真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター
大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
劇団☆新感線『薔薇とサムライ2−海賊女王の帰還−』大阪公演がスタート
9月に富山公演からスタートした、2022年劇団☆新感線42周年興行・秋公演 SHINKANSEN☆RX『薔薇とサムライ2−海賊女王の帰還−』の大阪公演が、5日からフェスティバルホールでスタートする(~20日まで。11月1日~12月6日東京・新橋演舞場)。
『薔薇とサムライ2−海賊女王の帰還−』は、12年前に上演された、天海祐希扮する海賊アンヌが古田新太演じる石川五右衛門とともに大暴れする『薔薇とサムライ~GoemonRock OverDrive』の続編で、大人気シリーズ『五右衛門ロック』のスピンオフ作品。劇団☆新感線としては4年ぶりに生バンドが入る“音モノ”R シリーズ公演で、歌・ダンス・アクションをふんだんに盛り込み、「生バンドの演奏に体を震わせ、現実から少し離れて楽しい気持ちを思い出し、また明日から頑張れる、人々に活力を与えられる作品を創り出します」と謳っている。
「ただ楽しんで観て欲しい」と口を揃えて話してくれた五右衛門役の古田新太と、アンヌ役の天海祐希の稽古中に行われたインタビューをお伝えする。
――まずは、12年ぶりの上演となる舞台『薔薇とサムライ2』(薔薇サム)に出演される感想をお願いいたします。
古田 もう飽きちゃってるんですよ、4回もやってるから石川五右衛門の役。決まったキャラクターだし、スーパーマンだから絶対に死なないし、負けないし。どうやっても勝つから、何を楽しもうかなという感じなんですけれども、12年ぶりにゆりちゃん(天海祐希)とコンビの役をやるので、それはすごく楽しみですね。あと、若い方がたくさんいますので、どうやってふざけようかなぁと思いながら楽しんでやっています。
天海 4年ごとに劇団☆新感線の舞台に出させてもらっていて、ありがたいことに今年も新感線Yearがやってきたなという思いです。本当は少し毛色の違うものをやらせていただけたらとお話をさせてもらっていたところ、世の中がこういう状況(コロナ禍)になってしまい、皆さんが欝々と発散できずに不安と隣り合わせの日々を過ごしている中で、今の劇団☆新感線にできることは、みんながパッと明るくスカっとした気持ちで帰ってもらえることじゃないかと。「そこで姐さん、薔薇サムですよ」とプロデューサーがおっしゃいまして、劇団としても元気が出るものをやりたいというお話も伺ったので、まさにその通りだなと思いました。イヤですと言える雰囲気ではなかったですし(笑)、作品として薔薇サムを、そしてアンヌの役を選んでいただいたことはすごく幸せでありがたいことですので、ぜひやらせてくださいとお答えしました。今、お稽古をしながらやはり薔薇サムで間違いないなと日々感じています。なかなか簡単には言えないのですが、劇場に足をお運びいただいて、お互いにスカっとした気持ちで過ごせればと思っています。
――12年ぶりの薔薇サムですが、お稽古に入っていかがでしょうか?
古田 ゆりちゃんは信用している大ファンの女優さんなので、一緒にやっていてそりゃもうすごく楽しいですよ。
天海 古田さんがいてくれるだけで勝ったも同然なんです、私の中では。どんなことが起きても、古田さんの存在がすべてチャラにしてくれるくらいの力があるんですね。気負わずにのびのびと4年ぶりの劇団☆新感線を楽しませていただいていますし、バンドも入って楽曲がたくさんある作品ですので、本当に楽しくやらせてもらっています。
――前回からの続編ということで、今回の作品の見どころをお願いします。
古田 ざっくり言うと、ゆりちゃんが演じるアンヌは、前作で五右衛門の手助けによって海賊から女王様になったんですけど、今回はそれを代替わりしようかなと。若い人たちにその大きな役目を譲っていこうと。そして、アンヌは新しい世界へいくという、代替わりの物語なんですけれど、わかりやすい勧善懲悪で世代交代を軸にしたお話です。
天海 世代交代を軸にしているということで、世代交代をしろと暗に言われていると私は受け止めています。ですので、劇団☆新感線への出演はこれが最後かもしれませんので(笑)、ぜひ足を運んでいただけたらと思っております。作品に肩を叩かれることもあるんだ!と思った次第でございます。
――(笑)。世代交代がテーマということですが、役者の先輩として伝えたいこと、また後輩とのお芝居の中で得られることなどはありますか?
古田 昨今、演劇界がおとなしいのを憂いておりまして、演劇は何をやってもいいという世界だと思っていて、いわゆるコンプライアンスという考え方には真っ向から反対しております。それをなるべくならば一緒にやる後輩たちに植え付けたいなと。遠慮をするな、おとなしくなるな、無茶なことをしろ、ということを後輩たちに教えていきたいと常々思っております。でも若い衆とやると、そういうやり方があるんだって気づかれることもあるので、それはそれで楽しみにしています。
天海 元々、先輩だから後輩だからという意識はしていないんです。端から見ると先輩の立場になっているかもしれませんが、自分ができないことやダメなところはわかっていますので、みんなの足を引っ張らないようにということばかり考えています。ただやはり、自分より年齢が上の方は格が違うなと感じることは多いです。そして、自分より下の世代の方たちを見ていてかわいそうだなと思うのは、暴れる場所がないのかなと。弾けられる場所がない、お仕事をする場としてね。弾ける役を演じる場合、どこまで出していいのか、どういう方法で出せばいいのか、それを経験できていない方たちがたくさんいるなと感じています。お上手な方はたくさんいますし、いろんな方法をご存知なんでしょうけど、小さくまとまっていてうまいという方が多いような気がします。
もう一つ突き抜けたらもっと魅力が溢れるのにな、他の魅力も出るのになと思うことがあるので、その時に私が芝居を受ける立場なら、どんな風にお芝居をしてもちゃんと受け止めるから好きにやってとお伝えしています。一度、弾けてみると、自分はこんなことができるんだということがわかるんですよね。私もそういうふうに先輩に受け止めていただいた経験があるので、経験の長い人が次の世代の方を支えていくのがいいんじゃないかなと思っています。
◆公演情報◆
2022年劇団☆新感線42周年興行・秋公演
SHINKANSEN☆RX『薔薇とサムライ2−海賊女王の帰還−』
富山:2022年9月9日(金)〜11日(日) オーバード・ホール
新潟:2022年9月22日(木)〜25日(日) 新潟県民会館 大ホール
大阪:2022年10月5日(水)~20日(木) フェスティバルホール
東京:2022年11月1日(火)〜12月6日(火) 新橋演舞場
公式ホームページ
[スタッフ]
作:中島かずき
作詞:森 雪之丞
音楽:岡崎 司
振付・ステージング:川崎悦子
演出:いのうえひでのり
[出演]
古田新太、天海祐希
石田ニコル、神尾楓珠
高田聖子、粟根まこと、森奈みはる、早乙女友貴、西垣 匠
生瀬勝久 ほか
〈古田新太プロフィル〉
劇団☆新感線の看板役者。大阪芸術大学在学中の1984年から劇団☆新感線に参加。エネルギッシュで迫力ある演技には定評がある。劇団公演以外の舞台にも積極的に参加している他、自身で企画・出演を務める演劇ユニット“ねずみの三銃士”などもある。劇団公演以外の近年の主な舞台出演作品は、『ロッキー・ホラー・ショー』、『衛生』、『獣道一直線』、『プラン変更~名探偵アラータ探偵、最後から7、8番目の冒険~』など。ドラマ「DORONJO/ドロンジョ」(WOWOW)が10月7日(金)より放送開始。
★オフィシャルサイト
〈天海祐希プロフィル〉
1987年宝塚歌劇団に入団し、95年に退団。以降ドラマ・映画・舞台・CM 等幅広く出演。近年の主な舞台出演作品は、『広島ジャンゴ 2022』、『贋作 桜の森の満開の下』、『修羅天魔~髑髏城の七人 Season極』、『子供の事情』など。劇団☆新感線には本作が5作目の参加となる。2023年2月3日(金)より映画『仕掛人・藤枝梅安』が公開予定。
★オフィシャルサイト
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