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【公演評】月組『グレート・ギャツビー』

背中で語る美学-月城かなとがスーツスタイルを極めフィッツジェラルドの名作に挑む

さかせがわ猫丸 フリーライター

 月組公演、三井住友VISAカード ミュージカル『グレート・ギャツビー』が、7月22日、宝塚大劇場で初日を迎えました。この作品は、アメリカ文学の代表的作家F・スコット・フィッツジェラルドの代表作をもとに1991年、杜けあきさん主演で世界初のミュージカル化。2008年には瀬奈じゅんさん主演で再演し、いずれも大好評を博しました。3度目の上演となる今回は、月城かなとさん率いる月組が、大劇場一本立て公演として挑みます。

 ジャズエイジとよばれた狂乱の1920年代。見果てぬ夢を追いかけたジェイ・ギャツビーの生きざまを描く本作品は、背中で語る男の美学が香ります。男役として充実期を迎えつつある月城さんの魅力が今、まさに輝く作品となりました。

 新型コロナウイルスの影響で公演が中断していますが、どれほど厳しい状況が続いても、月組生たちの舞台にかける情熱は消えません。(以後、ネタバレあります)

けがれなき心浮かぶ月城

 主人公のギャツビーは大変、個性的な男性です。自分の人生をなげうってまで1人の女性を思い続ける深い愛情は、感嘆か切なさか。見る人によって、これほど感想が変わる男性はいないかもしれません。演出の小池先生も『グレート・ギャツビー』には「愚かな生き方をした偉大な男への賛歌」との意味が込められているのではないかと語られています。

 しかしそこへ、夢とロマンが織りなされ、背中で語る“男役の美学”が生きた『宝塚のギャツビー』が作り出されたのでした。

――1920年代アメリカ、ニューヨーク郊外にあるウエスト・エッドに建つ大豪邸では、誰でも自由に参加できるパーティーが毎夜開催されていた。だが熱狂する客は誰も、邸の主であるジェイ・ギャツビー(月城)の素性を知らない。隣に越してきたニック・キャラウェイ(風間柚乃)も主がどんな人物か気になり、翌朝、突堤にたたずむギャツビーを見つけると、たまらず声をかけた。ギャツビーは対岸のイースト・エッグに“永遠の恋人”が住んでいるのだと言う。偶然にもイースト・エッグには、ニックの又いとこのデイジー・ブキャナン(海乃美月)とその夫で大学の同窓生トム・ブキャナン(鳳月杏)が住んでいた。その話を聞いたギャツビーは顔色を変える。なぜならデイジーこそ、ギャツビーが胸に秘め続けた恋人だったのだ。

 宝塚のギャツビーといえば、白いスーツの似合う上流階級のハンサムな青年です。そんなギャツビーのイメージにピタリとハマる月城さんは、ポスターの真っ白なスーツはもちろん、ロングコートにハット、タキシード、ピンクのスーツさえも着こなし、成熟されたルックスと底なしのイケメンに、それだけで物語が成立してしまいそう。

 資産家らしいあふれる裕福感と裏街道を歩いてきた威圧感。その裏にデイジーだけをひたすら思うピュアさ、悪の道に染まっても麻薬にだけは手を出さないストイックさ……月城さんが演じるギャツビーは、成りあがるまでの黒い影が見え隠れするほどに、その白くけがれのない部分が浮かび上がり、切なさに拍車をかけます。デイジーにふさわしい人間になるためのブレなさは、そのまま男の美学にも通じるかのよう。

 ギャツビーに対して湧き上がる感情は、まさに見る人にとって千差万別。それでも月城さんの『朝日の昇る前に』の熱唱や、背中で語る姿の美しさには、誰もがほれぼれしてしまうのは間違いないでしょう。

◆公演情報◆
『グレート・ギャツビー』
-F・スコット・フィッツジェラルド作“The Great Gatsby”より-
2022年7月16日(土)~8月22日(月) 宝塚大劇場
2022年9月10日(土)~10月9日(日) 東京宝塚劇場
公式ホームページ
[スタッフ]
脚本・演出:小池修一郎

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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