宗教者でツアコンで商売人で……「御師」とその町のスケールに驚く
2022年06月28日
「伊勢市クリエイターズ・ワーケーション」という事業で、三重県伊勢市に来ております。
伊勢市が全国の文化・芸術分野のクリエイターを招き、市内での滞在、創作に取り組んでもらうという企画で、応募したら、選ばれた! とはいえ直後のコロナ禍で、1年半も延期になりまして……や~っと、来られた!
1週間滞在します。1日だけ公演がありますが、あとの時間はお稽古と、自由に伊勢の町々を巡らせてもらえる、なんともありがたい事業です。
私の父の故郷が三重県の松阪市なので、神宮にもお詣りしたことがあり、伊勢は、なつかしい。ゆっくり滞在するのは、初めてです。
今回は、弟子の奈みほと、曲師の沢村豊子師匠のお弟子のまみさんも同行しております。お稽古場も提供していただき、毎日、3人そろってお稽古三昧。嬉しい機会です。
伊勢に行ったら、御師(おんし)の旧居に行ってみたいと思っていました。
浪曲の前身芸に山伏祭文があることから、山伏に興味をもって山伏修行をしたことは、過去にこの連載で書きました。今までに2度ほど、出羽三山で2泊3日の山駆けをしました。
山伏と御師はちょっと違うのだけれど、いずれも宗教者であり、ビジネスマンでもあり、市民生活の枠の外の人であり、とくに伊勢御師は有名なので、興味がありました。
御師とは。
神職です。全国に信者(檀家)を持ち、それを組織しています。毎年御師の手代たちが全国の信者の家々をまわり、神社のお札を配り、代わりに寄進を受ける。そして「講」を組んでお詣りする人々を現地で迎えて、祈祷をし、神楽を催し、宿泊させ、接待する。宗教者でもあり、ツアーコンダクターでもあり、商売人でもあり……相当な財力を持った御師もいたそうです。
富士浅間神社の御師、石清水八幡宮の御師、熊野御師、賀茂の御師など全国の神社に御師がいたが、とくに伊勢御師は数も多く有名です。ほかの地域では「おし」といいますが、伊勢だけは「おんし」。一時期は、伊勢の宇治と山田に800もの御師の家があったそうです。
伊勢市に唯一残っている御師の旧居・丸岡宗大夫邸にうかがいました。
伊勢神宮は内宮と外宮とがありますが、丸岡宗大夫は外宮の御師。慶長年間……というから、江戸時代になる前から、伊勢に移住し、明治4年に、明治新政府によって御師制度が廃止されるまで、代々外宮の御師を営んだ。
かつて800もあった御師邸ですが、現存するのはこの丸岡宗大夫邸のみとのこと。館長の丸岡正之さんは宗大夫の末裔で、御師のことを詳しく解説してくださいます。
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