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ミュージカル『COLOR』で共演!成河×濱田めぐみインタビュー(上)

日本から生まれるミュージカルのスタイルそのものを作っている

橘涼香 演劇ライター


 草木染作家・坪倉優介氏が自身の体験を綴ったノンフィクション「記憶喪失になったぼくが見た世界」をベースに作られるオリジナルミュージカルの新作『COLOR』が、9月5日~25日、東京初台の新国立劇場 小劇場で上演される。

 この作品は、スクーターとトラックの衝突事故によって、意識不明の重体となった青年が、集中治療室に入って10日後、奇跡的に目覚めるものの、両親や友人、自分自身のことだけでなく、食べる、眠るなどの感覚の、何もかもすべてを忘れていた、という坪倉氏自身が体験した実話をもとに、目の前に出された白いご飯が「きらきら光る、つぶつぶ」としか思えなかった“ぼく”が、如何にして目の前に立つ「オカアサン」という女性のことを、心から本当の「お母さん」と呼べるようになったのかをはじめ、新しく歩みはじめる姿を通して、人生や、幸福の在り方が描かれていく。

 語るような歌で構成される作品音楽は、言葉と音が密接に繋がり合う楽曲を生み出す、植村花菜が初のミュージカル楽曲を担当。『アナと雪の女王』の訳詞で話題を呼び、ミュージカル『生きる』や劇団四季の新作ミュージカル『バケモノの子』などを手掛ける高橋知伽江が脚本と歌詞(植村花菜と共同歌詞)。第25回読売演劇大賞優秀演出家賞受賞、ミュージカル『ロボット・イン・ザ・ガーデン』など話題作を次々と手掛ける小山ゆうな演出と、強力なスタッフ陣が集結。“ぼく”と“母”と“大切な人たち”という、キャスト3名のみで演じられる、1幕もの1時間半の作品が生まれ出る。

 そんな新作ミュージカルで、浦井健治と共に“ぼく”と大切な人たち”を回替わりで演じる成河と、成河演じる“ぼく”の“母”を、浦井演じる“ぼく”の“母”に扮する柚希礼音とWキャストで演じる濱田めぐみが、日本語を用いて一から生まれ出ようとしている、しかも実話を元にした新作オリジナルミュージカルへ向かう、様々な思いを語ってくれた。

上手くいくかさえもわからないところが面白い

成河(左)&濱田めぐみ拡大成河(左)&濱田めぐみ

──まずはお稽古の様子からお聞かせいただけますか?

成河:ただただ大変ですね(笑)。

濱田:そうね!

成河:僕と浦井健治君に関して言うと、2バージョンということで物量があまりにも多いので、まずそこで苦戦しているという感覚があります。時間的にも精神的にも非常に厳しいなか、2人のお母さま方がしっとり見守ってくださっている、という状況です。

濱田:この作品は、本も音楽もフィックスして完全に出来上がった形で、我々役者が入っていったのではないんですね。全部を作りながら、ゼロからはじめていった形なので、立ち上げの段階から私たちもセリフの稽古で参加していたのですが、そこから何度も台本が変わり、立ち稽古に入って、ようやく役者が動いて立体的になってきた。そうするとそこでまた色々と変更しなきゃいけない箇所とか、ここはこのままでいいんじゃないか、という箇所が見えてきて。やればやるほど更にやることが見えてくる。成河くんの言葉通り苦戦しているという感覚です。

成河:もちろん本来そういう作業、実際に演じながら台本を完成させていくって、とても楽しいことだと思うんですが、それが2バージョンなのでね。例えば一つのチームで練りに練り上げた戯曲がまずあって、それを2バージョン作るのであれば成立するんでしょうけれども、練り上げている最中のものを更に2バージョンで練ろうとしているので、本当なら半年はかかる作業なんだと思います。それを1カ月で詰め込んで、台本作り、音作りを含めて2バージョンが同時進行しているので、大変なんです、苦戦しています、という言葉にいまはなってしまうのが、もどかしい感覚があります。すみません、愚痴になっちゃっていますね(笑)。

成河拡大成河

──いえいえ、オリジナルミュージカルを一から立ち上げていくのが、どんなに大変かは、わかりますとはおこがましくて言えませんが、想像はできる気がしています。そのなかで、敢えてと申しますか、こういうところが面白いと感じていらっしゃることがあれば教えて欲しいのですが。

成河:うまくいくのかどうかさえもわからない、というところは面白いです。創作って結局マーケットを意識すればするほど、これはうまくいくという確信が持てるものばかりになっていってしまうから、成功の保証はないけれども創っていくんだ、という視点は重要ですね。本来のものづくりってそういうものだと思うので、全精力を傾けている現場になっていますから、そういった意味での充実感はすごくあります。

濱田:ひとつ大きく感じたのが、一般的に「ミュージカル」と言われるものの形式って、言語としてなんですけど、日本語には適していなんだなと。成河くんも別の機会に話していましたが、日本語の話法って結果が1番後に来るじゃないですか。でも英語はまず一番先に「Yes」「No」を言ってから説明になりますよね。その言語や文化の違いで、日本語でミュージカルをブロードウェイとかロンドン風に作ろうとしても、おそらくこれは難しいんじゃないかと思いました。言語の処理能力としてなんですけど。

 ですから今回の作品では、新たな日本のミュージカル、音楽劇としての方向性をしっかりと打ち出した方が、しっくりくるんだろうなと思って。いつまでもブロードウェイのやり方を踏襲したままでは、何かが違う、と思うものに出来てしまう感じがすごくしていて。これほど日本語とか、言葉、単語の一つひとつを意識して作り上げたことが今までほとんどなかったんだ、と改めて思っています。土台が全くないところから始まっているので、日本の音楽劇のスタイルそのものを、今一緒に作っている気がしていますね。だからこそ大変だな、という言葉になっちゃうんですけど(笑)。

濱田めぐみ拡大濱田めぐみ

──キャストの方達もクリエイターのお1人ということでしょうか。

濱田:そうですね。

成河:本来そうあるべきだと思いますしね。キャストとクリエイターを分けて考えるほうが結構不純かな、と思うこともあるので。もちろん分けて考える方がいらしても全く構わないんですけど、本来同じ目的に向かっているはずなのでね。

◆公演情報◆
新作ミュージカル『COLOR』
2022月9月5日(月)~25日(日) 新国立劇場 小劇場
2022年9月28日(水)~10月2日(日)  サンケイホールブリーゼ
2022年10月9日(日)~10日(月・祝)  ウインクあいち
公式ホームページ
[スタッフ]
原作:坪倉優介「記憶喪失になったぼくが見た世界」
音楽・歌詞:植村花菜
脚本・歌詞:高橋知伽江
演出:小山ゆうな
[出演]
浦井健治、成河、濱田めぐみ、柚希礼音(五十音順)
〈成河プロフィル〉
 東京都出身。大学時代より演劇を始める。最近の主な舞台出演作品は、『導かれるように間違う』『冒険者たち~JOURNEY TO THE WEST~』、『森 フォレ』、『スリル・ミー』、『子午線の祀り』、『VIOLET』、『ねじまき鳥クロニクル』、『タージマハルの衛兵』、『エリザベート』、『人間風車』、『髑髏城の七人Season花』など。2008(平成20)年度文化庁芸術祭演劇部門新人賞受賞、第18回読売演劇大賞 優秀男優賞受賞。11月に『建築家とアッシリア皇帝』、2023年2月に木ノ下歌舞伎『桜姫東文章』への出演を控えている。
公式ブログ
スタッフ公式ツイッター
〈濱田めぐみプロフィル〉
 1995年劇団四季オーディションに合格。1996年『美女と野獣』ヒロイン・ベル役で劇団四季デビュー。その後、劇団四季の初演『ライオンキング』初演、『アイーダ』初演、『ウィキッド』の三作品でヒロインを演じ、15年間活躍し2010年に退団。最近の主な出演作は、『メリー・ポピンズ』、『オリバー!』、『アリージャンス』、『イリュージョニスト』、『シャボン玉とんだ宇宙(ソラ)までとんだ』、『レ・ミゼラブル』など。2023年2月に『バンズ・ヴィジット』、5月に『ファインディング・ネバーランド』への出演を控えている。
公式twitter
公式instagram

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筆者

橘涼香

橘涼香(たちばな・すずか) 演劇ライター

埼玉県生まれ。音楽大学ピアノ専攻出身でピアノ講師を務めながら、幼い頃からどっぷりハマっていた演劇愛を書き綴ったレビュー投稿が採用されたのをきっかけに演劇ライターに。途中今はなきパレット文庫の新人賞に引っかかり、小説書きに方向転換するも鬱病を発症して頓挫。長いブランクを経て社会復帰できたのは一重に演劇が、ライブの素晴らしさが力をくれた故。今はそんなライブ全般の楽しさ、素晴らしさを一人でも多くの方にお伝えしたい!との想いで公演レビュー、キャストインタビュー等を執筆している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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