勝部元気(かつべ・げんき) コラムニスト・社会起業家
1983年、東京都生まれ。民間企業の経営企画部門や経理財務部門等で部門トップを歴任した後に現職。現代の新しい社会問題を「言語化」することを得意とし、ジェンダー、働き方、少子非婚化、教育、ネット心理等の分野を主に扱う。著書に『恋愛氷河期』(扶桑社)。株式会社リプロエージェント代表取締役、市民団体パリテコミュニティーズ代表理事。所有する資格数は71個。公式サイトはこちら
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
ジェンダーレスという考え自体を組織のルールにしよう
ジェンダーレス化の動き自体は歓迎すべきことではあるのですが、その一方で、懸念や課題も多数あります。
まず、これらは事例として珍しいから記事になったり、SNSで話題になるのであって、社会のスタンダードはまだ男女で異なる身だしなみルールを課す性差別があふれていることを忘れてはなりません。
私自身も、会社員時代にヘアピンをつけて作業をしていたところ、服務規程に「男性のヘアピン着用は禁止」と後から付け加えられて、ジェンダー・エクスプレッション(外見の性表現)を決まりきった型に矯正しようとする圧力に、自尊心やセルフアイデンティティを傷つけられたことがありました。同様に、今この瞬間にも、性差別的ルールで苦しむ人は多々いることでしょう。
ジェンダーレス化へ転換した学校や企業の担当者が、「時代に合わせていかなければならない」などとコメントすることがありますが、今も昔も苦しむ人の痛みは変わりません。ですから、「時代が変わったから」といった曖昧な理由ではなく、「セクシズム(性差別主義的)なルールは人権や個人の尊厳の侵害になるから見直した」と正確に言って欲しいものです。
就活に関しては、ジェンダーに関係なく、身だしなみに関する一律の基準を就活生に示すこと自体、必要性が薄れているように思います。
というのも、以前に比べて、従業員に課す身だしなみルールは職場・業界ごとに様々で、多様化が進んでいるからです。たとえば、「スーツでなければダメ」「ビジネスカジュアルならOK」「清潔感さえ保てば基本的に自由」のように、幅が広がっています。とりわけ、コロナ禍によるテレワークの普及を経て、その傾向は強くなったはずです。
応募先企業の社員の身だしなみが多様であるのに、就活生には統一的な基準に従わせるのはおかしな話です。就活会社などは「身だしなみは応募先の服務規程を確認したり、それぞれの業界の慣行に合わせましょう」とアドバイスするだけで十分ではないでしょうか。
ただし、就活会社が変わるだけでは、学生が実際にどう対応するべきか戸惑うと思います。
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