廃れつつある仏壇
仏壇が家にあるという家庭は、減少の一歩をたどっている。
日本人の仏壇の保有率について、第一生命経済研究所が2012(平成24)年に調査しているが(「宗教的心情としきたりの関連」)、仏壇が「ある」と答えた人が46.7%、子どもの頃に「あった」と答えた人が66.2%だった。
その後も、仏壇仏具関連業者などによる複数の調査があるが、ほとんどが40%前後の普及率となっている。
また経済産業省の工業統計調査によると、1997(平成9)年に855億4200万円だった宗教用具製造業の市場規模が、2019(令和元)年には183億3000万円まで縮小している。
仏壇という文化は、少しずつではあるが、廃れていっていると言わざるを得ない。

華やかな装飾がないシンプルな仏壇が売れ筋だという=名古屋市の大黒屋仏壇店
仏壇を置く家が減った理由としてまず挙げることのできるのが、住宅事情である。
特に、新しく建てた住宅の中には、和室が無いことが多く、それが仏壇を置きにくい原因となっている。また、マンション住まいだったり、一戸建てに住んでいても小規模だったりして、仏壇を置くスペースそのものが無いということも少なくない。
住環境が、仏壇を置くことを許さないということである。
もうひとつの理由は、3世代同居が無くなりつつあるということだ。
仏壇を守る役割は、家族の中で年齢の高い人が担うのが一般的である。祖父母、息子夫婦、孫がいっしょに暮らす家であれば、祖父もしくは祖母が仏壇を守っていた。次の世代は、それを見ながら仏壇に馴染みつつ、仏壇の大切さを学んできたのである。
ところが核家族化が進むと、祖父母の家と、その息子夫婦と孫の家は別々となり、若い世代の家には仏壇が無くなる。つまり仏壇の無い家が生まれるということである。
それを何世代か繰り返すことで、仏壇が無いのが当たり前ということになっていくのだ。
そしてもうひとつ、そもそも仏壇を必要と感じていない人が増えていることがある。なぜ、わざわざ高い費用をかけて、大きな仏壇を部屋に置かなければならないのか、ということだ。そうなると、新しく仏壇を買おうという人が減っていくのは、自然な流れと言わざるを得ないのである。