メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

無料

中川大志×松井玲奈×山内圭哉『歌妖曲~中川大志之丞変化~』会見レポート

音楽ありダンスありで人間の深い闇を描く

米満ゆうこ フリーライター


 中川大志が舞台初挑戦で初主演する音楽劇『歌妖曲~中川大志之丞変化~』が上演される。明治座、東宝、ヴィレッヂという歴史やカラーの違う3社が立ち上げた“三銃士企画”の第2弾。

 今回は、作・演出は倉持裕が手掛け、シェイクスピアの『リチャード三世』と昭和の歌謡界を掛け合わせた作品になるという。中川演じる物語の主人公は、昭和40年代に彗星のごとく登場し、瞬く間にスターダムに駆け上がった桜木輝彦。その成功の裏には、戦後の芸能界に君臨する「鳴尾一族」の存在があった。しかし、一族には、ねじ曲がった四肢と醜い顔を持つ鳴尾定(中川が1人2役)という闇に葬られた末っ子がいたのだった……。大阪市内で開かれた取材会で、中川と出演者の松井玲奈、山内圭哉が作品や昭和について語った。

自分の名前がタイトルに入るとは想像もしていなかった

左から、山内圭哉、中川大志、松井玲奈=久保秀臣 撮影拡大左から、山内圭哉、中川大志、松井玲奈=久保秀臣 撮影

――中川さんは舞台初挑戦で初座長です。タイトルに自分の名前がついていることはどう思いますか?

中川 さんざん、色んなところで言われ、いじられています(笑)。僕もまさか自分の名前がタイトルに入るとは想像もしていなくて、なかなかないことだと思います。色んなところにポスターやフライヤーがありますが、見慣れないという感じですね。

 今回、演劇界の大先輩もいらっしゃいますし、アンサンブルの皆さんもダンスや歌ができる経験豊富な方々ばかりです。ものすごく心強いですし、たくさんコミュニケーションを取って、ディスカッションしながら作品を作り上げていくことを楽しみにしています。何より、桜木というキャラクターをしっかりと深めてエネルギーをもって向き合うことが作品の推進力になればいいなと思っています。

中川大志=久保秀臣 撮影拡大中川大志=久保秀臣 撮影

松井 中川さんは座長で歌も歌うプレッシャーが大きいと思いますが、作品と向き合っている姿にただただ付いていく気持ちです。心が震えるような素敵な歌声をされているので、それを聞きながらお芝居をするのが楽しみです。

松井玲奈=久保秀臣 撮影拡大松井玲奈=久保秀臣 撮影

山内 初座長の若い役者さんとお仕事することはありますが、中川さんは今のとこ何の不安もないですね。それってなかなか珍しいことで、ご本人には戸惑いもあるでしょうけど、最終的には、彼は『中川大志之丞変化』やったなと、お客さんが納得して帰ってくれるような作品にするんじゃないかなと思っています。もちろん、僕たちも一生懸命支えさしてもらいたいです。

山内圭哉=久保秀臣 撮影拡大山内圭哉=久保秀臣 撮影

物語の中に昭和歌謡が寄り添う

――作品の見どころやそれぞれの役について教えてください。

中川 三銃士企画の第1弾を拝見したんですけど、フレッシュなキャストからベテランまで色んな世代の方が集まって、すごく新しいエンターテインメントだなと。これまでの歴史や土台がある上で、熱量をもってチャレンジしていることに体温が熱くなったのを覚えています。

 今作も音楽やダンスがあり、演劇としての質も深めていける、人間の深い部分が描かれている。僕は桜木と定で、2役と言われるんですけど、僕自身、二役演じるというイメージをあまり持っていなくて。感情の源は2人の人物が共有し、互いの姿が光を浴びている時と、闇の中にいる時でも、互いが影響を及ぼし合っていく、そこを大事にしていきたいと思っています。定として見てきた景色みたいなものが、桜木になったときに出力されていく。桜木なんだけど、定も見える。ただ、姿や形、まとっているオーラは、桜木と定でお客さんに驚いてもらえるような変身を見せたいと思っています。

中川大志=久保秀臣 撮影拡大中川大志=久保秀臣 撮影

松井 見どころはたくさんあるんですけど、物語に寄り添うように今回は昭和歌謡をイメージした楽曲がいっぱい出てきます。当時、昭和歌謡曲を聴いて親しんでいた方たちには懐かしい、あの曲に似ていると感じていただけると思いますし、若い方には新しい曲として昭和歌謡独特のメロディや節回し、歌詞を楽しんでもらえるのでは。ミュージカルとはちょっと違って、歌で感情を表したり、歌がセリフになっているのではなくて、物語の中に曲が寄り添うようにある。お芝居も曲も好きになって、劇場から帰る時にはメインのテーマ曲を思わず口ずさむようになってほしいなと思います。

 私が演じる蘭丸杏という役は、鳴尾一族に対して深い恨みを持っている女性です。復讐するために、定と手を組んで暗躍するという狡猾な女性なのかなと今は思っています。

松井玲奈=久保秀臣 撮影拡大松井玲奈=久保秀臣 撮影

山内 『リチャード三世』を下敷きにしているので、ピカレスクというか悪漢物というか、独特の魅力がある物語。なんでこういう話って魅力的なんやろうなというのを改めて考えるんですけど、昭和の芸能界に当てはめることによって、恨みねたみそねみという人間の負の感情がうまく渦巻いている。現代でもSNSの普及で、リンクするところが若干あったりして。井上ひさし先生の『藪原検校』もそうでしたけど、弱者が悪事でのし上がっていく、そういう社会性は現代の人にも響くんではないかと。深い作品だなと思っています。

 私が演じる大松盛男はヤクザで、鳴尾プロのケツモチでいかにも昭和らしい設定ですよね。その昭和感みたいなものを皆で創り上げられたらなと。昭和を知らなかった世代は、ある種のリアリズムを持って帰っていただきたいですし、昭和を知っている方には、おったおったこんな奴と思ってもらえれば。

山内圭哉=久保秀臣 撮影拡大山内圭哉=久保秀臣 撮影

――倉持さんが今回、シェイクスピア作品に初挑戦だそうです。そのあたりは作品にどう生かされていると思いますか。

中川 僕はシェイクスピア作品をたくさん観てきたわけではないので、観るところから始まりました。倉持さんも言われてましたが、観に来てくださるお客さんは、あまりそこを意識せず、『リチャード三世』を勉強してから行こうというようなことは特にしていただかなくていいと思っています。ただ、構図やエッセンスを取り入れているのは面白いと思いますし、時代背景が変わったことによって化学反応が起きていると思います。

中川大志=久保秀臣 撮影拡大中川大志=久保秀臣 撮影

松井 ベースにはありながらも物語自体はオリジナル脚本として楽しんでいただけるものになっていると思います。「シェイクスピアか、難しいかも」と思われる人たちは、気負わずに昭和歌謡の世界をのぞきに行く気持ちで来ていただければと思います。観終わった後に、『リチャード三世』がベースになってたなと調べて、ご自身で似ているところを探すのも楽しみのひとつだと思います。

山内 『リチャード三世』をがっつり勉強してこられるとややこしくなるかもという。物語がそれにそっているわけではないので。エッセンスやフレーバーをメインに持ってきているんです。

 そもそもシェイクスピアというのもゴシップだった。当時のゴシップネタをシェイクスピアが劇にして街の人たちに見せてたということを考えると、高尚なものではないですし、とっつきやすいエンターテインメントにしていたということですよね。今回もそれぐらいの手法のエンターテインメント作品を皆で作ろうという気がしています。

昭和には大人になったら楽しいと思わしてくれる人がいっぱいいた

松井玲奈=久保秀臣 撮影拡大松井玲奈=久保秀臣 撮影

――中川さんや松井さんは昭和にどういうイメージがありますか。

中川 僕は平成10年生まれなんですけど、戦争から復興していく人々のエネルギーがある中で、ファッションやその時代のカルチャーがミックスされたイメージがありますね。それがものすごく今となってはまぶしく見えたりする。今は規則的というかきれいになりすぎてしまっていることが多いのかなと。エンタメも芸能界もごちゃまぜ感があったのかも知れないです。お客さんにもそれは作品の中で視覚的にも感じてもらえると思います。

松井 私は昭和のファッションが素敵だなと思っていて。子どものときは、今とは全然違うイメージでしたが、大人になってみると、流行があるようでない。色んな時代のものを好き好きにキャッチして取り入れていて、色もヴィヴィッドで、アクセサリーも大ぶりなものが多い。飾り立てている感じが素敵で、おしゃれを楽しんでいて、とても好きですね。舞台で昭和のお洋服が着れるのでとても楽しみです。

山内 お2方とも本当にしっかりしていて、ひょっとしたら42歳なんちゃうかな(笑)? まず、たたずまいが落ち着いているんですよ。だから僕もあまりジェネレーションギャップは感じないですね。

山内圭哉=久保秀臣 撮影拡大山内圭哉=久保秀臣 撮影

――山内さんは、伝えたい昭和のエピソードはありますか?

山内 昭和は色々ありましたからね。

中川 書けそうな感じのことを(笑)。

山内 あるジェットコースターが、事故でガーンと落ちたり。そんなんありましたからね、戦争もあったわけやし。

松井 もうちょっとポップな感じのはないですか(笑)?

山内 ポップな? 僕が昭和46年生まれですけど、昭和は不良の大人がいっぱいいたんですよ。僕の師匠の中島らももそうでしたけど、何やってるか分からへんけど面白くて、若い時に大人になったら楽しんやと思わしてくれる人がいっぱいいた。

 今はそういうのはなくなりましたね、コンプライアンスとか言い出してるし、大人の不良の人たちも「不良じゃないよ」と言い出してるから、あんま楽しくないのかなと。若い人って大人になることを楽しんでるんかなとちょっと思ったりしますけどね、横山やすしさんとか、勝新太郎さんもいましたし、芸能の世界に入ると犯罪を犯さなあかんと思ってましたから(一同爆笑)。むちゃくちゃしてるけど、舞台立って、漫才してるところは見たいから、許したってぇなと、皆、言うわけじゃないですか。補って余りある芸で生きている芸能人の方が多かった。今、無理でしょ?

中川 無理ですね(笑)。

山内 そこが大きな違いじゃないですか?

左から、山内圭哉、中川大志、松井玲奈=久保秀臣 撮影拡大左から、山内圭哉、中川大志、松井玲奈=久保秀臣 撮影

――最後にメッセージをお願いします。

中川 作品が東京、福岡を経て、大阪に来るころにはドンドンと変わっているのかなと思います。何より新歌舞伎座でお客さんの前に立てることを楽しみにしています。

松井 私は新歌舞伎座に立つのが初めてでして、歌舞伎座という名前が付くところにまさか自分が立てるなんて想像もしていなかったので、楽しみです。大阪公演は12月で、劇場の外は寒いですが、熱いお芝居をお届けできればと思っています。

山内 僕らが稽古場でやれることって70%ぐらいで、あとの30%はお客さんが作ってくださるものなんだと舞台に立っていていつも思っています。そういう意味で、想像力とか色んなものを使いにきていただきたいと思います。最後の30%を作りにきてください、まぁ、ヤクザを演じるんですけど(笑)。

◆公演情報◆
音楽劇『歌妖曲~中川大志之丞変化~』
東京:2022年11月6日(日)~11月30日(水) 明治座
福岡:2022年12月8日(木)~12日(月) キャナルシティ劇場
大阪:2022年12月17日(土)~12月25日(日) 新歌舞伎座
公式ホームページ
[スタッフ]
作・演出:倉持裕
[出演]
中川大志/松井玲奈、福本雄樹/浅利陽介、中村 中/山内圭哉/池田成志 ほか

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

米満ゆうこ

米満ゆうこ(よねみつ・ゆうこ) フリーライター

 ブロードウェイでミュージカルを見たのをきっかけに演劇に開眼。国内外の舞台を中心に、音楽、映画などの記事を執筆している。ブロードウェイの観劇歴は25年以上にわたり、〝心の師〟であるアメリカの劇作家トニー・クシュナーや、演出家マイケル・メイヤー、スーザン・ストローマンらを追っかけて現地でも取材をしている。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

米満ゆうこの記事

もっと見る