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【公演評】花組『殉情』

一之瀬航季が新人公演主演のリベンジともなるバウ・ワークショップ初主演へ挑む

さかせがわ猫丸 フリーライター


 花組バウ・ワークショップ『殉情』が、10月30日、宝塚バウホールで初日を迎えました。10月13日から21日までの前半は帆純まひろさんが主演をつとめ、客席を涙で包み込みましたが、後半は一之瀬航季さん主演にバトンタッチです。100期生の一之瀬さんは2020年の大劇場公演『はいからさんが通る』で新人公演の主演をつとめる予定でしたが、コロナ禍で公演自体が中止となってしまいました。今回の主演はまさにそのリベンジといえるかもしれません。

 盲目の娘春琴に仕える佐助の愛と献身を描く、谷崎潤一郎の名作『春琴抄』をミュージカル化した今作品。佐助を演じる一之瀬さんと春琴を演じるバウ初ヒロインの美羽愛さん、主演が変わると、同じ作品でも雰囲気はまたガラリと変わります。前回からの主要キャストはそのままに、役替わりで新たに登場する花組生も加え、帆純まひろ・朝葉ことのチームとは違った独自の世界観を作り出しました。

明るく春琴を包み込む一之瀬

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――明治初頭。薬問屋鵙屋の丁稚・佐助は、盲目であるこいさんのお琴(美羽)に寄り添い、琴や三味線のお稽古に行く手曳きをしていた。美しく才能豊かなお琴は師匠・春松検校(舞月なぎさ)から“春琴”の号を与えられ、相弟子のお蘭(糸月雪羽)を悔しがらせるほどだ。佐助はそんな春琴への思慕から、夜中にこっそり三味線の稽古を始めるが、番頭(高峰潤)に見つかり大目玉をくらう。春琴の助け舟により救われるものの、以降始まった春琴の直接指導は熾烈を極め、ついにはバチで殴られるほどだった――

 一之瀬さん演じる佐助は明るく元気で、生命力にあふれています。帆純さんの佐助と朝葉さんの春琴の間には厳然とした主従関係があり、帆純さんの頑ななまでに一歩下がった姿勢と秘めたる思いに終始胸を締め付けられましたが、一之瀬さんの屈託のない笑顔には佐助の気持ちがストレートに表れていて、手曳きの様子も恋人のように見えるほどでした。どちらも春琴へのあふれる優しさには変わりなく、役へのアプローチの仕方にはそれぞれの良さがあり、思わずうならずにはいられません。演じる役者によってこれほどまでも印象が変わるものかと、芝居の醍醐味を改めて味わうことができました。

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◆公演情報◆
『殉情(じゅんじょう)
-谷崎潤一郎作「春琴抄」より-』
2022年10月30日(日)~11月7日(月) 宝塚バウホール
[スタッフ]
監修・脚本:石田昌也
潤色・演出:竹田悠一郎

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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