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【公演評】雪組『心中・恋の大和路』

確かな実力に大人の色香も加わった和希そらが初の東上主演公演で伝統的名作に挑む

さかせがわ猫丸 フリーライター


 雪組公演ミュージカル『心中・恋の大和路』が、7月20日、シアター・ドラマシティで初日を迎えました(28日まで。東京:日本青年館ホール8月3日~9日)。近松門左衛門作「冥途の飛脚」を現代風音楽と演出でアレンジしたこの作品は、宝塚の日本物の中でもひときわ人気が高く、1979年の初演以来、何度も再演を重ねてきました。江戸時代ならではの悲劇、それは飛脚問屋亀屋の若旦那・忠兵衛と遊女・梅川の許されぬ恋……。名曲「この世にただひとつ」に乗せたクライマックスシーンはあまりにも有名です。

 忠兵衛を演じるのは、昨年、宙組から組替えし、新天地雪組でますます輝きを増す和希そらさん。シャープなダンスや深みある歌唱、豊かな演技力を武器に、近年、大人の色香も加わった実力派が、初の東上主演でこの伝統的名作に挑みます。(以後、ネタバレあります)

和希の色っぽい若旦那

 和希さんといえば元気いっぱいな若々しいキャラクターが印象的でしたが、2021年バウホール公演『夢千鳥』では、したたりおちるほどの大人の色香を披露し、もう少年のようとは呼べなくなりました。日本物を得意とする雪組で再び、優男の忠兵衛でそれはますます発揮されることでしょう。

 オープニングは飛脚たちが踊り行き交う中、和希さんが登場。スポットライトに粋な着流し姿が浮かび、さっそく美声を響かせます。

 ――大坂の飛脚問屋・亀屋の忠兵衛(和希)は、養子ながら当主として差配を振るっていた。だが、新町の遊郭・槌屋の梅川(夢白あや)に惚れこんでからは店に顔を出さなくなり、番頭の伊兵衛(真那春人)らも困り果てている。それでも忠兵衛は気にすることもなく、親友の八右衛門(凪七瑠海)とともに、花魁のかもん太夫(妃華ゆきの)に憧れる手代の与平(諏訪さき)を槌屋に連れて行くなど、自由気ままに過ごしていた。

 忠兵衛はどちらかというと、強さや頼もしさとは無縁の色っぽい若旦那。優男風情もあいまって、他の作品の主人公のように“思わず観客が恋してしまう”というタイプではありません。最初はただの遊び人で放蕩息子かと思いきや、もっと情けないところも露呈し始め、どうなることやら。

 しかし、この忠兵衛こそが、物語が進むにつれ不思議な魅力をかもしだしていくのです。恋におぼれるあまり、仕事への理性も、友情にさえも気づかず暴走していくのですが、梅川への優しさはいつも限りなく深く甘やかで、それはそれは切ないほど。そのコントラストが和希さんの繊細な演技でより一層浮かび上がります。憤るかあきれて当然なのに、忠兵衛が優しければ優しいほど、ヒリヒリと胸が痛んでしまう。これはもうすでに心をつかまれてしまったということなのでしょうか⁉

◆公演情報◆
『心中・恋の大和路』
~近松門左衛門「冥途の飛脚」より~
2022年7月20日(水)~28日(木)  梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
2022年8月3日(水)~9日(火)  日本青年館ホール
公式ホームページ
[スタッフ]
脚本:菅沼 潤・演出:谷 正純

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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