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ミュージカル『モダン・ミリー』に主演、朝夏まなと取材会レポート

タップダンスも見せ場の大ヒット作に、2年越しの想いを込めて挑む

小野寺亜紀 演劇ライター、インタビュアー


 2020年4月の開幕直前に新型コロナウイルス感染拡大のため「緊急事態宣言」が発出され、全公演中止となったミュージカル『モダン・ミリー』が、約2年越しに東京と大阪で上演される(9月7日~26日/シアタークリエ、10月1日~2日/新歌舞伎座)。本作はジュリー・アンドリュース主演の映画「モダン・ミリー」(1967年公開)を原作に、2002年にブロードウェイで舞台化され、トニー賞の作品賞や主演女優賞に輝いた作品。タップダンスをはじめ歌や踊りが満載の明るくハッピーなミュージカルだ。

 1920年代のニューヨーク、モダンガールに憧れ田舎町から出てくる主人公のミリー・ディルモントを演じる朝夏まなとが、大阪で開催された取材会に出席し、作品の見どころや、宝塚歌劇団宙組でトップコンビを組んだ実咲凜音ほか共演者について、また女優として活動する中での想いなどを語った。

心に従う、自分の声を聞くというテーマもあります

朝夏まなと=草田康博 撮影拡大朝夏まなと=草田康博 撮影

――2020年4月に公演中止が決まった時のお気持ちは?

 2年前は劇場に入ってのオケ合わせの直前に中止が決まりました。楽屋に入れていた荷物を取りに行って解散という感じになってしまったのですが、ちょうどシアタークリエに組まれたセットが片づけられていくのを、客席からみんなで見ました。仕方がないと思いつつ、やるせない悲しい気持ち、無念さがありましたね。でも演出の小林(香)さんが、「これは中止ではなく大幅な延期です」という言葉を残してくれたので、それをみんなで信じ、再集合できたらいいねと別れました。

――このたび上演が決まっていかがですか。

 本当に嬉しいです。キャストがほとんど変わらないというのが一番嬉しかったですね。中止となる前に、「楽しみにしています」という言葉をいっぱいお客さまから頂いていたので、「今度は届けられる!」と。

――前回のお稽古から2年以上が経ち、作品に対する思いなどに変化があれば教えてください。

 この2年間いろいろな役に挑戦して、2年前には見えなかったもの、「なんでこういうことを言うんだろう」と思っていた、ミリーの言葉の裏の意味にも想像が膨らみ、前回は役をつかみ切れてなかったのかなとも思います。自分自身成長している部分もあり、2022年版ではその成長を踏まえて役作りをしていきたいです。

――ミリー役について「つかみ切れてなかった部分」というのは?

 ミリーはタイプライターとして手に職をつけているんですけど、「ロマンスより理性」という、玉の輿に乗りたいという想いがあって。やっぱり田舎育ちで憧れもあり、玉の輿に乗って私が道を切り開く!みたいなところがあると思うのですが、自分としてはあまり腑に落ちてなかった。それが、ネタバレになるのでお伝えするのが難しいのですが、最後に彼女はどうして“そっち”を選ぶんだろう、もっと自分自身納得できる理由が欲しいなと思っていたんです。

 でも今は、自分の理想と本心は必ずしも一致しないということ、ミリーが自分の心と向き合った結果、最後そうなるんだ、ということが深く自分の中で腑に落ちるようになりました。この作品は、心に従うこと、自分の声を聞くというテーマもあるんです。

ミリーの頑固なところは似ているのかも

朝夏まなと=草田康博 撮影拡大朝夏まなと=草田康博 撮影

――役について伺っていると、最初ミリーと朝夏さんご自身とは距離があったのかなと思うのですが、そこをどうやって埋めていかれたのでしょうか。また逆に共感できるところはありますか。

 ミリーちゃんは中身が結構女の子なんですよ(笑)。私は結構サバサバしているほうなので、最初すごい違和感があって、なんだかくすぐったいというか、ちょっとかゆいみたいな感じでした。でも再上演が決まってあらためて本を読むと、「すごくかわいいな」「好きかもしれない!」と思えたんです。とてもまっすぐで、自分で決めたことは信じて疑わないので、そこがある意味天然っぽくも見える。ちょっと抜けているおちゃめな感じは……私と似てるんですかね!?(笑) でもこうと決めたらこう!というところ、頑固なところは似ているのかもしれないです。

――カンパニーの雰囲気はどんな感じですか。

 同年代が多くて和気あいあい、作品自体もハッピーなコメディー・ミュージカルなのでとても明るいお稽古場です。演出の小林さんもおもしろい方で、盛り上がっている私たちを、一路(真輝)さんと保坂(知寿)さんが微笑ましくご覧になりながら、お2人が一番おもしろいという……(笑)。役自体もおもしろいのですが、お2人の対決シーンが、カラーの違う女優さんが役を通して笑いを競うみたいなことになっていて。演出の小林さんは結構自由にやらせてくださる方で、大先輩のお2人がとてもおもしろくやってくださるので、刺激になるし、見ていると笑ってしまって楽しいです。

――オフのお人柄というより、演技がおもしろいという感じでしょうか?

 両方です!  一路さんも保坂さんもちょっと天然な部分をお持ちで。お2人とも、いつも優しい言葉をかけて見守ってくださるので大好きです。

相手役だった実咲凜音との共演、「なんかこの感覚懐かしいよね」

朝夏まなと=草田康博 撮影拡大朝夏まなと=草田康博 撮影

――作品の見どころを教えてください。

 見どころはこの(ポスターのキャラクターの)変な人たちです!  みんな1人で存在していてもおもしろいのに、それぞれが絡み合い、最後にいろんな関係性が種明かしされていくんですよ。一度観てラストが分かっても、もう一度そのラストを知ったうえで観ても、何回観てもおもしろいと思います。コメディー要素、笑いどころが多く、東京と大阪では笑いの“間”が違うので、その時のお客さんの空気を読んで臨みたいです。

 後、歌と踊りも見どころです。今回タップダンスが多いので、古き良きブロードウェイミュージカルというものを楽しんでいただけるはず。タップは踊るほうもワクワクして元気が出るので、そのあたりも楽しみにしていただきたいです。

――朝夏さんはタップダンスを宙組トップ時代に『TOP HAT』でも踊られましたが、その後も鍛錬を続けていたのでしょうか。

 ずっと続けていたいところですがなかなか難しく、今回はこの稽古に入るひと月半ぐらい前から、思い出しながら練習していました。

――宙組トップ時代の相手役さんだった実咲凜音さんと、女性役同士で共演するのはいかがですか。

 宝塚時代に『風と共に去りぬ』で私がスカーレット役、彼女がメラニー役を演じた時のことを思い出しました。稽古場で「なんかこの感覚懐かしいよね」という話になり、「なんだっけ……、あ!“風共”だ」と(笑)。2年前もそんなに違和感はなかったけれど、この2年の間に一緒に宝塚の舞台を観に行くなど、会う回数も多かったので、より普段の私たちに近い関係が、役を通して見えるんじゃないかな。それに今回は、実咲さんの役がお嬢様で、私の方が(田舎から出てきた女の子で)振り回される、という、宝塚時代には見られなかった関係性がおもしろいと思います。

表現することが本当に好き

朝夏まなと=草田康博 撮影拡大朝夏まなと=草田康博 撮影

――宝塚を卒業されて約5年、ミュージカル出演が絶えずお忙しくされていますが、振り返っていかがですか。

 16年ほど宝塚で男性役をやってきたので、最初は手探りで、女性の役をどうやって演じていけばいいのかと、毎公演毎公演壁にぶちあたりながら、いろんなタイプのお役をさせていただきました。そしてやっぱり私は表現することが本当に好きだなと思います。悪女から前向きな女の子まで、いろんなタイプの役をさせていただき、ミュージカル以外にも歌のお仕事やオーディオドラマなどを経験し、これからも表現するということを究めていきたいなと思います。

――カンパニーが毎公演変わりますし、やはり宝塚時代とは違いますか?

 そうですね、宝塚は同じ組で家族のように続いていきますから。でも不思議なんですけど、毎回カンパニーは違っても、一つの作品をいいものにしようとする気持ちは変わらないので、宝塚時代とあまり違和感はないんですよ。カンパニーで盛り上がって仲良くなり、公演を経るごとにお友達が増えていく感じなので、大きな家族のようにも勝手に思っていて。表現することを愛している人たちは、みんな同じなんだということを感じます。今、公演が止まってしまったり、お客さまが劇場に入っても幕を開けられないとか、胸が痛いニュースが多いですよね。やっぱり舞台というジャンルは影響が大きいですし、何とかならないかなと思っています。

――朝夏さんはナチュラルに女性役をされている印象ですが、先ほど「毎公演、壁にぶちあたる」とおっしゃったのは、どういうところでですか?

 発声ですかね。キーが全然違ってくるので、もちろん歌い方でフォローできる部分もありますが、やっぱり(喉は)筋肉なのですぐには……。筋トレと一緒で、だんだん出る音域が広くなる。作品の楽曲は決まっているので、昔はそれを歌いこなすのに、アップアップしていた部分がありましたが、今は昔よりはやりやすくなりました。最近、喉のケアで気を付けているのは、必ずリセットすること。発声練習、ウォーミングアップ、お稽古と終えた後に、教えていただいたクールダウンの発声を必ずやっています。

――『モダン・ミリー』はキーの高い楽曲などありますが、やはり難しい面も?

 とっても難しいです。プラス踊りが入ってくるので。サットン・フォスターさん(ブロードウェイ版のミリー役)がすごすぎて!  サットン・フォスターさんに合わせて作られている楽曲なので大変です。ただ、1曲の中でメリーの気持ちが変わっていったりもするので、芝居の部分も埋めながら歌を届けたいという意識でやっています。

やっぱり愛が全てじゃないでしょうか!

朝夏まなと=草田康博 撮影拡大朝夏まなと=草田康博 撮影

――ミュージカルの舞台以外に映像などほかのジャンルにも、もっと挑戦したいという思いはありますか。

 お話があればぜひやりたいです。今年ストレートプレイ(『こどもの一生』)にも出演し、やはり芝居だけというのもおもしろかったです。共演者もガラッと変わるのですごく勉強になりました。こうやってお芝居を作っていくんだというのを学べて、まだまだ知らない世界がいっぱいあるんだなと思いました。

――作品のお話に戻りますが、ミリーは玉の輿に乗りたいと思っているということで、結婚相手に財力を求めるようですが、朝夏さんご自身は?

 いや~どうですかね、女性(記者)のみなさんも、ないよりはあるに越したことはないですよね!?  この作品はそう思い込んでいる子が、どう変わっていくかというところが肝になっています。私自身は、財力か愛かでいうと、やっぱり愛が全てじゃないでしょうか(笑)。愛100パーセントにしておきます!

◆公演情報◆
ミュージカル『モダン・ミリー』
東京:2022年9月7日(水)~26日(月) 日比谷シアタークリエ
大阪: 2022年10月1日(土)~2日(日) 新歌舞伎座
公式サイト
[スタッフ]
脚本:リチャード・モリスディック・スキャンラン
新音楽:ジニーン・テソーリ
新歌詞:ディック・スキャンラン
原作・ユニバーサル・ピクチャーズ同名映画脚本:リチャード・モリス
演出・翻訳:小林 香
訳詞:竜真知子
[出演]
朝夏まなと、中河内雅貴、実咲凜音、廣瀬友祐、保坂知寿、一路真輝、ほか

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筆者

小野寺亜紀

小野寺亜紀(おのでら・あき) 演劇ライター、インタビュアー

大阪府出身。幼い頃から舞台をはじめ、さまざまなエンターテインメントにエネルギーをもらい、その本質や携わる人々の想いを「伝える」仕事を志す。関西大学文学部卒業後、編集記者を経て独立。長年、新聞や雑誌、Webサイト、公式媒体などで、インタビューや公演レポート等を執筆している。特に宝塚歌劇関係の取材は多い。 小野寺亜紀オフィシャルサイト(https://aki-octogreen.themedia.jp/)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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