に造られた隔離病棟の様相がこれとそっくりだったことに驚きました。また、海外においてコロナの治療で高齢者に人工呼吸器を付けないなど命に優先順位がつけられたり、日本でも「若い人に高度医療を譲ります」という意思表示カードが作られ話題になったり。現実がフィクションを飛び越えてしまったと思いました。

©2022『PLAN 75』製作委員会/Urban Factory/Fusee拡大©2022『PLAN 75』製作委員会/Urban Factory/Fusee

──政府の語り口もやたらと耳ざわりの良い感じで誘ってきますね。

早川 いろんな面で「言い換え」が多いなと感じます。政府が打ち出してくるスローガンや新しい言葉、例えば「一億総活躍社会」とか。「活躍」と言うとすごくポジティブに聞こえるけれども、裏を返せば、「自分たちでいつまでも働いて、自分たちでなんとかしてくださいね」というメッセージにも聞こえます。

──主人公を演じた倍賞千恵子さんは、ホテルの清掃員や交通誘導員の仕事をされていました。いつまでも働き続けなければならないというのも、まさに現在の日本が描かれていると感じます。

早川 「『プラン75』という制度は今はないけれども、それ以外の描かれていることは全てすでに存在している」と、外国のジャーナリストに言われました。

──主人公は女性にしたかったということですが。

早川 正社員で何年も働いた人は、老後に暮らしていける分を年金でもらえますよね。でも女性は非正規雇用だったり、結婚していて専業主婦だったりとかの人が多く、一人で高齢になった時に貧困に陥るリスクが男性より高いのです。確実に女性の方が厳しい現実を生きているだろうと。

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筆者

林瑞絵

林瑞絵(はやし・みずえ) フリーライター、映画ジャーナリスト

フリーライター、映画ジャーナリスト。1972年、札幌市生まれ。大学卒業後、映画宣伝業を経て渡仏。現在はパリに在住し、映画、子育て、旅行、フランスの文化・社会一般について執筆する。著書に『フランス映画どこへ行く――ヌーヴェル・ヴァーグから遠く離れて』(花伝社/「キネマ旬報映画本大賞2011」で第7位)、『パリの子育て・親育て』(花伝社)がある。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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