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山本文緒『無人島のふたり』を読んで──その強靱な意思と激しさ

大槻慎二 編集者、田畑書店社主

山本文緒『無人島のふたり──120日以上生きなくちゃ日記』(新潮社)拡大山本文緒『無人島のふたり──120日以上生きなくちゃ日記』(新潮社)
 一冊の本が机の上に置かれている。カバーには、どことなく軽井沢あたりにあるコテージのベランダを思わせるような水彩画に、線画で描かれた2羽の小鳥が銀で箔押しされている。仮フランス装(表紙の四方を折り返した製本の一つ)の瀟洒な装丁。いかにも新潮社の「矢来本」らしいたたずまいである。

 この本に何が書かれているかは、おおむね分かっている。すぐにでもページを開いてそれを確かめるべきところだが、先ほどから手を出しあぐねている。

 本のタイトルは『無人島のふたり』。「120日以上生きなくちゃ日記」という副題がついている。ちょうど去年の今頃にがんで早世した作家・山本文緒の闘病記である。なぜ読むのを躊躇(ためら)っているのか。それを語るには、編集者としてその作家と密に付き合った時期、30年ほど前に時間を遡る必要がある。

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筆者

大槻慎二

大槻慎二(おおつき・しんじ) 編集者、田畑書店社主

1961年、長野県生まれ。名古屋大学文学部仏文科卒。福武書店(現ベネッセコーポレーション)で文芸雑誌「海燕」や文芸書の編集に携わった後、朝日新聞社に入社。出版局(のち朝日新聞出版)にて、「一冊の本」、「小説トリッパー」、朝日文庫の編集長を務める。2011年に退社し、現在、田畑書店社主。大阪芸術大学、奈良大学で、出版・編集と創作の講座を持つ。フリーで書籍の企画・編集も手がける。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです