[20]制度疲労を起こしているお布施のシステム
2022年09月27日
安倍晋三元総理を殺害した容疑者が、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の宗教2世であり、母親の高額献金で家庭が崩壊したことが明らかになる中で、宗教とお金の問題が注目されるようになった。宗教とお金の問題は、これまでも社会的な注目を浴びることが多かったが、それは新宗教をめぐってのことが多かった。
それに対して伝統仏教は、宗教とお金の問題で大きな話題となることは少ない。特に、新聞やテレビで報道されるほどの問題が起きたことはきわめて少ない。
しかしそれは、伝統仏教に関して宗教とお金の問題が無いことを示しているわけではない。
お布施や戒名料などでは、日常的にお金の問題が繰り返されている。
金額が新宗教に比べて小さいため報道されるほどではないのかもしれないが、日本のどこかで、毎日のようにお布施や戒名に関するトラブルが起きているのが現実である。
日本では1年間に約145万人が亡くなっている(厚生労働省/2021年)。そのうち仏式葬儀の割合は、業界団体などの調査によると、ほとんどが9割前後となっており、そうすると年間約130万人が仏教で葬儀をあげていることになる。つまり1日あたり、約3600件の仏式の葬儀がおこなわれていることになる。
そのうち、お布施などに不満を感じる人は、どのくらいいるだろうか。
公益財団法人全日本仏教会が、大和証券株式会社と共同で調査した「仏教に関する実態把握調査(2021年度)報告書」を昨年12月に発表したが、その中に、お布施の納得度に関する調査がある。そこで「あまり納得感がない」「納得感がない」と回答しているのは、それぞれ34.5%、11.1%であり、この2つを合計すると45.6%となる。
そうすると毎日、約1600人が、葬儀で包んだお布施に違和感を覚えていることになる。
ただしその違和感を口に出す人は少ない。そのため表面化しにくく、その感情は意識下に抑圧されていく。
不満はあるけど口には出さないで檀家として関係を続ける。そうした不幸な関係が、お寺と檀家の間に続いている。
伝統仏教に関して、お金と宗教の問題が報道されたことは、ほとんどないと書いたが、実は希にではあるが、何度か大きな話題となって報道されたことがある。
印象的なのは、2010年に流通大手のイオンが葬祭業に参入した時、そのホームページにお布施の目安を掲載したことに対して、仏教界が反発したことによる小競り合いである。また、2015年にインターネット通販大手のAmazon(アマゾン)に「お坊さん便」と命名された商品が出品されたことによる仏教界の反発も同様だ。
どちらも民間企業がお布施に関わろうとしたことに対する仏教界の反発が報道され、その仏教界に対して一般生活者が反発するという構図が加わっている。
こうした対立の前提には、葬儀のお布施をいくら包めばいいのかがわからなくて困っている人が多いということがある。
一般的には、僧侶側からお布施の金額を示すことはない。遺族が困って、「どのくらいの金額を包めばいいのでしょうか」と聞いても、「お気持ちでけっこうです」と答えることがほとんどだ。
この「お気持ち」、いったいいくらなのかがわからない。1万円なのか、10万円なのか、100万円なのか。
遺族にとっては、これが不安のもとになっているのだ。
イオンが、その目安をホームページに掲載したことは、こうしたお布施への不安が前提にある。不安を感じている消費者に情報提供しようとするのは、きわめて自然なことである。
しかし仏教界では〈お布施は金額を示さない〉ことが正しいと考えられている。ホームページへの目安掲載は、それを踏みにじるような行為であると受けとめられ、強く反発したのである。
実は、そうした目安を掲載するホームページはそれまで無かったわけではない。葬儀社のホームページや葬儀情報サイトなどで掲載しているところは少なくない。中には、ホームページで掲載しているお寺もある。ただイオンは、流通業界を代表するような会社だったことが、それまでとは異なっていたわけである。
こうした反発は、Amazonで「お坊さん便」が出品された時も同じである。
「お坊さん便」は、Amazonを通じて、お坊さんを手配できるというサービスである。ただ、サービスを提供しているのはAmazonではなく、株式会社みんれび(現在は、株式会社よりそうに社名変更)という会社である。Amazonのショッピングモールに、みんれびが「お坊さん便」を出品したというかたちになる。
「お坊さん」がAmazonで手配できるというこのサービス、仏教界にはかなり衝撃的だった。自分たちが「商品」として出品されるという違和感、宗教行為が通販サイトで購入できるという違和感。そのため、仏教界の反発は尋常ではなかった(その後、みんれびはAmazonでの「お坊さん便」の出品を取り止めたが、自社サイトでの販売を続けている)。
前述の全日本仏教会(以下、全日仏)は、
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