「人生100年」時代。長い老後を元気に楽しく生きるための秘訣とは
2022年07月07日
「人生100年」時代。長い老後はどう過ごすかいま、高齢者にとって最大の関心事だ。
令和2年の平均寿命は女性が87.74歳、男性が81.64歳。女性も男性も着実に長生きをするようになっている。であれば、年をとっても、できる限り元気に楽しく生き生きと暮らしたいと思うのは人情。そのために、どうすればいいか。精神科医、和田秀樹さん(62)は「嫌なことは我慢せず、好きなことをやりなさい!」と言う。
道理をわきまえたお年寄りではなく、むしろやんちゃに生きろと。はて、どういうことか? 和田さんに聞いた。
和田秀樹(わだ・ひでき)
1960年大阪府出身。高齢者専門の精神科医として30年以上の経験を持つ。東京大学医学部卒。東大病院精神神経科助手、米カール・メニンガー精神医学校国際フェローなどを経て、現在「和田秀樹こころと体のクリニック」院長を務める。メディアでの活動も多い。主な著書に『70歳が老化の分かれ道』『六十代と七十代、心と体の整え方』など。
冒頭で記したように、日本人の平均寿命は、男女とも80歳を超え、女性は90歳に近づいている。だが、年齢を重ねるごとに寝たきりや介助が必要なケースが増え、元気な生活を送れる「健康寿命」は、そこから10歳前後も短くなってしまう。
もっとも、程度の差こそあれ、高齢になれば、ガンや認知症にかかる確率は高くなるし、身体の機能が衰えてゆくことも避けられない。「老化」を受け入れ、失ったものよりも、残ったものを大事にする気持ちが必要だ。そこで、選択肢が生まれる。
例えば、ガンだ。高齢者になれば、たとえ、ガンになったとしても病巣の成長速度は遅く、かかったことを知らずに亡くなる人も少なくない。一方で、手術や抗ガン剤を使う化学療法は、効果だけではなく体のダメージも伴う。つまり、ガンとともに生きるのか、若年や中年の患者と同じような治療法を選択するのか、どうかだ。
和田さんは言う。
「高齢者専門の精神科医として、ガン患者の『その後』も診てきました。たぶんその数は、ガンの専門医よりも多いでしょう。(医師に勧められるまま)手術を受けて、周囲までごっそり切られ、痩せこけてしまったり、少しずつしかご飯が食べられず、元気を失ってしまったお年寄りが少なくないのです。症状や部位にもよりますが、僕自身や身内には(手術を)まず勧めませんね」
健康診断のデータを見て、正常値に戻すことを基本とした治療や投薬のやり方にも、和田さんは疑問を呈する。高齢者が健診を受ければ、いくつもの異常値が出てしまうことが多い。結果、それぞれの「異常」を「正常」へ戻すために、複数かつ膨大な量の薬を毎日飲まされることになり、かえって体の調子を悪くしてしまうことが少なくないという。
「健診のデータのみを信じ、患者の立場になって総合的に診ている医師がいないからですよ。血圧や血糖値を下げる薬を出されて、逆にボーっとしてしまったり、活力を失ってしまう場合もある。こうした“医療の常識”に苦しめられる高齢者は少なくありません。そもそも、健診は強制されて受けるものではないでしょう。高齢者はなおさらです」
でも、 “医療”とは人を救うものではないか。ここまで言っていいのか。そう思って尋ねると、こんな言葉が返ってきた。
「患者は『自分はこうしたい』と、もっと自己主張してもいいと思いますね」
背景にあるのは、自身の体験だ。
和田さんは現在62歳、数年前、血糖値が600を超えた。糖尿病と診断される数値だ。だが、標準的な治療法であるインスリン注射を選択せず、試した薬も効果がない。結局、毎日「歩く」ことで一定の数値まで下げた。
血圧が上がって220になっていた時期もある。心臓の機能に異常が見つかり、降圧剤を飲んでいったんは140前後にまで下げた。ところが、体がだるくて仕方がない。今は利尿剤を飲んで、(通常ならば高血圧と診断される)170前後にコントロールし、調子はいいという。
「データには個人差があるし、特に高齢者の場合、40代、50代とは違う選択肢があってもいい。薬を飲まないことで、体がだるくならない方を選ぶこともそのひとつでしょう」
とはいえ、実際に医師の診断や投薬指示に逆らうことは簡単ではないのではないか。
筆者の体験を書こう。
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