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なぜ死者のことを「ホトケさん」と呼ぶのか

[19]「ホトケ(仏)」という言葉に集約された日本人の信仰

薄井秀夫 (株)寺院デザイン代表取締役

ホトケという死者

 「八丁堀の旦那、ホトケの身元が割れましたぜ」

 テレビドラマの時代劇などで、死者のことを「ホトケ」と呼ぶ場面を見ることがある。

 また「うちのかみさんが……」で有名な、アメリカのテレビドラマ『刑事コロンボ』でも、死者のことを「ホトケさん」と語る場面がたびたび出てくる。もちろん吹き替え音声で、翻訳家による英語からの翻訳である。ピーター・フォークが演じるコロンボ刑事が、毎回のように死者のことを「ホトケさん」と呼ぶのだが、不思議なくらい違和感がない。

 家庭でも、亡くなった人のことを「ホトケさん」と呼ぶのは一般的である。「お盆にはホトケさんが帰ってくる」「仏壇のホトケさんに、お供えをしなきゃ」といった具合だ。

 しかしご存じのとおり、ホトケとは仏様、釈迦牟尼如来や阿弥陀如来といった信仰対象のことである。

Takayuki Ohama拡大Takayuki Ohama/Shutterstock.com

 ところが、日本では、死者のこともホトケという。つまり日本では、人は死んだらホトケになるのである。

 もちろん、人が死んだら仏(如来)になるという考え方は、仏教にはない。仏教学的に言えば、明らかに間違いである。

 しかし、日本人は何百年にもわたって、死者をホトケと呼んできた。現代人も、違和感なく死者のことをホトケと呼んでいる。この事実を無視することはできない。

 なぜ日本人は、死者のことをホトケと呼ぶのだろうか?


筆者

薄井秀夫

薄井秀夫(うすい・ひでお) (株)寺院デザイン代表取締役

1966年生まれ。東北大学文学部卒業(宗教学専攻)。中外日報社、鎌倉新書を経て、2007年、寺の運営コンサルティング会社「寺院デザイン」を設立。著書に『葬祭業界で働く』(共著、ぺりかん社)、 『10年後のお寺をデザインする――寺院仏教のススメ』(鎌倉新書)、『人の集まるお寺のつくり方――檀家の帰属意識をどう高めるか、新しい人々をどう惹きつけるか』(鎌倉新書)など。noteにてマガジン「葬式仏教の研究」を連載中。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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