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【公演評】星組『ディミトリ~曙光に散る、紫の花~』『JAGUAR BEAT-ジャガービート-』

儚く美しい芝居と革新的爆発ノンストップショーで、礼真琴が新しい時代を切り拓く

さかせがわ猫丸 フリーライター

 星組公演 浪漫楽劇『ディミトリ~曙光に散る、紫の花~』(並木陽作「斜陽の国のルスダン」より)とメガファンタジー『JAGUAR BEAT-ジャガービート-』が、11月12日、宝塚大劇場で初日を迎えました。

 この作品は13世紀のジョージアで、運命に翻弄されながらも1人の女性を愛し抜いた青年の生きざまを描く、並木陽氏の小説『斜陽の国のルスダン』をミュージカル化したものです。主演の礼真琴さんと舞空瞳さんがそれぞれの役にはまったドラマチックな展開と、美しいジョージアンダンスも見どころとなりました。

 2幕は、メガファンタジー『JAGUAR BEAT-ジャガービート-』。星組の持ち味である熱いパッションのさらに上を行く激しさで、初日から話題沸騰中です。

 儚くて美しい芝居と、革新的ともいえる爆発ノンストップショーは、まさに体力・実力ともに限界突破の2本立て。礼さんだからこそできた新しい挑戦とも言えそうです。(以後、ネタバレがあります)

礼の抑制された優しき王子

『ディミトリ~曙光に散る、紫の花~』公演から、礼真琴=岸隆子 撮影拡大『ディミトリ~曙光に散る、紫の花~』公演から、礼真琴=岸隆子 撮影

 かつてジョージア王国として栄えた地。今は人影さえないこの荒れ果てた地に、物乞いの美稀千種さんが現れ、物語を導きます。リラの精となった娘役たちが風のように舞い、小桜ほのかさん、瑠璃花夏さん、詩ちづるさんが美しい歌声を響かせ、幻想の世界へいざなう中、美しき王子・礼さんが登場しました。

――13世紀、ジョージア王国。イサニ王宮の庭園で一人たたずむディミトリ(礼)は、イスラム教国ルーム・セルジュークから和平の証として、幼い頃から異教のこの国に預けられていた。そのため常に一人でいる場所を探していたが、国王ギオルギ(綺城ひか理)の妹で幼馴染のルスダン(舞空)にはすぐに見つけられてしまう。2人はいつも明るく寄り添っていたが、ルスダンはいずれしかるべき相手に嫁ぐため、互いの思いは秘めたままだ。ルスダンから王が探していると聞かされたディミトリは、王のもとへ参じると、とある決意を聞かされる――

 礼さん演じるディミトリは異国の王子ですが人質の身。ジョージアの人々からは冷たい目で見られていました。立場をわきまえ、常に自分を抑制してきたディミトリにとっては、幼馴染のルスダンと過ごす時間だけが安らぎであり、生きる希望であったことでしょう。

 いつも少し悲しそうな笑顔でルスダンを見つめるディミトリが印象的です。たぎるような生命力で、たくましく敵をなぎ倒す熱血主人公が多い礼さんですが、今回は少し色合いが異なりました。それでも戦闘のシーンではジョージアンダンスで皆を率い、剣を使ったキレも抜群。ルスダンとの切ない恋をつづる歌唱の素晴らしさは言うまでもありません。

 ルスダンを守るためだけに生きたディミトリの孤独と抑制に、『勇気とは何か』の言葉が後から少しずつ追いかけてきます。ただ強いだけではない、深く静かな演技に、これまでとは違う礼さんの魅力が引き出されるようでした。

◆公演情報◆
『ディミトリ~曙光に散る、紫の花~』─並木陽作「斜陽の国のルスダン」より─
『JAGUAR BEAT-ジャガービート-』
2022年11月12日(土)~12月13日(火) 宝塚大劇場
2023年1月2日(月)~2月12日(日) 東京宝塚劇場
公式ホームページ
[スタッフ]
『ディミトリ~曙光に散る、紫の花~』
脚本・演出/生田大和
『JAGUAR BEAT-ジャガービート-』
作・演出/齋藤吉正

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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