メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

CO2削減のために自家用車利用を減らし鉄道を再構築することが不可欠だ

COP27後の先進国のモラルと「新生活モデル」の要とは

杉田聡 帯広畜産大学名誉教授(哲学・思想史)

自家用車のない生活はできる

通勤時間帯の自転車専用レーン。ヘルメットの着用者はまばらだった=2021年11月8日午前8時7分、名古屋市中区の桜通大津交差点拡大通勤時間帯の自転車専用レーン=名古屋市中区の桜通大津交差点

 気候変動の深刻度はきわめて高い。今、これに責任を有する先進国の市民に求められるのは、CO2の一大排出源である自家用車への依存を減らすことである。

 今日、例えば通勤等のために使える公共交通機関があるのにそれを使っていない人は少なくない。だがドライバーが自家用車を降りてこれを使う気にさえなれば、CO2はかなり削減できるのである。

 輸送量当たりのCO2排出量(旅客)を見ると、バスのそれは自家用車に比べ半分以下であり、鉄道なら8分の1程度にすぎない(2019年度、「輸送量当たりの二酸化炭素の排出量(旅客)」国土交通省)。この3年、コロナ禍の影響で公共交通の利用者が減少したため、輸送量当たりのそのCO2排出量は高く算出される傾向があるが、全般的に見てバスも鉄道も、排出量の少なさにおいて自家用車よりはるかにすぐれている(「運輸部門における二酸化炭素排出量」国土交通省)。

 もちろん大都市圏を除けば、残念だが公共交通の衰退は激しい。それだけに、人はあれこれと理由をつけて運転を合理化するが、

・・・ログインして読む
(残り:約2423文字/本文:約4845文字)


筆者

杉田聡

杉田聡(すぎた・さとし) 帯広畜産大学名誉教授(哲学・思想史)

1953年生まれ。帯広畜産大学名誉教授(哲学・思想史)。著書に、『福沢諭吉と帝国主義イデオロギー』(花伝社)、『逃げられない性犯罪被害者——無謀な最高裁判決』(編著、青弓社)、『レイプの政治学——レイプ神話と「性=人格原則」』(明石書店)、『AV神話——アダルトビデオをまねてはいけない』(大月書店)、『男権主義的セクシュアリティ——ポルノ・買売春擁護論批判』(青木書店)、『天は人の下に人を造る——「福沢諭吉神話」を超えて』(インパクト出版会)、『カント哲学と現代——疎外・啓蒙・正義・環境・ジェンダー』(行路社)、『「3・11」後の技術と人間——技術的理性への問い』(世界思想社)、『「買い物難民」をなくせ!——消える商店街、孤立する高齢者』(中公新書ラクレ)、など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

杉田聡の記事

もっと見る