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「フジテレビの時代」と『笑っていいとも!』

[6]1980年代テレビにおける熱狂と冷静のあいだ

太田省一 社会学者

『笑ってる場合ですよ!』の“失敗”、そしてタモリの起用

 同じ「祭り」の場は、1980年10月、『ひょうきん族』の約半年前に始まったバラエティ番組『笑ってる場合ですよ!』においても実現しているはずだった。平日昼12時から1時間の生放送だった同番組にも、総合司会のB&Bを始め、漫才ブームの主役たちがレギュラー出演していた。

 ただ、『笑ってる場合ですよ!』が『ひょうきん族』と違っていたのは、観客を入れた公開生放送だったことである。場所は、前回もふれたように新宿アルタ。そこでも、濃密な「祭り」の場が生まれるはずであった。

 しかし、事態は思わぬ方向へ進む。

 漫才ブームは、お笑い芸人のアイドル化を一方でもたらした。若手芸人が本番で登場すると、観覧席の若い女性たちからすかさず大きな声援が飛ぶ。さらに、自分の好きな芸人の一挙手一投足に注目しているそうした観客は、その芸人がちょっとつまずいたようなとき、つまり芸人が笑わせようとしたわけではないときにも、笑うようになった。

 それもある意味祭りであったとしても、番組プロデューサーの横澤彪にとって、それは意図した「祭り」ではなく、むしろ許しがたいことだった。

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筆者

太田省一

太田省一(おおた・しょういち) 社会学者

1960年、富山県生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビ、アイドル、歌謡曲、お笑いなどメディア、ポピュラー文化の諸分野をテーマにしながら、戦後日本社会とメディアの関係に新たな光を当てるべく執筆活動を行っている。著書に『紅白歌合戦と日本人』、『アイドル進化論――南沙織から初音ミク、AKB48まで』(いずれも筑摩書房)、『社会は笑う・増補版――ボケとツッコミの人間関係』、『中居正広という生き方』(いずれも青弓社)、『SMAPと平成ニッポン――不安の時代のエンターテインメント 』(光文社新書)、『ジャニーズの正体――エンターテインメントの戦後史』(双葉社)など。最新刊に『ニッポン男性アイドル史――一九六〇-二〇一〇年代』(近刊、青弓社)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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