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ミュージカル『ピピン』主演、森崎ウィンインタビュー(上)

今までにない、総合エンターテインメントの真骨頂

米満ゆうこ フリーライター


 ミュージカルとサーカスが絶妙のバランスで融合したブロードウェイミュージカル『ピピン』が再演される。『ピピン』は1972年、『シカゴ』『キャバレー』で知られる才人、ボブ・フォッシーの演出・振付によりブロードウェイで初演。2013年には、フォッシーのダンススタイルを生かしたまま、シルク・ドゥ・ソレイユ出身のアーティストが手掛けた息をのむようなサーカスやマジックが加わってブロードウェイでリバイバルされ、トニー賞で4部門を獲得した。2019年にはその日本語版が上演され話題を呼んだ。

 今回の再演で主役のピピンを演じるのは、『ウエスト・サイド・ストーリー』Season2、『ジェイミー』とミュージカル界で主演作が続く森崎ウィンだ。森崎が作品にかける思いを話してくれた。

自分でチケットを買って観に行った作品

森崎ウィン=草田康博 撮影
拡大森崎ウィン=草田康博 撮影

――まず、出演の相談を受けた時はどう思いましたか。

 純粋にビックリしました。2019年の初演は城田優くんがピピンを演じていて、2代目をやるというお話も全くない中、自分でチケットを買って観に行った作品なんです。本当に最高のミュージカル、最高のエンターテインメントに生で触れたとその感動をずっと覚えていました。出演すると決まって、正直ビックリしたのと同時にすごくうれしかったですね。

 これから稽古に入りますが(取材は6月中旬)、だんだん、プレッシャーがのしかかってきました。優君がピピンを演じていたからこそ、「うわっ、すごいパフォーマンスだな」と胸に届いたというのもありますし、同業者として負けたくない思いもあります。

――森崎さんから見た『ピピン』の素晴らしさは?

 ポイント、ポイントではなく、会場に入って、客電が落ちてからの世界観が一言で言い表せないぐらいすごいんです。「これはミュージカルというよりエンターテインメントショーなんです」というようなことを、ストーリーテラーでリーディングプレイヤー役のCrystal Kay(クリスタル・ケイ)さんがお客さんに話しかける。「えっ!?」と思っているうちに、ドンドンと引き込まれていくんですよね。色んなマジックやサーカスが同時進行する中で、キャストが歌って踊る。すごいな!と思っている間にストーリーが展開していくんです。

 一国の王子、ピピンが生きる目的を求め、自分探しをする物語なんですが、ピピンが普通の幸せを求めて田舎に行くシーンなど自分と重ね合わせられる瞬間もありました。パフォーマンスだけではなく、楽曲にものめり込んで「ヤバい! 一緒に歌いたい、踊りたい」と思わせてくれる舞台なんです。

 僕はミュージカルを数多く観てきた人間ではないんですが、その中でもミュージカルという概念を大幅に超えた作品。興奮するし、今までに味わったことのない感覚でした。総合エンターテインメントの真骨頂だと思うんですよね。なかなかうまく表現できないんですが、これが今の僕が頑張って言葉にした感想です(笑)。

森崎ウィン=草田康博 撮影拡大森崎ウィン=草田康博 撮影

――本当の幸せや自分探しをすることが物語のテーマですが、森崎さんはいかがですか。

 常に自分を探しています。僕もまだ31 歳、いやもう31歳です。色んな作品を演じるたびに、自分の中で何かが変わってくることがありますし、新たな物語に触れることで、概念や信念、知識も変わってくる。今いるところとは全然違う場所にいるし、これからの僕はどう変わっていくんだろう、こうありたいと思っていたのに、全然、違うものが見えてきたり、ここを目指してやってきたのに、次はあそこだったりとか、そんな感覚とともに自分を探している状態ですね。

――物語全体としては、どう感じていますか。

 自分探しだけではなく、戦争など色んなものが背景にちりばめられています。そんなところも含めた物語の楽しみ方があると思います。こういう時代だから、戦争はダメです、戦争を題材にしていますという作品ではないんですが、僕が観客として観ている時は、世界で起きている戦争とリンクして考えさせられることが多かった。そこも含めて、お客さんには見ていただきたいなと思いますね。

――ラストもピリピリときいて衝撃的でした。

 ラストはものすごく印象に残っていますね。舞台がバカッと開けて、あることが見える瞬間がすごかったです。それって勇気がいると思うんですよね。そこをさらけ出して、ピピンの世界観の裏側やリアルな舞台裏を見せられたように感じたんです。人は表だけではないですし、物事もそう。裏という隠れた部分があります。それをさらけ出すのは勇気がいることだから、自分探しというのは、もしかしたら自分が見たくない自分の裏、見せたくないものも含むのかなと色々考えさせられました。裏にもあえて触れていかないと、自分探しの旅ができないのかもしれません。

森崎ウィン=草田康博 撮影拡大森崎ウィン=草田康博 撮影

――幕が閉じた後もずっと余韻が残りました。

 そうですね。いろんな捉え方ができますし、結果的にこうなりました、チャンチャンという分かりやすい物語もありなんですけど、皆さん、どう思いますか?と問われている。最初からリーディングプレイヤーがお客さんに問いかけ、最後も「?」で終わり、舞台が終わっても、まだお客さんの頭の中は整理がつかず、すごかったねといいながら、どういうことなんだろうと考えるはず。それも『ピピン』の魔法の一つなのかなと思います。その余白を楽しんでいただけたらと思いますね。

――森崎さんも今でもどういうことなんだろう?と考えていますか。

 そうですね。正直、分かんないです。演じる時にも分かんなくてもいいとも思っていて。稽古に入って、演出を受けた時に、どうなるのかまだ分からないんですが、変に分かったふりをしたくないですね。ピピンがどうなっていくんだろう?という気持ちのまま終わるのもありなんじゃないかと。ピピンはこの先もずっと自分探しの旅を続けていくんじゃないか。自分探しの旅は終わらないんじゃないかと僕自身は生きていて思いますね。答えが出ちゃったら、そこで終わりですし、こうなんだと一つ見つけたら、違うものを探したくなる。それがある種、人生なんじゃないかという、問いかけでもあるのかなと感じますね。

◆公演情報◆
ミュージカル『ピピン』
東京:2022年8月30日(火)〜9月19日(月・祝)  東急シアターオーブ
大阪:2022年9月23日(金・祝)〜9月27日(火)  オリックス劇場
公式ホームページ
[スタッフ]
脚本:ロジャー・O・ハーソン
作詞・作曲:スティーヴン・シュワルツ
演出:ダイアン・パウルス
振付:チェット・ウォーカー (in the style of Bob Fosse)
サーカス・クリエーション:ジプシー・シュナイダー(Les 7 doigts de la main)
[出演]
森崎ウィン、Crystal Kay(クリスタル ケイ)、今井清隆、霧矢大夢、愛加あゆ、岡田亮輔、中尾ミエ(Wキャスト)/前田美波里(Wキャスト)、高畑遼大(Wキャスト)/生出真太郎(Wキャスト)ほか
〈スペシャルゲスト〉
ローマン・ハイルディン、ジョエル・ハーツフェルド、オライオン・グリフィス、モハメド・ブエスタ、エイミー・ナイチンゲール
※やむを得ない事情により、出演者が変更になる可能性があります。
〈森崎ウィンプロフィル〉
 2008年テレビドラマで俳優デビューし、ドラマや映画、舞台などで幅広く活躍。2020年7月1日MORISAKI WINとして、配信シングル『パレード – PARADE』でメジャーデビューを果たす。最近の出演作品は、ミュージカル『ジェイミー』、米倉涼子×城田優 エンタテインメントショー『SHOWTIME』、ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』Season2、映画『嘘喰い』、『バイオレンスアクション』、『HiGH&LOW THE WORST X』など。
公式ホームページ
公式twitter
公式instagram

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筆者

米満ゆうこ

米満ゆうこ(よねみつ・ゆうこ) フリーライター

 ブロードウェイでミュージカルを見たのをきっかけに演劇に開眼。国内外の舞台を中心に、音楽、映画などの記事を執筆している。ブロードウェイの観劇歴は25年以上にわたり、〝心の師〟であるアメリカの劇作家トニー・クシュナーや、演出家マイケル・メイヤー、スーザン・ストローマンらを追っかけて現地でも取材をしている。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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