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ミュージカル『COLOR』で共演!成河×濱田めぐみインタビュー(下)

どこにたどりつくかわからない初日を一緒に体験して欲しい

橘涼香 演劇ライター


成河×濱田めぐみインタビュー(上)

この作品は描ききってはいけないんだなと

──お話を伺っていると、本当に現在進行形で進まれている最中ということですから、今の時点で、ということは明日にはまた変わっているのかもしれないとも思いますが、今日の段階で最初に原作や、初稿の台本を読まれた時と今とで、作品やお役柄に対して感じることに変化などはありますか?

成河:最初に読んだ時からと考えると、全く違っていますね。それは危機感とも取れて、最近わりと明確になってきた危機感としては、小山ゆうなさんとも共有としていることなのですが、この作品は描ききってはいけないんだなと。要するに本当に現在進行形で人生を歩んでいらっしゃる方々の、何か一つを切り取って「彼らはこうでした」と結論めいたことを表現したら、それは作品として不誠実なんですよ。僕たちもそれぞれご家族やご本人にお会いする機会もいただいて、もしも彼らのロボットフィクションにどっぷり浸かった状態で今作品を作るようなことになれば、それは非常に恐ろしい危険なことなんです。いまそれを痛感していまして、つまり1人の人間の人生を描ききれるわけがないんです。それを分かった顔をして描ききってしまうことの恐怖と、お客さんに押し付けてしまうことのつまらなさがあります。

 じゃあこの作品はどこに行くべきなのかなと言えば、僕たちはそれでも丹精込めて作品のなかにどっぷり浸かっていくわけですけれども、最終的にお客さんに渡す時にはいかに決めつけずに、描ききらずに自由に見てもらえるか。この作品を自由に見てもらうのって非常に難しいと思うんですよ。だって登場人物は皆さん生きていらっしゃるし、本当の話ですから。考える隙も批評する隙もないということになったら、とても良くないんです。そういう危機感を毎日持って描ききらない、でも想像し続けるというテーマで過ごしております!

成河(左)&濱田めぐみ拡大成河(左)&濱田めぐみ

濱田:だからね、成河くんのこのエネルギーと、この発想で出てくるものに、私は本当にくっついているだけなんです! 彼のこの精神力が実はものすごく必要で、描き切っちゃいけないってやっぱりとても難しくて。

成河:難しい! 本当に。

濱田:描いちゃうことの方が、役者的には簡単なんですよね。もうゴールがあるからそれを逆算すればいいんですけど、そうじゃないというところに成河くんを筆頭に、健治君と柚希さんと私でひた走りに走っているわけなんですけど、それこそ作品には埋没するけれども、意識までそこに絡め取られちゃいけないなっていうことがあって。

成河:そうだね。

濱田:原作本を稽古の途中に挟んで読んでいるんですけど、やっぱり受け取り方が違います。お母さんに対して私は想像じゃなく、「あぁそうだな、お母さんってこういう感じなんだな」ですとか「この時はそう思うよね」というように、近くなっていくんです。だからこそ余計なものをつけずに、シンプルにそれを表現するように心がけたいなと思っています。

植村花菜さんのメロディで全てが表現されている

成河拡大成河

──日本語の言語とミュージカル、音楽劇についてのお話をいただきましたが、今回その日本語でオリジナルの楽曲が作られているわけですが、楽曲についてはいかがですか?

成河:言葉が本当に立ちやすいです。耳にもスーッと入ってきますし。そこには花菜さんがすごくこだわって作っていらっしゃるので。日本語の、日本語による、日本語の為の表現になっています。

──それは、海外の作品の楽曲を日本語訳で歌うのとはやはり違いますか?

成河:全く違います。その代わりの課題があるとしたら「Drama sing」としてどうなんだ?という新しいポイントですね。ドラマを紡いでいく歌唱ってなんなんだ?という新た課題が生まれるので、それをどうクリアしていくかというのが挑戦です。

濱田:そうだね。

成河:日本語の美しさだけで、シンプルで淡々としていて伸びやかな歌になっていく。それが本当に良いところで、その淡々とした歌を聞いているだけでものすごく想像が深まるから、ドラマをやっちゃうと野暮になるんです。琵琶法師が平家物語を1人でずっと歌っていることがとても優れた芸術ですから、リアルに台詞を交わしちゃうと野暮なんじゃないの?というね(笑)。この西洋と東洋の表現の違いは明確にあるので、それに対する非常に豊かな実験にはなっているんじゃないのかな?と思います。

濱田めぐみ
拡大濱田めぐみ

濱田:私がすごいなと思ったのが、言葉や歌詞もそうなんですけど、植村花菜さんが作ってくださったメロディで全てが表現されているということで。もちろんそこに歌詞がつくとさらに分かりやすいのですが、ある意味でtoo muchになってしまう時もあるくらい、彼女が作ってくれているメロディが、作品のなかにフィットしているんです。ですからあの音楽の中に身を置くことが、この作品の中で進んでいける方法の一つでもあるなと思っていますし、成河くんも言いましたが、言葉を本当に大切に作っていらっしゃるので、イントネーションとアクセントが逆になることがないんです。

 私は劇団四季時代に、浅利慶太氏がアクセントにものすごくこだわる方だったので、それで耳ができちゃっているところがあって、アクセントが逆になってしまうメロディーラインになった時に、気持ちが引いてしまうんですね。そういうアクセントにおいても、英語は日本語と真逆なので、それがいつも課題だったのですが、今回はそういうことがなくじっくり言葉がはまるので、居心地はとても良いです。

◆公演情報◆
新作ミュージカル『COLOR』
2022月9月5日(月)~25日(日) 新国立劇場 小劇場
2022年9月28日(水)~10月2日(日)  サンケイホールブリーゼ
2022年10月9日(日)~10日(月・祝)  ウインクあいち
公式ホームページ
[スタッフ]
原作:坪倉優介「記憶喪失になったぼくが見た世界」
音楽・歌詞:植村花菜
脚本・歌詞:高橋知伽江
演出:小山ゆうな
[出演]
浦井健治、成河、濱田めぐみ、柚希礼音(五十音順)
〈成河プロフィル〉
 東京都出身。大学時代より演劇を始める。最近の主な舞台出演作品は、『導かれるように間違う』『冒険者たち~JOURNEY TO THE WEST~』、『森 フォレ』、『スリル・ミー』、『子午線の祀り』、『VIOLET』、『ねじまき鳥クロニクル』、『タージマハルの衛兵』、『エリザベート』、『人間風車』、『髑髏城の七人Season花』など。2008(平成20)年度文化庁芸術祭演劇部門新人賞受賞、第18回読売演劇大賞 優秀男優賞受賞。11月に『建築家とアッシリア皇帝』、2023年2月に木ノ下歌舞伎『桜姫東文章』への出演を控えている。
公式ブログ
スタッフ公式ツイッター
〈濱田めぐみプロフィル〉
 1995年劇団四季オーディションに合格。1996年『美女と野獣』ヒロイン・ベル役で劇団四季デビュー。その後、劇団四季の初演『ライオンキング』初演、『アイーダ』初演、『ウィキッド』の三作品でヒロインを演じ、15年間活躍し2010年に退団。最近の主な出演作は、『メリー・ポピンズ』、『オリバー!』、『アリージャンス』、『イリュージョニスト』、『シャボン玉とんだ宇宙(ソラ)までとんだ』、『レ・ミゼラブル』など。2023年2月に『バンズ・ヴィジット』、5月に『ファインディング・ネバーランド』への出演を控えている。
公式twitter
公式instagram

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筆者

橘涼香

橘涼香(たちばな・すずか) 演劇ライター

埼玉県生まれ。音楽大学ピアノ専攻出身でピアノ講師を務めながら、幼い頃からどっぷりハマっていた演劇愛を書き綴ったレビュー投稿が採用されたのをきっかけに演劇ライターに。途中今はなきパレット文庫の新人賞に引っかかり、小説書きに方向転換するも鬱病を発症して頓挫。長いブランクを経て社会復帰できたのは一重に演劇が、ライブの素晴らしさが力をくれた故。今はそんなライブ全般の楽しさ、素晴らしさを一人でも多くの方にお伝えしたい!との想いで公演レビュー、キャストインタビュー等を執筆している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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