青木るえか(あおき・るえか) エッセイスト
1962年、東京生まれ東京育ち。エッセイスト。女子美術大学卒業。25歳から2年に1回引っ越しをする人生となる。現在は福岡在住。広島で出会ったホルモン天ぷらに耽溺中。とくに血肝のファン。著書に『定年がやってくる――妻の本音と夫の心得』(ちくま新書)、『主婦でスミマセン』(角川文庫)、『猫の品格』(文春新書)、『OSKを見にいけ!』(青弓社)など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
OSK日本歌劇団創立100周年記念公演の第3弾、『レビュー in Kyoto』が京都・南座で7月9日より絶賛上演中である。
第一部は『陰陽師 闇の貴公子☆(←五芒星が正式表示)安倍晴明』。OSKはレビュー劇団であり、松竹公演では日舞も洋舞もレビューをやるのだが、今回はひさびさに芝居だ。それも、『闇の貴公子』だ。
といっても『闇の貴公子』なんて皆さんご存じないと思いますが。
OSK日本歌劇団は、2002年、ちょうど創立80周年の節目に、当時の親会社の近鉄から「支援を打ち切る」という決定がなされていわゆる「解散」ということになった。
その時、OSKのファンは、
「『闇の貴公子』を見てもらえれば、OSKは解散しないですんだのに……!」
と悔し泣きに暮れたのである。言って詮ないことはわかっていたが、ほんとにあの時のOSKファンは、「OSKには『闇の貴公子』があるのに! これさえあればなんとかなるのに!」と信じてたんです。
で、その『闇の貴公子』とは。
ミュージカルである。原作は夢枕獏『陰陽師』。作・演出は北林佐和子。
今でこそ陰陽師モノ、安倍晴明モノはドラマにもマンガにもゲームにも映画にも舞台にもあふれてますが、OSKの『闇の貴公子』は2001年上演だから相当に早かった。早すぎたかもしれない。見た時にはびっくりした。「す、すげえ、こんなカッコイイ和物のミュージカルがあるのか……!」と客席でのけぞった。
少なくとも宝塚歌劇団でこんなミュージカルは見たことがなかった。陰陽師と鬼の戦い。鬼は迫害された渡来民族。男役よりも強くてかっこいい女の鬼。ものすごくOSKの独自性を感じた。そうか、OSKの魅力ってのはこれか! と思ったぐらい『闇の貴公子』はすごかった。
しかしいかんせん当時のOSKはマイナー劇団であってこの作品の凄さはほとんど知られることもなく終わってしまったのであった。この上演の翌年に支援打ち切り発表。ファンの無念を知ってほしい。
その『闇の貴公子』が20年(正確には21年)の時を経て甦った。OSKが解散から存続運動を経て100周年を迎え、『陰陽師 闇の貴公子☆安倍晴明』を上演するなんてことを、当時の自分に教えてやりたい。それも舞台は京都の南座。2001年は近鉄劇場(ここも、今はもうない)と日本青年館だったのに、劇場もグレードアップしてるし。