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『一富士茄子牛焦げルギー』小柴陸・羽野晶紀・橋本さとし・たなかしん取材会レポート

絵×音楽×朗読で想像を超える感動を呼んだ幻の舞台が再び

小野寺亜紀 演劇ライター、インタビュアー


 画家で絵本作家のたなかしんが、第53回日本児童文学者協会新人賞を受賞した「一富士茄子牛焦げルギー」(2020年 BL出版刊行)は、軽妙な関西弁で繰り広げられる笑いと涙に満ちた家族の物語。“おとん”が夢のなかで頼んだ突拍子もない願いが叶ったことから、“ぼく”はある願いを口にしてしまい――。この小説を原作に、河原雅彦の演出、野上絹代の脚本、瓜生明希葉の音楽でリーディングアクトとして2021年に上演された舞台が、新たなキャストで生まれ変わる。

 初演は新型コロナウイルスの影響で、大阪で一日のみしか上演できなかったものの、観た人からは口々に感動の言葉が。待望の再演では “ぼく”を小柴陸(AmBitious/関西ジャニーズJr.)が続投。初演で生瀬勝久、沢口靖子がそれぞれ演じた“おとん”と“おかん”を、元劇団☆新感線の先輩後輩である橋本さとしと羽野晶紀が演じる。

 大阪でおこなわれた取材会にはキャスト3人と原作者のたなかしんが出席。関西出身の4人による息の合ったトークが繰り広げられ、作品世界そのままの温かい空気が会場を包んだ。

どうしようというぐらい涙が出るし笑えた

左から、羽野晶紀、小柴陸、橋本さとし、たなかしん拡大左から、羽野晶紀、小柴陸、橋本さとし、たなかしん

――今回の出演オファーを受けた時のお気持ちをお聞かせください。

小柴:去年の1月に出演させていただいた公演は、コロナのせいでとても悔しい思いをしたので、もう一度やらせていただけると聞いた時はめちゃくちゃうれしかったです。精一杯頑張ります。

羽野:オファーを頂いた時は、「え! 私でええの?」と思いました。本は声に出して読んだのですが、どうしようというぐらい涙が出てくるし、笑えるし、すごい勢いで読み終わり、とても感動したんです。また、(橋本)さとしさんは学生の頃から知っている先輩で、このおとん役はさとしさんにぴったりと思いました! それでぜひやらせていただきたいと思った次第です。

橋本:ありがとうございます!  舞台はいろいろと経験させていただいているのですが、朗読劇は初体験。僕はよくいろんなボケを稽古中にかましてしまうのですが、リーディングは本を読みながらお客様に感動を届けるということで、緊張のあまり台詞をかんだり、行を飛ばしてしまわないかと恐れていました。役者の根本的な部分をお客様に観てもらうリーディングはプレッシャーがあり、避けていたところなのですが、このメンバーで一緒にできるということ、そしてたなかしんさんの原作を読み、勇気をもってこの仕事を引き受けました。

 羽野さんがおっしゃったように、活字の中からいろんなイメージがパーッと広がり、絵が浮かんでくる。そして心が大きく動き、泣いたり笑ったりするこの原作に、河原さんの演出、瓜生さんの音楽、映像が合わさって、きっと僕自身も感動しながらこの仕事ができるのではと思います。

たなかしん拡大たなかしん

――たなかさんは再演が決まった時、どのようなお気持ちになりましたか。

たなか:皆さんにプレッシャーをかけるわけじゃないですけど、前回が本当に素晴らしい舞台で、自分で書いた物語なのに、全然別の物語を見ているようでした。軽い動きや表情、声色などでこんなに表現できるんだということを見せつけられ、どうやって嗚咽をもらさずに観ようかという感じで……。ぜひもう一度やりたいね、とスタッフの方ともお話していたので、再演できると決まった時は「ウォー!」と抑えきれない思いが溢れました(笑)。

 今回新たに羽野さんと橋本さんに演じていただけるということで、また違ったおとんとおかんになると思います。そして1年経ってどんな“ぼく”になっているのか。1年のうちに経験したことが、絶対芝居に表れると思うので、また違った“ぼく”が観れるのもすごく楽しみです。

お肌だけじゃなく、心もピカピカで純粋

小柴陸拡大小柴陸

――小柴さんから見て、おとん役の橋本さとしさん、おかん役の羽野晶紀さんの印象は?

小柴:今日お2人に初めてお会いしたのですが、とても優しく話しかけてくださり、僕が思い描いている「ザ・おとん」「ザ・おかん」という感じです。

――橋本さん、羽野さんからご覧になった小柴さんの印象は?

橋本:さっきから横で見てて、肌キレイやな~って。

羽野:キレイやな~(笑)。

橋本:なんかピカピカしてる。お肌だけじゃなくて、心もピカピカで純粋な感じがして、これから汚れないように守ってあげたいなと、すでに親心になってます(笑)。お互いコミュニケーションをとりたいし、僕たちよりも先にこの作品に携わっているので、いろいろ教えてください!

小柴:はい!

橋本:一つの家族のように過ごせたらいいなと思います。

羽野:私も今日が初対面だけど、とてもピュアな感じがしました。どんなお稽古になるかわからないけど、きっと前回の生瀬さんや沢口さんと、私たちは真逆やと思いますよ。

小柴:えぇ!? 真逆!

橋本さとし拡大橋本さとし

橋本:生瀬さんは僕らにとったら尊敬する大先輩で、演技に対してもストイック、そこは譲れないものをしっかり持ってらっしゃる方。昔、僕みたいなあやふやな役者と数年後に共演してもらった時、「お前も頑張ってんな」と言われてすごくうれしかったけど、そういうふうに、人をしっかり見てくださる。僕は意外と人のことを見てなかったりするから、だいぶ違うかもしれない(笑)。

羽野:あと、生瀬さんって何が起きてもちゃんと始末してくれはるやん。

小柴:そうですね! 舞台上演中、本を落とされて、僕やったらテンパって全部忘れるぐらいやと思うのに、生瀬さんは全然動じずに……。

羽野:そうやろ~! (橋本を見て)あの先輩は、大変なことが起きるかも!

橋本:何が起きるかわからへんで。楽しみにしてて(笑)。

小柴:(笑)。

羽野晶紀拡大羽野晶紀

羽野:おかんも、靖子さんは緻密にしっかり役作りに臨みはったと思うのだけど、私はほんまに出たとこ勝負やから。

橋本:なるほどね、じゃあ真逆やわ!

羽野:頼りにしているので、よろしくお願いします。

小柴:いや、逆に頼りにしてます(笑)。

――小柴さんは昨年“ぼく”を演じた時、ご自身と似ている部分など感じましたか。

小柴:逆に性格が反対で難しかったです。“ぼく”はいろいろな事情があって、心情的にあまり周りとは話せないのですが、僕自身は結構喋るキャラなので。役作りでは、演出家の河原さんに台詞全部にアドバイスをもらうなど、たくさん教えてもらいました。一番印象に残っているのが、「ちゃうんか?」という台詞。1回目の「ちゃうんか」と、そのあとすぐに続く「ちゃうんか」は違う、というように、ひと言の台詞についてもみっちり教わりました。

人に幸せになってほしいという純粋な想いを込めた

羽野晶紀(左)と小柴陸拡大羽野晶紀(左)と小柴陸

――初演は台本を読んでいるシーンと、台本を離して演技しているシーンが交差し、朗読劇を“聴いている”というより、普通のお芝居を“観ている”感覚になりました。台本を読んでいる時も、台詞は覚えていたのでしょうか?

小柴:僕はほぼ覚えていて、目で(活字を)追わなくてもできるぐらいになっていました。

――やはり普通の朗読劇とは違いますよね。羽野さん、そういう舞台をやられたことは?

羽野:ないと思います。朗読はあるけど、お芝居と交ぜたような感じはないです。

橋本:リーディングアクトというように「アクト」とつくからには、ストレートプレイをやるぐらいの意識じゃないといけない予感はしてました。ちゃんと普通のお芝居を作る心意気じゃないといけないでしょうね。

羽野:(小柴に)大変やった?

小柴:僕は緊張しすぎてあまり本番中のことを覚えてなくて。出る時につまずいてこけそうになって……。

――でも、とても自然な“ぼく”でしたよ。

小柴:え! ほんまですか!?

たなか:めっちゃ自然でした。

橋本:すでに絶賛やないですか!

橋本さとし(左)とたなかしん拡大橋本さとし(左)とたなかしん

――たなかさんは児童書として出版されたこの作品が舞台になったことを、どのように受け止めてらっしゃいますか?

たなか:児童書と言っても低学年の小学生にはちょっと難しいジャンルで、なかなか本屋にも置きづらいようなのですが、個人的にはいい本が書けたと思ってたので、どうやったら人に読んでもらえるだろうと思っていたところに賞を頂き、舞台化のお話がきて。どう転がっていくかわからない、人生のおもしろさを感じました。

 この作品に込めたのが、人に幸せになってほしいという純粋な想い。人は生きていると辛いことがいろいろあるけど、どうにか前を向いて生きていってほしいという思いで書きました。それを皆さんが少しずつ受け取ってくださったことが、舞台化につながったと思いますし、すごく有難いです。

――背景に大きな富士山が現われ、しかも茄子牛が動いているという絵がまた素敵でしたが、初演でそれをご覧になっていかがでしたか。

たなか:実は舞台のために50枚ぐらい絵を描いたんですよ。

小柴羽野橋本:えぇー!

たなか:動くアニメーション用に、物語に出てくる鬼や龍なども描きおろしました。原作者というだけではなく、絵の部分でも関わらせてもらえてすごく楽しかったです。

――この舞台から観客へ今の時代に届けたいことなど、最後にメッセージをお願いします。

小柴:やっぱり「これが普通の家族」ということです! 初演を観に来てくれたジャニーズ事務所の同期などが、「今まで観た舞台の中で一番おもしろかった」と言ってくれて、ほんまにわかりやすく笑えて泣ける、どなたが観ても心に響く舞台だと思います。ぜひたくさんの方に観に来ていただきたいです。

橋本:『一富士茄子牛焦げルギー』は、何気ない日常の中に人との絆、命や愛の大切さがあることを伝えてくれます。温かい笑いと温かい涙、共感できる感動があります。このメンバーで表現できる何かで、たなかしんさんの世界が膨らんでいくような舞台をお届けしたいです。

羽野:今、コロナで世界中がしんどい思いをしていますよね。でも嫌なことばかり考えるより、もっと楽しいことを考えることに時間をさいたほうがいいよねという、そういうテーマもこの作品にはあります。きっと観終わって劇場を出る時には、これから先楽しいことを考えようと思っていただけると思います。ナチュラルな関西人の3人が、関西弁でやり取りする伸び伸びとした舞台が出来上がるような気がしますので、たくさんの方に観ていただきたいです。

たなか:3人の皆さんの掛け合いでもわかるように、すでにナチュラルな家族のようで、このまま舞台に突入していただけたら素晴らしい作品になると思います。ぜひ楽しみにしていてください。

◆公演情報◆
リーディングアクト『一富士茄子牛焦げルギー』
大阪:2022年12月15日(木)〜12月18日(日)  ABCホール
東京:2022年12月22日(木)〜12月25日(日) CBGKシブゲキ!!
公式ホームページ
[スタッフ]
原作:たなかしん
演出:河原雅彦
脚本:野上絹代
音楽:瓜生明希葉
[出演]
小柴 陸(AmBitious /関西ジャニーズJr.)、羽野晶紀、橋本さとし

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筆者

小野寺亜紀

小野寺亜紀(おのでら・あき) 演劇ライター、インタビュアー

大阪府出身。幼い頃から舞台をはじめ、さまざまなエンターテインメントにエネルギーをもらい、その本質や携わる人々の想いを「伝える」仕事を志す。関西大学文学部卒業後、編集記者を経て独立。長年、新聞や雑誌、Webサイト、公式媒体などで、インタビューや公演レポート等を執筆している。特に宝塚歌劇関係の取材は多い。 小野寺亜紀オフィシャルサイト(https://aki-octogreen.themedia.jp/)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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