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神野三鈴インタビュー(上)、ニューヨークとロンドンで話題の衝撃作『ダディ』が日本初演

才能あふれるアフリカ系アメリカ人の戯曲をお渡しするチャンス

大原薫 演劇ライター

 『Slave Play』でトニー賞12部門ノミネートという快挙を成し遂げた劇作家ジェレミー・O・ハリスが2016年に発表した『ダディ』。2019年オフ・ブロードウェイ上演時にはアラン・カミングが出演して注目を集め、今年ロンドンでも上演された。人種、セクシュアリティ、家族、宗教、格差社会、モラル、アイデンティティといったテーマをリアルな会話で鋭く描く衝撃作が2022年7~8月日本初演される。

 若いアフリカ系アメリカ人でアーティストのフランクリン(中山優馬)は初老のアートコレクター、アンドレ(大場泰正)と出会う。フランクリンはアンドレの富によって手に入れた贅沢な新生活に飛び込み、アーティストとして注目されるようになる。2人は熱い関係を築くが、ある日フランクリンはアンドレを「ダディ」と呼んでしまう。やがて、2人の前にフランクリンの母ゾラが登場する。息子フランクリンのセクシュアリティを受け入れているゾラだが、アンドレのことは我慢ならない。2人の関係に疑問と苛立ちを覚えるゾラは……。

 フランクリンの母親ゾラを演じる神野三鈴。独特の存在感ある演技でリアリティを放つ神野は第27回読売演劇賞最優秀女優賞を受賞するなど高く評価されている。神野に話を聞いた。

この挑戦する船に乗りたいと思いました

神野三鈴拡大神野三鈴

――神野さんがこの作品の出演依頼を受けたとき、どう思われましたか。

 オファーをいただいて脚本を読んだとき、まず「私がアフリカ系アメリカ人を演じて大丈夫なのかな」と思ったんです。今の時代、肌を黒く塗って演じることはしないだろうけれど、そうしないでアフリカ系アメリカ人を表現するのはハードルが高いのではないかと思いました。でも、その直後に「そう思うこと自体が私の中の壁だ」と思ったんです。

 私はユダヤ人も初代エリザベス女王もギリシャの神様も演じています。それなのに「自分にアフリカ系アメリカ人が演じられるのかしら」と思うこと自体がハードルなんだと思いましたね。今起きているBlack Lives Matter(アフリカ系アメリカ人に対する警察の残虐行為をきっかけとして、構造的な人種差別撤廃に働きかける運動)でも、「差別されているアフリカ系の人たちが可哀想」というレベルで止まっていることが問題じゃないかと思います。こんなにも才能あふれるアフリカ系アメリカ人の戯曲を皆さんにお渡しするチャンスをいただいた。しかも、古典ではなく、今の時代に出てきた新しい作家の作品なので、ぜひ出演したいと思ったんです。

 あとはもう一つ、小川絵梨子さんが演出されるということが大きいです。絵梨子さんとだったら、この挑戦する船にのりたいと思いました。

――脚本をお読みになって、どうお感じになりましたか。

 瑞々しく新鮮でしたね。アフリカ系アメリカ人でない人たちが観念で書いても書けないような感覚にあふれて、アフリカ系アメリカ人の彼らでなければ言えないことがいっぱい書かれていました。そして、今の彼らが私たち日本人と同じように豊かさに侵されて、同じようなものをカッコいいと憧れるようになっているのだと気付けたのも興味深かったです。脚本を読んでジェレミー・O・ハリスさんの素晴らしい才能を感じましたし、極めてオリジナルでパーソナルなことを掘り下げて普遍的なことが書かれていると感じましたね。

――現在は稽古中とのことですが、小川絵梨子さんの演出は?

 私は絵梨子さんの演出が本当に好きですね。なぜなら、非常に感覚的なことをおっしゃっているようで、ちゃんとしたメソッドに裏付けられていますし、演劇でどういうものを舞台の上に立ち上がらせたいかという方向が明確なんです。それが私の目指したい方向と近くて、ここで勉強したいとも思います。

◆公演情報◆
『ダディ』
東京:2022年7月9日(土)~27日(水) 東京グローブ座
大阪:2022年8月5日(金)~7日(日) COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
公式ホームページ
公式Twitter
[スタッフ]
作:ジェレミー・O・ハリス
演出:小川絵梨子
[出演]
中山優馬
大場泰正 原嘉孝 前島亜美 谷口あかり 菜々香 / 長野里美
神野三鈴
〈神野三鈴プロフィル〉
 劇作家テネシー・ウィリアムズが描くガラスのような精神に共鳴し、それを演じたいという衝動で役者になる。舞台『三谷版 桜の園』(三谷幸喜演出)『組曲虐殺』(栗山民也演出)で第47回紀伊国屋演劇賞個人賞、『マクベス』(V・べリャコーヴィッチ演出)『組曲虐殺』(栗山民也演出)で第27回読売演劇大賞最優秀女優賞、『All My Sons』(詩森ろば演出)で第28回読売演劇大賞優秀女優賞を受賞。22年には映画『LOVE LIFE』(深田晃司監督)、『百花』(川村元気監督)の公開も控えている。
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筆者

大原薫

大原薫(おおはら・かおる) 演劇ライター

演劇ライターとして雑誌やWEB、公演パンフレットなどで執筆する。心を震わせる作品との出会いを多くの方と共有できることが、何よりの喜び。ブロードウェー・ミュージカルに惹かれて毎年ニューヨークを訪れ、現地の熱気を日本に伝えている。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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