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伊原六花インタビュー(下)、ミュージカル『夜の女たち』

誰もが知っておくべき時代をミュージカルで届ける本作の意義

橘涼香 演劇ライター


伊原六花インタビュー(上)

台詞から自然と歌にいけるメロディーライン

──伊原さんご自身は『ロミオ&ジュリエット』のジュリエット役をはじめ、ミュージカル作品に携わっていらっしゃいますが、今回のカンパニーは初ミュージカルという方が大変多いお顔触れです。共演の皆様への期待はどうですか?

 皆さんと一緒にお芝居ができることはすごく楽しみです。今回の楽曲がここからミュージカルナンバーです、という形ではなくて、本当に台詞から自然に歌に行けるようなメロディーラインになっているので、「ザ・ミュージカル」というよりは芝居の中に自然に音楽が出てくる舞台になるんじゃないかな?と思っていて。それをこの豪華な、大先輩の方々と創っていくことができるので、とにかく食らいついていく。皆さんにお力を貸していただきながら、作品に飛び込んでいけたらなと思っています。

伊原六花=中村嘉昭 撮影拡大伊原六花=中村嘉昭 撮影

──これまでのミュージカルとはまた異なる魅力を感じますか?

 私が今まで観てきたミュージカルは非現実的というか、お話の中で夢の世界に飛翔していけるものが多かったんです。作品を観てテーマについて考えるというよりは、ひととき日常から離れて、非日常に入っていける。そこがミュージカルの素敵なところだと思っていたのですが、今回このミュージカル『夜の女たち』に出会って、作品的にはすごく心にグッとくる、考えさせられるものが多くある中でも、それにプラスして楽曲が入り、歌や踊りが入ってくることによって、私たちが知っておかなければならない事実を描きつつ、どこかで別の次元にもいける。ですからこの作品を通じて私自身が、きっとこれまで知らなかった新しいミュージカルの魅力を感じられるんだろうなと思っています。やっぱり音楽の力ってすごいなとミュージカルを見るたびに思うので、まだ歌稽古がはじまった段階なのですが(※取材は7月上旬)楽曲を聞いただけでワクワクできているので、その音楽の力と共に作品の魅力をお伝えできたらと思っています。

──元々日本語の歌詞に乗せて楽曲が書かれているのは、オリジナルミュージカルの利点かなと思いますが、実際に歌われていかがですか?

 やっぱり翻訳していただいている歌詞ですと、音符と言葉の数によって、どうしても意訳しないと入らない部分があったり、譜割りが難しくなっていたりすることもあると思うんです。でも今回は楽曲として考えるとリズムの難しい曲もたくさんあるのですが、音と言葉がピタっとハマっているので、心情としてはとても歌いやすいです。

伊原六花=中村嘉昭 撮影拡大伊原六花=中村嘉昭 撮影

──特に今回の作品は関西弁の歌詞ですから、そこはフィットされるのでは?

 例えば「あんた、今、何してんの?」という関西弁のイントネーション、抑揚がそのままメロディーになっている感じなんです。普通に喋ったらそのまま音になるんだって言う感覚がとても強くて、すごく面白いと思いました。個人的にいまの自分だとこの高さは地声では出ない、裏声になってしまうという音域があるのですが、しゃべる言葉の抑揚をそのまま音にしてくださっているので、ちょっと強く言いたい時、怒鳴るような感情の時に高い音があっても、その感情のままに強く言ったらいつも出ない音が出るんです! ミュージカルナンバーだから歌おうと思って楽譜を見た時には、絶対に地声で出ないなと思った音がちゃんと出るので「この楽曲すごい! 萩野さんすごすぎる」と思いました。これから歌稽古もどんどん進んでいくので、まだ音取りしかできていない曲もあるのですが、ここから会話のイントネーションを生かし、楽曲を生かせるように歌えたらいいなと思って、すごく楽しみです。

◆公演情報◆
KAAT神奈川芸術劇場プロデュース
ミュージカル『夜の女たち』
2022年9月3日(土)~19日(月・祝)  KAAT 神奈川芸術劇場 〈 ホール 〉
2022年9月24日(土)~25日(日) 北九州芸術劇場 中劇場
2022年9月30日(金)~10月2日(日) 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
2022年10月6日(木) 山口市民会館 大ホール
2022年10月10日(月・祝)まつもと市民芸術館 主ホール
2022年10月14日(金)~16日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
公式ホームページ
[スタッフ]
原作:久板栄二郎
映画脚本:依田義賢
上演台本・演出:長塚圭史
音楽:荻野清子
振付:康本雅子
[出演]
江口のりこ 前田敦子/伊原六花 前田旺志郎 北村岳子 福田転球/大東駿介 北村有起哉 ほか
〈伊原六花プロフィル〉
 大阪府出身。幼少期よりバレエやミュージカルを習い、2017 年に登美丘高校ダンス部キャプテンとして「日本高校ダンス部選手権」で披露した“バブリーダンス”が注目を集め、高校卒業後に芸能活動をスタート。『エア☆ガール』、『なつぞら』、『どんぶり委員長』、『明治東亰恋伽』など、数々の映画やドラマ、そして、ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』、『友達』、音楽劇『海王星』など舞台にも出演している。Disney+「シコふんじゃった!」(W主演)が今秋独占配信予定。
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筆者

橘涼香

橘涼香(たちばな・すずか) 演劇ライター

埼玉県生まれ。音楽大学ピアノ専攻出身でピアノ講師を務めながら、幼い頃からどっぷりハマっていた演劇愛を書き綴ったレビュー投稿が採用されたのをきっかけに演劇ライターに。途中今はなきパレット文庫の新人賞に引っかかり、小説書きに方向転換するも鬱病を発症して頓挫。長いブランクを経て社会復帰できたのは一重に演劇が、ライブの素晴らしさが力をくれた故。今はそんなライブ全般の楽しさ、素晴らしさを一人でも多くの方にお伝えしたい!との想いで公演レビュー、キャストインタビュー等を執筆している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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