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ジェンダーのアンバランスは「文化の喪失」、表現の現場調査から

男性に偏る審査員・受賞者、現状の問題くっきりと

小田原のどか 彫刻家、評論家、出版社代表

多様性を欠いた「評価」の危険

拡大「ジェンダーバランス白書2022」を発表する表現の現場調査団メンバー=2022年8月24日、東京・霞が関、表現の現場調査団提供
 審査員の男性平均77.1%という結果は、表現の諸分野における「活躍」のお墨付きや、「優れた作家」という権威が与えられる場の評価機能の信頼に関わっている。時代によって文化の評価基準は変わる。「優れた作品」は天によって決められるわけではない。

 即座に男性が思い浮かぶ表現に関わる仕事であっても、実のところ選考や発表の機会などに関わる男性中心の偏りが、活躍できる表現者の偏りを生み、それがあたかも「伝統」と見なされているに過ぎないのではないか。そのような可能性も、今回のジェンダーバランス調査の結果から導き出されることだ。

 むろん、審査員が男性だからといって、故意に男性を受賞者として選んでいるわけではないだろう。作品選考の際に作者の性別がふせられていることもある。必要なのは、男性77.1%というジェンダーバランスの不均衡を、同質性の高さとして捉え直すことだ。同質性が高いということは「偏り」があるということ、すなわち「排除」が存在するということである。

 そのような場での決定や判断には、様々な問題が⽣じる可能性がある。例えば、同質性の⾼さゆえ異論が出にくくなることが挙げられる。バイアスがかかったものの⾒⽅が疑われず、偏った判断が「正常」とされることも起こりうる。そしてまた、多様性を欠くゆえに排他性がいっそう深刻になることも想定される。

 このような要因は、マイノリティへの更なる抑圧につながる。そしてまた、ここに挙げた種々の弊害は、さらなるハラスメントの温床となりうる。

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筆者

小田原のどか

小田原のどか(おだわら・のどか) 彫刻家、評論家、出版社代表

芸術学博士(筑波大学)。1985年宮城県生まれ。主な著書に『近代を彫刻/超克する』(講談社、2021年)。主な共著に『吉本隆明:没後10年、激動の時代に思考し続けるために』(河出書房新社、22年)など。主な展覧会に「近代を彫刻/超克する 雪国青森編」(個展、国際芸術センター青森、21年)、「あいちトリエンナーレ2019」など。「芸術新潮」「東京新聞」にて美術評を連載中。『現代美術史:欧米、日本、トランスナショナル』(中公新書、19年)の著者で文化研究者・山本浩貴との共同企画「この国[近代日本]の芸術:「日本美術史」を脱帝国主義化する」を始動させたhttp://getsuyosha.jp/20220711-2/ (顔写真撮影:鈴木奈保子)

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです