雨量の単位は「ミリ」より「センチ」、hPaの数値に意味を示してほしい
災害に関わる言葉は、聞いてすぐ分かるものにすべきでは
杉田聡 帯広畜産大学名誉教授(哲学・思想史)
9月の台風第14号は甚大な被害をもたらした。その後、幸いなことにしばらく大きな台風は接近・上陸していなかったが、10月26日(水)に発生した熱帯低気圧が台風22号となって、再び日本に接近する見こみだという。
秋台風は夏台風に比べて「雨量がかなり多くなること」があり、また「上陸時の勢力が強い」傾向が見られるというが(「気象病に関する気象用語」頭痛ーる)、雨量や気圧について気象庁やメディアの伝える情報には、疑問に思う点がある。
「雨量320ミリ」

雨量は最初から「1時間に○センチ」と伝えたほうが分かりやすいのではないか
私が一番気になるのは、メディアが視聴者に換算を強いる点である。
降雨量はふつう、例えば「320ミリ」などとミリ単位で表現される。私が知るかぎり例外はない。けれど「320ミリ」では、ぴんと来ない。私たちは、1センチ以下の長さに関してでなければ、ふつうミリは使わないからだ。だから「320ミリ」よりも、日常的に使う「32センチ」の方がはるかに分かりやすいし、その方が豪雨のこわさが直接に伝わる。
なのにメディアは、なぜ視聴者に換算を求めるのだろう? 気象庁の発表という以外、そうする合理的な理由があるとは思われない。ないのなら、「320ミリ」と回りくどい言い方はせずに、始めから「32センチ」と報道すればよいのではないか。
いや、視聴者がいつも換算するという前提は誤りで、実際はしない人が多いだろう。特に地域ごとに雨量がいくつも示されたりすると、人は煩雑に感じて、換算などせずに漫然と聞き流すのがオチだろう。
それに、私が知るかぎり、「320ミリ」と報じられることはあっても、例えば「321ミリ」「328ミリ」のように、有効数字を1桁とする例は多くないようである。それならますます、始めから「32センチ」と報道する方がずっと良いのではないか。