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不平等な現実に抗う〈民主主義〉をめぐって

経済・政治・人間……命の軽重を認めないために

古川日出男 小説家

語られない「昨年の今頃は……」

 昨年の今頃は東京オリンピックが開催されていた、という話題を自発的に持ち出す人間が、いまのところ私の周囲にはいない。

 たった1年前の出来事なのだから、これは意外なことだ。と同時に、街頭演説中に元首相が銃撃されて、殺害されるという出来事があって間もないのだから、東京オリンピック(2021年に開催されたのだが「TOKYO2020」の名称のままだったオリンピック)の大騒ぎなど忘れてしまっても当然だ、と言われると、私もどこかで「そうかもしれないな」と納得する。

 そこであえて、どうして昨夏のオリンピックはあれほど騒がれたのだったか? と考えてみる。

 それは2020年夏に開催される予定が、コロナ禍で延期されたためだった。その後に日本国内でも感染爆発が迫り(あれは新型コロナウイルスの第何波だったのだろう?)、無観客開催が決定されたためだった。

 他にもさまざまな要素があったが、どのようなトラブルであっても、その「大もとの原因はパンデミックだった」とまとめて異論が出るとは私には思えない。こうした眼差しをもって、東京オリンピックの延期が決定した2020年3月のことも、安倍晋三元首相が凶弾に倒れた今年、2022年7月のことも、あえて束ねられるような思考をしてみたい。

拡大【2021年7月8日の出来事】東京都に4度目の緊急事態宣言を出すことを決め、記者会見する菅義偉首相(左、当時)と同席した新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長=首相官邸

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筆者

古川日出男

古川日出男(ふるかわ・ひでお) 小説家

1966年生まれ。1998年、長篇小説『13』でデビュー。『アラビアの夜の種族』(2001年)で日本推理作家協会賞と日本SF大賞を受賞。『LOVE』(05年)で三島由紀夫賞、『女たち三百人の裏切りの書』(15年)で野間文芸新人賞、読売文学賞。他に『サウンドトラック』(03年)、『ベルカ、吠えないのか?』(05年)、『聖家族』(08年)、『南無ロックンロール二十一部経』(13年)など。11年、東日本大震災と原発事故を踏まえた『馬たちよ、それでも光は無垢で』を発表、21年には被災地360キロを歩いたルポ『ゼロエフ』を刊行した。『平家物語』現代語全訳(16年)。「群像」で小説『の、すべて』連載中。「新潮」(2022年4月号)に戯曲『あたしのインサイドのすさまじき』を発表した。新刊『曼陀羅華X』(新潮社、3月15日刊行)。音楽、演劇など他分野とのコラボレーションも多い。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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