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【ヅカナビ】宙組公演『HiGH&LOW -THE PREQUEL-』

「ハイロー」初心者からみた「ヅカロー」の魅力を振り返る

中本千晶 演劇ジャーナリスト


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 最高潮な盛り上がりの中で、先週末に千秋楽を迎えた宙組公演『HiGH&LOW -THE PREQUEL-』。コロナ禍第8波が懸念される中で、大劇場公演、東京公演ともに無事に完走できたのも嬉しいことだった。

 ドラマや映画で人気を博してきた「HiGH&LOW」(通称ハイロー)のタカラヅカ版「ヅカロー」は、原作へのリスペクトを示しつつ、タカラヅカの美学をこれでもかと言わんばかりに見せる舞台となっていた。興奮も冷めやらぬ中、今回は「ハイロー」初心者からみたタカラヅカ版「ヅカロー」の魅力について、改めて振り返ってみようと思う。

計算された構成力に脱帽

 「ハイロー」初心者の私は、巷のおすすめにしたがって、とりあえずテレビドラマ版『HiGH&LOW~THE STORY OF S.W.O.R.D~』のシーズン1と映画『ROAD TO HIGH&LOW』を見た。その時、沸き上がった疑問は「男たちが喧嘩する場面が多くを占めるこの作品、いったいどうやってタカラヅカで舞台化するのか?」、「しかも、1時間半という時間制限の中で」ということだった。ところが、実際の舞台を観て、その計算された構成力に唸った。

 「ヅカロー」は、2筋の物語が進んでいくという構成になっていた。その一つが、「SWORD」の5つのチームと、この地区の支配を狙う「苦邪組(クジャク)」との対決だ。「苦邪組」はタカラヅカ版オリジナルの組織で、そのメンバーが1人ずつ、「SWORD」の五つのチームに潜入し事件を巻き起こす過程で、各チームの特色をしっかりと見せていくという趣向である。

 不良学生のエリート高校「鬼邪高校」、祭りを仕切る「達磨一家」、無名街で家族のように生きる「RUDE BOYS」、女性を守ることを使命とする「White Rascals」、そして山王街を愛し守る「山王連合会」……。「ハイロー」で一番見たいのは五つのチームの際立つ個性なのだから、これを1時間半に凝縮して見せるための上手い構成だと感心した。チームごとの場面で下級生が生き生きと歌い踊る姿が見られるのも楽しい。

 「SWORD」5チームに対峙する「苦邪組」のメンバーが数人しかいないのは非現実的だが、リーダーのリンを演じた留依蒔世を筆頭に、濃い面々がキャスティングされており、存在感は抜群だった。

 また、最終的に「SWORD」と「苦邪組」との決戦に向かっていく過程で、「山王連合会」を率いるコブラ(真風涼帆)が、「達磨一家」の日向紀久(瑠風輝)、「RUDE BOYS」のスモーキー(桜木みなと)、「White Rascals」のROCKY(芹香斗亜)らと出会い、お互いを認め合っているところを見せる。これはタカラヅカらしい「男の美学」の表現だと思った。

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筆者

中本千晶

中本千晶(なかもと・ちあき) 演劇ジャーナリスト

山口県出身。東京大学法学部卒業後、株式会社リクルート勤務を経て独立。ミュージカル・2.5次元から古典芸能まで広く目を向け、舞台芸術の「今」をウォッチ。とくに宝塚歌劇に深い関心を寄せ、独自の視点で分析し続けている。主著に『タカラヅカの解剖図館』(エクスナレッジ )、『なぜ宝塚歌劇の男役はカッコイイのか』『宝塚歌劇に誘(いざな)う7つの扉』(東京堂出版)、『鉄道会社がつくった「タカラヅカ」という奇跡』(ポプラ新書)など。早稲田大学非常勤講師。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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