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コンサート『THE Roots 2022~Kazuki Kato×Manato Asaka~』レポート

オーケストラにのせて加藤和樹&朝夏まなとのバディ感と青春の煌めきが溢れ出る

小野寺亜紀 演劇ライター、インタビュアー


 ミュージカル『ローマの休日』、『BARNUM』で共演した、同い年でもある加藤和樹と朝夏まなとが2人の“ルーツ”を音楽で辿るコンサート、『THE Roots 2022~Kazuki Kato×Manato Asaka~』が、6月25・26日に大阪で開催された。

 会場となったのは、クラシック音楽専用ホールである住友生命いずみホール。7月2日・3日に行われる東京・紀尾井ホールも同じスタイルの会場で、20人編成のオーケストラと、2人の歌声とのシンフォニックな共演を、贅沢な空間で楽しめる趣向となっている。

 さらに2人が誕生した1984年のヒット歌謡曲をはじめ、誰もが知っているJ-POPから重量級のミュージカルナンバーまで、幅広いセットリスト。加藤と朝夏が明るい笑顔で届ける日本の名曲からは“青春の煌めき”のようなものが溢れ出て、聴衆も歌振りまで一緒にやってしまうノリの良さで盛り上げる。

 もちろんじっくり聴かせるバラードや、さすがの歌唱で聴衆の心をわしづかみにするミュージカルの名曲もあり。約2時間、息の合ったMCを挟んで展開するコンサートの模様を、公表されている曲名のみ触れながらレポートする(一部の楽曲は回替わり)。ただ、全くまっさらな状態で楽しみたい人は、ぜひ鑑賞後に読んでほしい。

懐かしい歌謡曲も新しく感じるアレンジと歌声

『THE Roots 2022~Kazuki Kato×Manato Asaka~』公演から
拡大『THE Roots 2022~Kazuki Kato×Manato Asaka~』公演から

 オープニング、「山下康介&THE Roots チェンバーオーケストラ」が舞台上で演奏を始めると、厚みのあるサウンドに全身が包まれる贅沢さを実感。そしてボルドー色のスーツをまとった加藤和樹、黒いパンツスーツ×白いブラウスの朝夏まなとが登場し、体を揺らしながら1970年代の洋楽ヒットナンバーを軽やかに歌うと、シャンデリアが煌めく会場の非日常的な空間もあいまって、“上質のおもてなし感”が心地よく漂った。

 加藤が「お互いのコンサートではできないことをたくさん盛り込んでみました」と、オリジナル曲ではなく、ミュージカルナンバーと歌謡曲やJ-POPとのクロスオーバーな時間を届けることを伝え、朝夏も「始まりましたね!」と高揚感を抑えきれない様子。加藤のことを「おとうさん」と呼ぶ朝夏に、「おい、誰がおとうさんや!」と愛嬌さえ感じる加藤のツッコミが入り、拍手が沸き起こるなど、終始2人のバディ感が歌やトークから伝わってきて、見ている方は自然と笑顔になる。

 1曲目で会場が温まった後は、2人が生まれる前に日本でヒットした曲を歌うコーナーへ。1970年代から1980年代は国民的アイドルが次々と誕生した時代で、そんな話題にも触れながら朝夏は、山口百恵の「プレイバックpart2」を振り付きで披露する。腰に手を当て、体を斜めにポージング、射るような目線と艶のある低音で歌い出し、「馬鹿にしないでよ!」という歌詞を発すると、元男役トップスターならではのオーラが。曲紹介のトークで加藤が「絶対にかっこいいじゃん!」と朝夏に言った言葉に納得だ。

『THE Roots 2022~Kazuki Kato×Manato Asaka~』公演から
拡大『THE Roots 2022~Kazuki Kato×Manato Asaka~』公演から

 一方加藤は、初日は違う楽曲だったが、このコーナーで西城秀樹の「ギャランドゥ」を歌うことが公表されている。違う男性歌手の歌を歌った場面でも思ったが、彼の安心感を与える低音ヴォイスは、1970年代から1980年代の歌謡曲にとてもマッチしている。また、誕生年の1984年に発表された歌謡曲をメドレーで届ける場面での、飛び跳ねるように歌った某ヒット曲の弾けっぷりも新鮮だった。

スタイリッシュな2人がアイドルの曲まで歌い上げる

 「1984年メドレー」で朝夏は、アンニュイな表情に低めのささやくようなヴォーカルが特長のアイドルと、キラキラとした笑顔に透明感溢れるキュートな歌声が特長のアイドル、対照的な1980年代を代表する2大女性アイドルの曲を制覇しながら、3曲を披露。声の振れ幅や、豊かな表情でも魅せる。

 さらに2人揃って、チェッカーズの「涙のリクエスト」をハモりも交えて楽しげに歌う。片手を上げてグルグル回すサビの振付は、聴衆もつられるように参加するほどの一体感。舞台の右へ左へと移動しながら歌う2人のボルテージは上がってゆき、歌い終わった直後に加藤が「本番だとこんなテンションになるんだ!」と驚くほど。2人とも息を整えながら満面の笑みを見せていた。

 続いて平成以降のJ-POPへと進んでいく前に、回替わりテーマとして「カラオケで歌う曲」についてトークを繰り広げる。朝夏は宝塚歌劇団に入団してから、歌の練習場所としてもカラオケを利用していたと言い、Mr.Childrenや東方神起など男性アーティストの歌をよく歌っていたという。加藤は学生時代からただ純粋にカラオケが大好きで、基本歌っていたのはジャニーズの曲と明言。そして同世代の2人ならではの、好きなアーティストの思い出話などで話が弾み、男性アイドルデュオの大ヒット曲も生き生きと歌い切った。

 数々の楽曲を披露するなかで、朝夏は尊敬する安室奈美恵の「HERO」を歌う場面が圧巻。ヴァイオリンの力強い音色から一気に引き込まれるオーケストラ演奏とともに、聴衆の背中を押すようなパワフルな歌声で聴かせる。そしてこの歌を歌える喜びが、タテ乗りでリズムを刻むしぐさからも溢れ出ていた。

『THE Roots 2022~Kazuki Kato×Manato Asaka~』公演から
拡大『THE Roots 2022~Kazuki Kato×Manato Asaka~』公演から

 加藤がラフなシャツを着て登場すると、トークは夏の話題へ。「夏休みの宿題は先にやる派だったか、後にやる派だったか」という話では、2人の性格の違いが見えておもしろい。学生時代の姿が目に浮かぶ楽しいトークの後には、「夏といえば……」的な鉄板の歌謡曲で、ホール全体に太陽の光が降り注ぐような明るさを届ける。そういえば、“宙組の太陽”と言われた朝夏と、どこか“陰影ある月の魅力”を感じさせる加藤。役を演じていない2人が並び、声を合わせることでの相乗効果を、いろいろな場面で実感するコンサートになっている。

◆公演情報◆
『THE Roots 2022~Kazuki Kato×Manato Asaka~』
大阪:2022年6月25日(土)~26日(日) 住友生命いずみホール ※終了
東京:2022年7月2日(土)~3日(日) 紀尾井ホール
公式ホームページ
[出演]
歌:加藤和樹、朝夏まなと
指揮:山下康介
演奏:THE Roots チェンバーオーケストラ

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筆者

小野寺亜紀

小野寺亜紀(おのでら・あき) 演劇ライター、インタビュアー

大阪府出身。幼い頃から舞台をはじめ、さまざまなエンターテインメントにエネルギーをもらい、その本質や携わる人々の想いを「伝える」仕事を志す。関西大学文学部卒業後、編集記者を経て独立。長年、新聞や雑誌、Webサイト、公式媒体などで、インタビューや公演レポート等を執筆している。特に宝塚歌劇関係の取材は多い。 小野寺亜紀オフィシャルサイト(https://aki-octogreen.themedia.jp/)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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