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仏教とお布施の不幸な関係──自分で金額を決めても納得できないのはなぜか

[20]制度疲労を起こしているお布施のシステム

薄井秀夫 (株)寺院デザイン代表取締役

伝統仏教が抱えるお金の問題

 安倍晋三元総理を殺害した容疑者が、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の宗教2世であり、母親の高額献金で家庭が崩壊したことが明らかになる中で、宗教とお金の問題が注目されるようになった。宗教とお金の問題は、これまでも社会的な注目を浴びることが多かったが、それは新宗教をめぐってのことが多かった。

 それに対して伝統仏教は、宗教とお金の問題で大きな話題となることは少ない。特に、新聞やテレビで報道されるほどの問題が起きたことはきわめて少ない。

 しかしそれは、伝統仏教に関して宗教とお金の問題が無いことを示しているわけではない。

 お布施や戒名料などでは、日常的にお金の問題が繰り返されている。

 金額が新宗教に比べて小さいため報道されるほどではないのかもしれないが、日本のどこかで、毎日のようにお布施や戒名に関するトラブルが起きているのが現実である。

 日本では1年間に約145万人が亡くなっている(厚生労働省/2021年)。そのうち仏式葬儀の割合は、業界団体などの調査によると、ほとんどが9割前後となっており、そうすると年間約130万人が仏教で葬儀をあげていることになる。つまり1日あたり、約3600件の仏式の葬儀がおこなわれていることになる。

 そのうち、お布施などに不満を感じる人は、どのくらいいるだろうか。

hachiware/Shutterstock.com拡大hachiware/Shutterstock.com

 公益財団法人全日本仏教会が、大和証券株式会社と共同で調査した「仏教に関する実態把握調査(2021年度)報告書」を昨年12月に発表したが、その中に、お布施の納得度に関する調査がある。そこで「あまり納得感がない」「納得感がない」と回答しているのは、それぞれ34.5%、11.1%であり、この2つを合計すると45.6%となる。

 そうすると毎日、約1600人が、葬儀で包んだお布施に違和感を覚えていることになる。

 ただしその違和感を口に出す人は少ない。そのため表面化しにくく、その感情は意識下に抑圧されていく。

 不満はあるけど口には出さないで檀家として関係を続ける。そうした不幸な関係が、お寺と檀家の間に続いている。


筆者

薄井秀夫

薄井秀夫(うすい・ひでお) (株)寺院デザイン代表取締役

1966年生まれ。東北大学文学部卒業(宗教学専攻)。中外日報社、鎌倉新書を経て、2007年、寺の運営コンサルティング会社「寺院デザイン」を設立。著書に『葬祭業界で働く』(共著、ぺりかん社)、 『10年後のお寺をデザインする――寺院仏教のススメ』(鎌倉新書)、『人の集まるお寺のつくり方――檀家の帰属意識をどう高めるか、新しい人々をどう惹きつけるか』(鎌倉新書)など。noteにてマガジン「葬式仏教の研究」を連載中。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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