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BOND52 VOL.1『山笑う』、松本哲也(作・演出)&山﨑静代&浜谷康幸インタビュー(上)

兄妹の哀歓を全編宮崎弁で届ける

大原薫 演劇ライター


 劇団ゴツプロ!の浜谷康幸が新たなプロジェクト「BOND52」を立ち上げる。その第1弾公演となる「BOND52 VOL.1小松台東BONDゴツプロ!『山笑う』」が7月7日より東京・小劇場B1で上演される。

 作・演出として迎えるのは小松台東の主宰・松本哲也。『山笑う』は母親の葬儀のため久しぶりに宮崎に帰ってきた妹と宮崎に住む兄、さらに2人を取り巻く人物たちとのやり取りから浮かび上がる哀歓の物語。2010年の旗揚げ以降、松本の出身地である宮崎県を話の舞台に、現代“宮崎弁”口語演劇を行っている小松台東の代表作だ。

 作・演出の松本、兄・伸夫役で主演する浜谷、そして妹・菜々役で出演する山﨑静代(南海キャンディーズ)に話を聞いた。

「動」のゴツプロ!と「静」の小松台東が繋がる公演

左から、浜谷康幸、山﨑静代、松本哲也=岩田えり 撮影拡大左から、浜谷康幸、山﨑静代、松本哲也=岩田えり 撮影

――浜谷さんがBOND52を立ち上げた理由を教えてください。

浜谷:演劇界というのは横の繋がりがそんなにないんです。僕が所属する劇団のゴツプロ!はほとんど客演を呼ばずに公演を続けてきたので、外と繋がっていきたいと思ったんですね。「BOND」には「繋ぐ」「縁」という意味があるので、他劇団とつながりたいという想いを込めて「BOND52」と名付けました。

 ゴツプロ!は動のエネルギーを発信していく団体で、今は本多劇場などで公演をしているんですが、僕が若い頃に出演していたような100人規模の小さい劇場でお客様にエネルギーを届けたいという気持ちもあります。

――第1回公演で小松台東主宰の松本哲也さんを作・演出に起用されたのはどうしてでしょうか。

浜谷:僕が勝手に持っているイメージではゴツプロ!と小松台東は逆のイメージなんですね。松本さんが描く作品は静のエネルギーに満ち溢れているなと感じています。動のエネルギーのゴツプロ!とは真逆に感じて、「BOND52の第1回公演は松本さんしかいない」と思ってお声掛けさせていただきました。

松本哲也=岩田えり 撮影拡大松本哲也=岩田えり 撮影

――松本さんは最初にBOND52の話を聞いてどう思われましたか。

松本:キャリアを重ねていくと出会う役者が増えて、単純な言葉で言うと一緒に芝居をやってみたい役者が年々増えていくんです。でも、自分の劇団では数年に2回か3回の公演数で、出会って一緒に芝居がやりたいと思う役者の数と実際に仕事ができる数が合わない。BOND52の企画は僕にとっても新しい役者さんと繋がる良い機会になる。「ぜひ」という気持ちでしたね。

――山﨑さんがこれまでゴツプロ!や小松台東と何か関わりがあったのでしょうか。

山﨑:なかったんですけど、去年初めて小松台東を観に行かせていただきました。でも、そのときは松本さんと直接お会いすることもなくて、一方的に観ただけだったんです。

浜谷:キャスティングプロデューサーと松本さんとで菜々役は誰がいいだろうかと相談していたら、2人が同じ日に、たまたま別のタイミングで「しずちゃんってどうかな」と言ってきたんです。

山﨑:ええー……⁉

松本:『山笑う』を上演するのは今回で3回目なので、今までと違う『山笑う』にしたくて誰にしようかなとずっと考えていたんです。去年、小松台東で番外公演を上演したときに知り合いの役者さんが「しずちゃんと一緒に観に行くね」と連絡してきてくれて。「あ、そうだ、しずちゃんが菜々役だったら面白いんじゃないかな」と思って。すぐに浜谷さんに連絡したら「こっちでも名前が挙がったんだよ」って。

浜谷:キャスティングプロデューサーはしずちゃんの芝居を観ていて、「菜々役にいいんじゃないか」と思ったそうです。

山﨑静代=岩田えり 撮影拡大山﨑静代=岩田えり 撮影

――山﨑さんが小松台東を観に行ったことがご縁を呼んだのかもしれませんね。

山﨑:そうですよね、ありがたいですね。

松本:観に来てくれていなくても、名前を挙げたと思いますけどね(笑)。

――『山笑う』を上演作品に選ばれたのは?

浜谷:以前松本さんの演出作品に出演したとき、松本さんが「日本の演劇は新作を書き続けていかないといけないところがあるけれど、良い作品をずっと上演し続けたいんだよね」とおっしゃったのを覚えていて。BOND52で何をやろうかという話をしたとき、小松台東とゴツプロ!が一緒に公演するというのもあり、小松台東の代表作を上演することが良いかなと思ったんですね。松本さんに「どういう作品がありますか」とお聞きして、「『山笑う』が合うんじゃないか」ということで台本を読ませていただいて決めました。

松本:新作でももちろんよかったんですが、今回は「松本哲也が新作を書く」ことがメインではなく、ゴツプロ!のメンバーが役者を招いて横の繋がりで公演を打つことがメインだから、元々ある作品で僕も自信を持って演出できるものがよいだろうなと。あと、プロデュース公演を立ち上げたときに、台本がなかなか上がらないことってよくあるじゃないですか(笑)。浜谷さんの初プロデュース、主演、宮崎弁の作品というのは決まっていたので、そうすると2カ月前から台本を渡してあげた方がいいかなって。

一同:(笑)

浜谷康幸=岩田えり 撮影拡大浜谷康幸=岩田えり 撮影

――『山笑う』の脚本を最初に読まれて、どう感じましたか。

浜谷:『山笑う』はお通夜が舞台になっているんですが、お通夜はいろんなドラマがあるじゃないですか。派手なドラマではないけれど、参列した人には感じることがいっぱいあって。『山笑う』では母親のお通夜の席で、東京に出ていって音信不通になっていた妹と兄との確執が多分誰にでもあり得る話として描かれている。脚本の中からいろんな人に対する想いやエネルギーを感じ取って、とても面白いなと思いました。それに、この作品は東京でなく、宮崎だからこそのあたたかさがあるんじゃないかなと思いましたね。

山﨑:全然読み取れていないと思うのですが、会話のやりとりが面白いなと思いました。読んでいるのも面白いけれど、稽古場で実際に物語として立ちあがると、読んだときにわからないことも「ああ、こういうことなんや」と思うんです。

◆公演情報◆
BOND52 VOL.1小松台東BONDゴツプロ!『山笑う』
2022年7月7日(木)〜17日(日) 下北沢小劇場B1
公式ホームページ
[スタッフ]
作・演出:松本哲也(小松台東)
[出演]
山﨑静代(南海キャンディーズ)、野々村のん(青年座)、平岡亮
浜谷康幸(ゴツプロ!)、塚原大助(ゴツプロ!)、渡邊聡(ゴツプロ!)
〈松本哲也プロフィル〉
 宮崎から上京し、日本映画学校・俳優科へ。卒業後、東京での生活に挫折し宮崎に帰郷。しかし故郷でも挫折し、再び東京に戻る。2010年に重い腰を上げてようやく劇団・小松台東を旗揚げした。近年は舞台だけでなく、テレビ脚本なども手がけている。
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公式instagram
〈山﨑静代プロフィル〉
 2003年、山里亮太(山ちゃん)に誘われ、「南海キャンディーズ」を結成。ボケ担当。2006年の映画『フラガール』で本格的に女優デビュー。演技面も評価され、第30回日本アカデミー賞では新人俳優賞を受賞。2008年にはドラマで主演を果たす。
公式ホームページ
〈浜谷康幸プロフィル〉
 ゴツプロ!所属。次世代への橋渡しとして立ち上げた、演劇を創る過程を学ぶプロジェクト「ゴツプロ!演劇部」部長を務める。ゴツプロ!公演以外にもふくふくやや『続・まるは食堂』(作・演出:佃典彦)、『莫逆の犬』(作:田村孝裕、演出:寺十吾)など多数の舞台に出演。ドラマや映画にも出演し、舞台演出を手がけるなど多方面で活躍。
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筆者

大原薫

大原薫(おおはら・かおる) 演劇ライター

演劇ライターとして雑誌やWEB、公演パンフレットなどで執筆する。心を震わせる作品との出会いを多くの方と共有できることが、何よりの喜び。ブロードウェー・ミュージカルに惹かれて毎年ニューヨークを訪れ、現地の熱気を日本に伝えている。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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