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つかこうへいの『熱海』、大成功のソウル公演と東京での再会

韓国で再び舞台演出を⑧完

長谷川康夫 演出家・脚本家

千穐楽、劇場には長蛇の列が 

 翌日は昼前に扶余を発った。千穐楽の公演までには、劇場に戻らねばならなかった。

 再び高速バスでソウルに到着し、ターミナルから「文芸会館」に向かった僕らは、目の前の光景に身体が固まる。開演までまだ時間はたっぷりあるというのに、劇場の周りを長蛇の列が取り巻いているのだ。

 それは、これまでずっと芝居の千穐楽で僕らが見てきたものと、変わらぬ光景と言ってよかった。つかの芝居が持つ圧倒的な力を、今さらながら目の当たりにし、僕はどこか誇らしい気がして、劇場に入った。

 その日、立ち見や追加席の人間で埋め尽くされた客席の反応もまた、かつての紀伊國屋ホールでの千穐楽を思い起こさせるものだった。複数回観た客がかなりいるらしいことも同じだった。

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筆者

長谷川康夫

長谷川康夫(はせがわ・やすお) 演出家・脚本家

1953年生まれ。早稲田大学在学中、劇団「暫」でつかこうへいと出会い、『いつも心に太陽を』『広島に原爆を落とす日』などのつか作品に出演する。「劇団つかこうへい事務所」解散後は、劇作家、演出家として活動。92年以降は仕事の中心を映画に移し、『亡国のイージス』(2005年)で日本アカデミー賞優秀脚本賞。近作に『起終点駅 ターミナル』(15年、脚本)、『あの頃、君を追いかけた』(18年、監督)、『空母いぶき』(19年、脚本)などがある。つかの評伝『つかこうへい正伝1968-1982』(15年、新潮社)で講談社ノンフィクション賞、新田次郎文学賞、AICT演劇評論賞を受賞した。20年6月に文庫化。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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