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【公演評】宙組『カルト・ワイン』

桜木みなとが笑顔で魅せる!男同士の友情も痛快なスウィンドル・ミュージカル

さかせがわ猫丸 フリーライター


 宙組公演ミュージカル・プレイ『カルト・ワイン』が、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演されました(7月5日~7日の公演は中止)。

 この作品は桜木みなとさんにとって、本来なら2度目の東上主演公演となりますが、新型コロナウイルスの影響で、2020年ドラマシティ公演『壮麗帝』の東京公演が中止になったため、リベンジともなりました。

 この作品は、21世紀初頭のニューヨークで、中米ホンジュラスから不法入国してきた貧しい青年が、いかにして業界を揺るがすワイン詐欺師になり得たのか――瑞々しく軽快に、そしてほろ苦く描くスウィンドル・ミュージカルです。演出は2021年、宙組バウホール公演『夢千鳥』で鮮烈なデビューを果たした栗田優香さん。“笑顔だけで千の感情を表現できる”と称する桜木みなとの魅力を最大限に引き出します。(以後、ネタバレがあります)

多彩な笑顔で惹きつける桜木

『カルト・ワイン』公演から、桜木みなと=久保秀臣 撮影拡大『カルト・ワイン』公演から、桜木みなと=久保秀臣 撮影

 ――21世紀初頭ニューヨーク、ヴィンテージワイン・オークションで華やかに活躍する“ワイン界の貴公子”カミロ・ブランコ(桜木)。だが、そのコレクションはすべて偽造で、彼自身も偽りで固められていた。本名はシエロ・アスール、10年前に中米ホンジュラスから入国した不法滞在者だ。マラス(ギャング)の生活から抜け出すため、幼馴染で料理人を目指すフリオ(瑠風輝)とその妹モニカ(美星帆那)、父ディエゴ(松風輝)一家とメキシコを超え、アメリカへやってきたのだ。

 冒頭はワインコレクター、カミロが栄華を極める現在の場面から始まりました。白い高価なスーツをバシッと着こなした桜木さんは、上品な物腰、ヒスパニック系の野性味が混じるやさしく愛らしい笑顔で、誰もが魅了されてしまう。さらに、胸元をグイっと開けるセクシーなしぐさに「今、なにか見えた?」とドギマギしている間にいきなり逮捕されてしまうという衝撃的な展開です。

 そして物語は過去にさかのぼり、舞台は10年前の中米ホンジュラスへ。なかなか粋な流れで、さらに没入感が高まりました。

 そこに登場した桜木さんは退廃的で、長髪に猫背な姿勢、体の薄さにシャツが泳いで、さきほどの二枚目からの落差が衝撃かもしれません。それでも人懐っこい笑顔はそのままで、同じ人だと安心してしまうのがおもしろい。醸しだす空気で雰囲気をがらりと変える、桜木さんが男役で培ってきた年月を実感する瞬間です。

 冒頭に胸元から見えたのはマラスの証のタトゥーでした。シエロは根っからのワルではなく、殺るか殺られるかの世界に耐え切れなくなったことで、逃げだしたのでした。

 ホンジュラス時代からニューヨークにやってきても、頭の回転の良さを生かして、軽いノリで次から次へと悪事を働きます。しかしそれは友を愛するがゆえ。本当のシエロは優しく、勇敢な男なのでした。

◆公演情報◆
『カルト・ワイン』
2022年6月17日(金)~26日(日)  東京建物 Brillia HALL(終了)
2022年7月2日(土)~7日(木)  梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ(5~7日の公演は中止)
公式ホームページ
[スタッフ]
作・演出:栗田優香

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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