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【公演評】花組『殉情』

帆純まひろがバウ・ワークショップ初主演で、谷崎潤一郎の名作『春琴抄』の世界に挑む

さかせがわ猫丸 フリーライター

 花組バウ・ワークショップ『殉情-谷崎潤一郎作「春琴抄」より-』が、10月13日、宝塚バウホールで初日を迎えました。谷崎潤一郎の名作『春琴抄』をミュージカル化した今作品は、1995年に絵麻緒ゆうさんにより初演、2002年に再演され、2008年には宙組で早霧せいなさん・蓮水ゆうやさんで上演、いずれも好評を博しました。

 14年ぶりの再演となる今回は、10月13日から21日までは帆純まひろさん、30日から11月7日までは一之瀬航季さんが、初主演で挑みます。

 明治時代の大阪を舞台に繰り広げられる、盲目の娘春琴に仕える佐助の愛と献身、その美しくも残酷な究極の愛の形――佐助を演じる帆純さんは、和装も映える持ち前の美しさと優しさで、初ヒロインで春琴を演じる朝葉ことのさんを大きく包み込み、抒情あふれる世界を情感豊かに描き出しました。(以後、ネタバレあります)

美しきボディガード帆純

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 現代の大阪。下寺町の墓地で、春琴(朝葉)と佐助(帆純)の墓石を見つけたマモル(希波らいと)とユリコ(美里玲菜)は、郷土史研究家の石橋(紅羽真希)から、2人の物語『春琴抄』について聞くことから、物語は始まりました。

――明治初頭。薬問屋鴨屋の丁稚・佐助は、盲目である鴨屋の次女・お琴(朝葉)に寄り添い、琴や三味線のお稽古に行く手曳きをしていた。美しく才能豊かなお琴は師匠・春松検校(舞月なぎさ)から“春琴”の号を与えられ、相弟子のお蘭(詩希すみれ)を悔しがらせるほどだ。佐助はそんな春琴への思慕から、夜中にこっそり三味線の稽古を始めるが、番頭(高峰潤)に見つかり大目玉をくらう。春琴の助け舟により救われるものの、以降始まった春琴の直接指導は熾烈を極め、ついにはバチで殴られるほどだった――

 佐助はひたすら忠実な下僕で、どれほど虐げられても、深く春琴を慕い続けていました。理不尽に叱責されては「へえ」「すんまへん」と何度も何度も頭を下げていますが、そこに一切の嘘や迷いはありません。時に残酷とも思える愛の形は、究極の愛だったのでしょうか。

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 佐助演じる帆純さんは、水も滴るいい男とはまさにこのこと。端正な容姿に和服がよく似合い、ビシッとまとめた黒髪から一筋下りた前髪に、大人の色香が漂います。

 佐助は常に絶やさない笑顔と、春琴の手を取る動きが限りなく繊細で、所作の一つひとつが美しい。そこには、長年通じ合ってきた空気感と、誰も寄せ付けない “2人だけの世界”がありました。優しさの中でも光る強いまなざしは、春琴を守るボディガードとしての矜持にも見え、帆純さん自身の優しい人柄と真面目な姿勢が、佐助の人物像を明確に浮き上がらせています。公演ごとに高まってきた歌唱力で、のびやかなソロも胸に迫るものがありました。

◆公演情報◆
『殉情(じゅんじょう)
-谷崎潤一郎作「春琴抄」より-』
2022年10月13日(木)~21日(金) 帆純まひろ主演
2022年10月30日(日)~11月7日(月) 一之瀬航季主演
[スタッフ]
監修・脚本:石田昌也
潤色・演出:竹田悠一郎

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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