メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

【公演評】雪組『蒼穹の昴』

壮大なスケールで描く浅田次郎の歴史大作をミュージカル化、彩風咲奈が昴をつかむ

さかせがわ猫丸 フリーライター

 雪組公演グランド・ミュージカル『蒼穹の昴』が、10月1日、宝塚大劇場で初日を迎えました。

 この作品は19世紀末、清朝末期の中国・紫禁城を舞台に描かれた浅田次郎氏の長編小説で、その後の続編も合わせるとシリーズ累計600万部を超える大ベストセラーです。宝塚歌劇での舞台化は浅田ファン始め、文芸界にも大きな話題となりました。豪華絢爛な舞台装置と衣装はもちろん、トップスター彩風咲奈さん率いる雪組生に加え、専科から異例の6名が参加し、登場人物にも最強の布陣で挑みました。

 彩風さんが演じるのは主人公・梁文秀。「天子さまの傍らで天下の政を執ることとなろう」――韃靼の老占い師から重き宿命を予言された男。

 激動する時代の流れの中、梁文秀の鮮烈な生き様を主軸に、様々な人間ドラマを壮大なスケールで描き出します。(以後、ネタバレあります)

聡明で豪快な運命人・彩風

『蒼穹の昴』公演から、彩風咲奈=岸隆子 撮影拡大『蒼穹の昴』公演から、彩風咲奈=岸隆子 撮影

――19世紀末、清朝末期の中国・河北。いつものように村はずれの居酒屋で飲んだくれる梁家の次男・文秀(彩風)のもとに、科挙の院試合格通知が届いた。占い師・白太太(京三沙)の予言を思い出し、最終試験へ奮起する文秀のもとへ、弟分の李春児(朝美絢)が飛び込んできた。春児もまた、白太太から「お前はいずれ都に上がり、天下の財宝を手にする」と言われたという。やがて文秀は科挙に合格。上位合格者の順桂(和希そら)、王逸(一禾あお)とともに、紫禁城へと赴いた。大学者・楊喜楨(夏美よう)から、西太后(一樹千尋)、光緒帝(縣千)へ紹介されるが、そこで権力者たちの争いを見た彼らは、新しい時代を切り拓く決意を新たにするのだった――

 彩風さん演じる文秀は、ずばぬけて優秀な人物です。倍率数千倍、70歳までチャレンジし続ける人もいるという科挙の試験を“首席”で合格するとんでもなさですが、気取ることなく、庶民と混ざって遊んでばかり。常に心優しくて、極貧の春児を誰よりも可愛がっていました。

 彩風さんは、そんな聡明さと優しさ、豪放磊落さも兼ね備えた文秀のイメージそのまま。頼もしく組を引っ張るリーダーである今の姿にも重なります。全身を覆う衣装が長身に映え、いずれも豪華で目でも楽しませてもらえます。衣装担当の有村淳先生によると、裾はすべて織り刺繍で、この部分だけでミシンで連続7時間もかかったとのこと。ぜひご注目ください。

 朗らかに春児とたわむれていた時代から都へ上がると、文秀の人生は一変します。

 諸外国の餌食にならぬよう、古式然とした紫禁城をなんとかしなければいけない。対立を深める西太后を頂点とする“守旧派”と、新しい時代を作ろうとする“改革派”。しかし、文秀はただ盲目につっぱしるだけではなく、常に冷静な視点も失いませんでした。

◆公演情報◆
『蒼穹の昴』
~浅田次郎作「蒼穹の昴」(講談社文庫)より~
2022年10月1日(土)~11月7日(月) 宝塚大劇場
2022年11月26日(土)~12月25日(日) 東京宝塚劇場
公式ホームページ
[スタッフ]
脚本・演出/原田諒

・・・ログインして読む
(残り:約2983文字/本文:約4277文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

さかせがわ猫丸の記事

もっと見る