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迷走する納骨堂ビジネス──札幌で起きた「経営破綻」から見えてくること

[21]乱立による過剰供給と行政の責任

薄井秀夫 (株)寺院デザイン代表取締役

納得できない納骨堂利用者

 札幌市の納骨堂「御霊堂元町」で、競売にかけられた土地建物が落札され、運営主体である宗教法人白鳳寺が利用者に対して遺骨を引き取るように呼びかけたことで、納骨堂の実質的な経営破綻が発覚し、利用者は不安な日々を送っている。

 この「御霊堂元町」は、2012(平成24)年に白鳳寺が札幌市から経営許可を受けて事業を始めた納骨堂である。

 事件の経緯を簡単に説明すると、白鳳寺は納骨堂事業を始めるにあたって、事業資金として約3億円を市内の葬儀社から借り入れていた。だが、その借入金の返済が滞ったため、葬儀社が2021年11月に競売申し立てをしたところ、2022年7月、市内の不動産会社が約1億500万円で落札した。

 納骨堂の所有権を得た不動産会社は、白鳳寺に対してこの土地建物の明け渡しを要求する。それを受けて白鳳寺は利用者に対して書面を送るとともに説明会を開き、遺骨を引き取るよう呼びかけたということである。

 ところがその後、白鳳寺の代表者と連絡が取れなくなり、利用者が納骨堂に入ることができなくなるなど、状況は混迷を極めている。

 この事件で最も被害をこうむったのは、納骨堂の利用者である。利用者は、30〜250万円の使用料を納めて使用権を購入し、家族の遺骨を納めている。「遺骨を持ち帰ってくれ」と言われても受け入れられるわけがない。説明会は当然のごとく紛糾し、誰一人納得した人はいなかった。

 ちなみにこの納骨堂は全体で約1500基の納骨壇があり、そのうち773基が販売済みだという。

 また不動産会社は当初、建物を取り壊して、マンションを建てる予定だったとのことだが、その後、「白鳳寺を承継し、納骨堂運営を再建し、社会貢献したい」と態度を変えている。

stpc16shutterstock拡大stpc16/Shutterstock.com

筆者

薄井秀夫

薄井秀夫(うすい・ひでお) (株)寺院デザイン代表取締役

1966年生まれ。東北大学文学部卒業(宗教学専攻)。中外日報社、鎌倉新書を経て、2007年、寺の運営コンサルティング会社「寺院デザイン」を設立。著書に『葬祭業界で働く』(共著、ぺりかん社)、 『10年後のお寺をデザインする――寺院仏教のススメ』(鎌倉新書)、『人の集まるお寺のつくり方――檀家の帰属意識をどう高めるか、新しい人々をどう惹きつけるか』(鎌倉新書)など。noteにてマガジン「葬式仏教の研究」を連載中。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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